エンジンの構造として「SOHC」と「DOHC」がありますが、ホンダ車における採用傾向を見てみると、四輪では今でもSOHCエンジンが用いられているケースが多く、二輪ではすでにDOHCが主流です。この違いには技術的・経済的・実用的な背景があります。本記事では、その理由や意味について、分かりやすく掘り下げて解説します。
SOHCとDOHCの違いとは?
まずは基本から。SOHC(Single Overhead Camshaft)は1本のカムシャフトで吸排気バルブを制御する方式、DOHC(Double Overhead Camshaft)は2本のカムシャフトでそれぞれのバルブを制御します。
DOHCは高回転域での吸排気効率が良く、高出力が求められるスポーツモデルや高性能車に適しています。一方SOHCは構造が簡単で軽量、コストも抑えられるというメリットがあります。
ホンダが二輪で早期にDOHC化を進めた理由
バイクではエンジンサイズや重量の制約が厳しいため、DOHCによって小排気量でも高回転・高出力が得られることが特に有利です。ホンダは1970年代からCBシリーズをはじめDOHC技術を積極的に採用してきました。
たとえば、CB400F(1974年発売)は当時の小排気量車としては先進的なDOHCエンジンを搭載し、以後の中型~大型バイクの定番技術となりました。
なぜホンダの四輪では今もSOHCが多いのか?
一方で、ホンダの四輪車、特にN-BOXやフィットなどのコンパクトカーや軽自動車では、依然としてSOHCエンジンが使われることがあります。これはエンジン出力よりも燃費、静粛性、コストを重視した設計思想によるものです。
また、SOHCエンジンは整備性にも優れており、都市部での日常使用においてはDOHCの高回転性能よりも、トルクの出しやすさや扱いやすさが評価されているのです。
カブやモンキーもSOHC。実は信頼性と経済性が評価されている
反論としてよく挙がる「カブやモンキーはSOHCでしょ?」という指摘も事実です。これらのモデルは世界中で何十年も愛されている信頼性重視のバイクであり、必要以上に複雑な構造を採用するメリットが少ないため、あえてSOHCを継続しています。
つまり、SOHC=低性能というわけではなく、コスト、整備性、耐久性を総合的にバランスさせた結果なのです。
四輪車のSOHC採用は「妥協」ではなく「戦略」
ホンダが四輪車でSOHCを採用するのは、単に「動けばいいから」ではなく、用途に応じた最適解を選んでいるからです。通勤や買い物など、街中での低~中速域の走行がメインのユーザーにとって、軽くてコンパクトなSOHCエンジンの方がむしろメリットが大きいこともあります。
また、ホンダは近年ではターボやハイブリッドシステムとの組み合わせでSOHCでも十分な出力を確保しており、「動けばいい」どころか効率性の高さが光る設計といえるでしょう。
まとめ:エンジン形式の違いは「優劣」ではなく「適材適所」
SOHCとDOHCにはそれぞれの長所・短所があり、どちらが優れているという単純な話ではありません。ホンダの二輪ではスポーツ性を重視してDOHCが主流に、四輪ではコストと実用性のバランスからSOHCが多用される、というのが実情です。
今後も、走行シーンやユーザーニーズに合わせて最適な形式が選ばれていくでしょう。「原付感覚のエンジン」ではなく、「目的に適したエンジン形式」であると捉えることが重要です。
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