災害時に車の鍵はどうする？防災と防犯の観点から考える最適な対応策

災害が発生したとき、人命を守る行動が最優先されるのは当然ですが、自分の資産である車の管理も気になるところです。特に「避難時に車の鍵を車内に置いておくべき」という意見に対して、不安や疑問を抱く人も少なくありません。この記事では、防災の観点と防犯の観点のバランスをとるための考え方と対処法を解説します。

なぜ災害時に車の鍵を車内に置くよう言われるのか

大地震や水害などの災害発生時、緊急車両や地域住民の移動のために車を移動させる必要が生じることがあります。このような状況で鍵がかかっていて動かせない車は、避難の妨げになるだけでなく、救助活動を遅らせるリスクにもなります。

たとえば、2021年の熱海土石流災害では、倒壊や流出を免れた車が道路をふさぎ、緊急車両の通行に支障をきたす事例が報告されました。そのため一部自治体では「鍵は車内に残しておくべき」というアナウンスを出すこともあります。

当然ながら、車内に鍵を置いて立ち去ることにはリスクもあります。盗難や車上荒らしの被害に遭う可能性があるため、車を守りたいという心理は自然なものです。

特に新車や高級車を所有している場合、「鍵を置いて逃げる」という判断は簡単ではありません。これに対し、防災と防犯のどちらを優先すべきか悩む人が多くいます。

近年では、スマートキーや遠隔操作可能なカーセキュリティシステムが普及しています。これを活用すれば、車のドアを一時的に開けておき、離れた場所からロック・アンロックを管理することも可能です。

また、一部の地域では、横浜市のように災害時に車両移動が必要な場合の事前登録制度を設けていることもあります。あらかじめ登録しておくことで、緊急時に適切な対応がとれるようになっています。

たとえば、2018年の大阪北部地震の際には、多くの住民が車を一時的に道路に止め、避難先へ徒歩で向かいました。その際、「周囲の安全確認」「車を移動させやすい場所に止める」「鍵は車内のわかりやすい場所に置く」など、地域で事前に話し合っていた対策が功を奏したと報告されています。

このように、個々の判断ではなく、地域全体でのルールや合意形成が重要であることが分かります。

盗難を不安視する方にとっては、任意保険の内容確認も大切です。車両保険には盗難補償が含まれていることが多いため、万一に備えて契約内容を再確認しておきましょう。

また、車内に鍵を残していた場合の補償有無も保険会社によって異なるため、事前に問い合わせておくと安心です。

災害時の「車内に鍵を残すべきか」という判断には正解はありませんが、人命最優先の行動が求められるのは間違いありません。その一方で、防犯対策や保険の確認、地域との事前連携など、できる備えを重ねることで両立は可能です。

不安な場合は、家族や地域コミュニティ、防災担当窓口と事前に話し合っておくことをおすすめします。愛車を守ることも、自分や他者の命を守ることも、どちらも大切な行動です。