新車に乗り込んだときに感じる独特の「新車の匂い」は、特定の一つの物質だけで生じているわけではありません。シート、樹脂、接着剤、塗料など車室内に使われるさまざまな材料から揮発するVOC(揮発性有機化合物)が関係します。
VOCにはホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどが含まれますが、「新車の匂いがする=危険な濃度のホルムアルデヒドが出ている」と判断することはできません。また、最近のマツダ車なら完全に無臭、あるいはVOCが一切発生しないと考えるのも適切ではありません。
現在の国内新型乗用車では、自動車業界として車室内VOCを低減する取り組みが行われています。一方、匂いや化学物質への感じ方には個人差があるため、アレルギーや刺激への不安がある場合は「最近の車だから大丈夫」と決めつけず、購入予定の実車で確認することが大切です。
新車の匂いの正体はホルムアルデヒドだけではない
日本自動車工業会(JAMA)によると、VOCとは常温で揮発しやすい有機化合物のことで、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどさまざまな物質があります。自動車では住宅や家電などと同様に多様な素材が使用され、それらから揮発する物質の混合物が車室内VOCとなります。[参照:日本自動車工業会 車室内VOC低減に対する自主取り組み]
そのため「新車の匂い=ホルムアルデヒドの匂い」と単純化することはできません。人が感じる匂いと、個々の化学物質の濃度は別々に考える必要があります。
また、匂いが弱い車だからVOCがゼロとも限りません。反対に新車らしい匂いを感じたからといって、それだけで厚生労働省の指針値を超えていると判断することもできません。安全性を匂いの強弱だけで判定するのは難しいということです。
現在の新車では車室内VOCを低減する取り組みが行われている
日本自動車工業会では2005年に「車室内VOC低減に対する自主取り組み」を策定しています。乗用車については2007年度発売の新型車から厚生労働省の室内濃度指針値を満たすことを目標とし、その後の指針値改定にも対応した取り組みが続けられています。[参照:日本自動車工業会]
つまり、現代の日本で販売される新型車は、昔と比べて車室内VOCについて何も考慮されていないわけではありません。材料メーカーや部品メーカーも含めて低VOC化が進められています。
ただし、この自主取り組みは「新車を完全無臭にする」という制度ではありません。基準となる化学物質の濃度を低減することと、人間が感じる新車特有の匂いを完全になくすことは同じではないためです。
マツダ車なら新車の匂いがしないとは一律に言えない
同じメーカーの車でも、車種、グレード、シート表皮、内装材、製造から経過した日数、保管環境などが違えば、車内で感じる匂いにも差が出ます。そのため「最近のマツダ車は新車臭がない」とメーカー単位で断定することはできません。
例えば、同じ車種でも製造直後に近い車両と、製造からある程度時間が経過して十分換気された展示車では、乗り込んだときの印象が異なる可能性があります。また、布シートと本革・合成皮革など内装仕様の違いによって感じ方が変わることも考えられます。
したがって購入を予定している場合には、口コミで「匂わなかった」という情報だけを頼りにせず、購入予定車種とできるだけ近い内装仕様の実車へ実際に乗って確認する方法が現実的です。
新車のVOCは時間とともに低下する傾向がある
日本自動車工業会によると、車室内VOC濃度には「経時変化」があり、一般的には時間の経過とともに低減していく傾向があります。ただし、物質によって低減の程度は異なります。[参照:日本自動車工業会 車室内VOCの特徴]
これは「新車のときには気になった匂いが、数週間・数か月すると弱くなった」と感じることがある理由の一つです。ただし、匂いの感じ方とVOC濃度が完全に比例するわけではありません。
さらに車室内VOCには温度依存性があります。特に夏場など車内温度が高くなるとVOC濃度が高くなる場合があると自工会は説明しています。納車直後の車を炎天下で長時間密閉した後などは、乗車前の換気がより重要になります。
効果的でシンプルな対策は「換気」
新車の匂いやVOCが気になる場合、基本的な対策として有効なのが換気です。日本自動車工業会の試験でも、窓開けやエアコンの外気導入による換気によって車室内VOC濃度が大幅に低減することが示されています。
例えば炎天下に駐車していた新車なら、乗り込んですぐ密閉したまま走り出すのではなく、まずドアや窓を開けて車内の空気を入れ替えます。その後も必要に応じてエアコンを外気導入にして換気するとよいでしょう。
芳香剤で新車臭を隠すことはVOCを除去することとは別です。匂いや化学物質に敏感な人の場合、芳香剤そのものの香料が刺激になることも考えられるため、まずは余計な香料を追加せず換気する方法が取り入れやすいでしょう。
ホルムアルデヒドには厚生労働省の室内濃度指針値がある
厚生労働省は室内空気中の化学物質について指針値を定めています。ホルムアルデヒドについては100μg/m3(0.08ppm)という室内濃度指針値が設定されています。[参照:厚生労働省 室内空気中化学物質の室内濃度指針値]
日本自動車工業会では、このような厚生労働省の室内濃度指針を踏まえて車室内VOC低減の自主的な取り組みを行っています。また、自動車の使用環境を考慮した試験方法も策定されています。
ただし指針値を満たしていることと、すべての人が何の刺激も感じないことは同義ではありません。体質や感受性には個人差があるため、特に過去に化学物質や強い匂いで症状が出た経験がある場合は個別の対応が必要です。
アレルギーや化学物質への不安がある人は購入前の実車確認が重要
アレルギーがある場合でも、そのアレルギーと車室内VOCが直接関係するかどうかは症状や原因物質によって異なります。「アレルギー体質だから新車のホルムアルデヒドで必ず症状が出る」と一括りにすることはできません。
一方で、特定の匂いや新築住宅、新車などで目・鼻・喉の刺激、頭痛、咳、息苦しさなどを経験したことがある場合には、購入前に医師へ相談することも検討できます。症状が強く出た場合には我慢して乗り続けるのではなく、車外へ出て必要に応じて医療機関へ相談することが大切です。
車選びでは販売店に事情を伝え、購入予定車種に十分な時間試乗させてもらえるか相談する方法があります。数分座っただけでは分からない場合もあるため、可能なら実際にエアコンを使用して走行したときまで確認すると判断材料になります。
納車後にできる現実的な対策
新車を購入して匂いが気になる場合には、特殊な用品を大量に購入する前に、基本的な対策から始めるのがおすすめです。特に換気は、自工会の資料でもVOC濃度を大幅に低減する効果が示されています。
- 乗車前にドアや窓を開けて換気する
- 走行時にエアコンの外気導入を活用する
- 高温状態で長時間密閉した直後は十分換気してから乗る
- 刺激を感じる芳香剤や消臭剤をむやみに追加しない
- 納車直後に長時間乗車する必要がある場合は適宜休憩する
一方、いわゆるVOC除去商品や消臭施工については、製品ごとに対象物質や効果が異なります。「ホルムアルデヒドを完全除去」「新車の有害物質をすべて無害化」といった宣伝文句だけで判断せず、測定条件や根拠を確認したほうがよいでしょう。
症状が心配な場合には、納車後に対策を考えるより、購入前の段階で試乗車・展示車を確認し、販売店へ車室内VOCについて問い合わせるほうが安心につながります。
まとめ:最近の新車はVOC低減が進んでいるが「無臭・VOCゼロ」とは限らない
マツダを含む現在の国内新型乗用車では、自動車業界としてホルムアルデヒドなどの車室内VOCを低減する取り組みが長年行われています。そのため「昔の新車とまったく同じ状況」と考える必要はありません。
ただし、最近のマツダ車なら新車特有の匂いが完全になく、ホルムアルデヒドなどのVOCもゼロという意味ではありません。新車臭の強さには車種、内装、製造後の期間、温度、換気状態などによる違いがあり、感じ方にも大きな個人差があります。
特にアレルギーや化学物質への刺激が心配な人は、購入予定車種を実際に試乗して確認し、納車後は十分な換気を行うことが現実的な対策です。過去に新車や新築物件などで強い症状が出た経験がある場合には、自己判断だけで対策用品を選ぶのではなく、購入前に販売店や医療機関へ相談しておくと安心です。


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