アイドリングストップ車のバッテリーが2個なのは本末転倒?燃費で3万円を回収できるのか仕組みと費用対効果を解説

車検、メンテナンス

燃費を良くするためのアイドリングストップ車なのに、通常なら1個で済む12Vバッテリーを2個搭載している車を見ると、「バッテリー代や重量が増えたら、せっかく節約したガソリン代が消えてしまうのでは?」という疑問が生まれます。実際、初期のアイドリングストップ車にはメインとサブの2個のバッテリーを使う方式がありました。しかし、バッテリーを2個にした目的は単純に燃費を直接向上させることではなく、エンジンを頻繁に停止・再始動しても電力を安定供給し、アイドリングストップを実用化するための電源システムを成立させることにあります。一方で、追加バッテリーには購入費・交換費・重量というデメリットがあるため、「燃料代だけで元を取れるのか」という視点では必ずしも圧倒的に得とは限りません。この記事では、マツダの初期i-stopを具体例として、なぜ12V車なのにバッテリーが2個必要だったのか、燃焼による再始動の仕組み、3万円のバッテリー代を燃費差で回収するにはどれくらい走る必要があるのかを分かりやすく解説します。

  1. 12V車なのにバッテリーが2個あるのはおかしい?
  2. なぜアイドリングストップ車ではバッテリーへの負担が増えるのか
  3. 昔のマツダi-stopには本当にバッテリーが2個あった
  4. 初期i-stopは「燃焼の力」を利用してエンジンを再始動した
  5. それでもバッテリーが必要なのはなぜ?
  6. では2個のバッテリーは「燃費のためだけ」に追加されたのか
  7. アイドリングストップで燃費はどれくらい改善したのか
  8. バッテリー3万円を燃費だけで回収できるか計算してみる
  9. 実燃費改善が5%なら回収距離はさらに長くなる
  10. ただし「バッテリー3万円=アイドリングストップの追加コスト3万円」ではない
  11. バッテリーは永久に使えるわけではないので交換周期も重要
  12. 実はメーカー自身も2バッテリー方式をそのまま続けたわけではない
  13. なぜ後のシステムではバッテリーを1個にできたのか
  14. バッテリーを増やせば重量増で燃費が悪化するのでは?
  15. 「5秒以上止まれば省エネ」というマツダの目安もある
  16. 燃費だけでアイドリングストップの価値を評価するのも少し違う
  17. 一方でユーザー目線では「本当に得なの?」という疑問は合理的
  18. 年間走行距離によって3万円回収までの年数は大きく変わる
  19. アイドリングストップの損得は「車両全体」で比較する必要がある
  20. 現在も「バッテリー2個」がアイドリングストップの必須条件ではない
  21. 「昔の技術は無駄だった」ということでもない
  22. まとめ:バッテリー2個は燃費改善そのものではなく、初期アイドリングストップを成立させるための仕組み

12V車なのにバッテリーが2個あるのはおかしい?

まず誤解しやすいのが、「12V車なら12Vバッテリーは1個でなければならない」という点です。12Vというのは基本的な車両電装系の電圧を表しており、12Vバッテリーを何個搭載しているかとは別の話です。

例えば12Vバッテリーを2個搭載していても、それらを適切な回路で使用し、車両の電装系を12Vで動かす設計は可能です。バッテリーが2個だから単純に24V車になるわけではありません。

実際、マツダには初期のi-stopでメインバッテリーとサブバッテリーを使用する「デュアルバッテリシステム」が存在しました。マツダの技術資料では、メインにN-55、サブに26B17Lを搭載した構成が紹介されています。[参照:マツダ技報 新型デミオ向けバッテリマネジメントシステム]

なぜアイドリングストップ車ではバッテリーへの負担が増えるのか

普通のガソリン車なら、エンジンを始動した後は目的地へ着くまでエンジンを回し続けるのが基本です。ところがアイドリングストップ車では、信号待ちなどのたびにエンジンを停止し、発進すると再始動します。

エンジンが停止している間も、エアコンの送風、カーナビ、オーディオ、ライト、ワイパー、各種コンピューターなどには電気が必要です。エンジンが動いていなければオルタネーターによる通常の発電ができないため、その間はバッテリーが重要な電力供給源になります。

さらに再始動には大きな電力が必要です。つまりアイドリングストップ車のバッテリーは、通常車より短時間で充電と放電を何度も繰り返すことになります。このため現在でもアイドリングストップ車には、それに対応した専用バッテリーが使用されています。マツダも、一般のバッテリーを使用するとi-stopが正常に作動しなくなったり、燃費低下の原因になったりする可能性があると案内しています。[参照:マツダ アイドリングストップ車のバッテリーについて]

昔のマツダi-stopには本当にバッテリーが2個あった

初期のマツダi-stopでは、実際に2個のバッテリーを使用するデュアルバッテリー方式が採用されていました。マツダの技術資料によると、2009年発売のアクセラ/Mazda3からi-stopが導入され、その後ビアンテ、プレマシーなどへ展開されています。

マツダの公式FAQにも「2バッテリー式のi-stop車」という記述が残っています。それによると、メインまたはサブのどちらか一方が上がるとi-stop警告灯が点滅してアイドリングストップが作動しなくなります。一方、エンジン始動については両方のバッテリーで駆動するため、片方が上がっても始動可能と説明されています。[参照:マツダ 2バッテリー式i-stop車について]

したがって「昔、12V車なのにバッテリーが2個付いたアイドリングストップ車があった」という記憶そのものは間違いではありません。

初期i-stopは「燃焼の力」を利用してエンジンを再始動した

初期のマツダi-stopが特徴的だったのは、単純に大型スターターモーターだけで毎回エンジンを回す方式とは違い、直噴ガソリンエンジンの燃焼エネルギーを積極的に利用して再始動したことです。

エンジン停止時に再始動しやすい位置へピストンを止め、再始動するときにシリンダーへ直接燃料を噴射して点火します。燃焼によってピストンを押し下げる力を利用し、素早くエンジンを回転させる仕組みです。マツダはこの方式を「燃焼始動式」と説明しています。[参照:マツダ スマート アイドル ストップ システム]

2009年のマツダ技報では、より正確には「燃焼始動スタータアシスト」によって迅速な始動を行う仕組みが説明されています。そのため「セルモーターを一切使用しない車」と理解するより、燃焼エネルギーを主体的に利用しながらスターターも組み合わせて確実かつ高速に再始動する技術と理解する方が実際のシステムに近いでしょう。[参照:マツダ技報 マツダi-stop]

それでもバッテリーが必要なのはなぜ?

燃焼を利用して再始動できるなら、「それなら大きなバッテリーは必要ないのでは」と思うかもしれません。しかし、エンジンを燃焼で再始動させることと、車全体の電力を確保することは別問題です。

エンジン停止中にも電装品は動いていますし、エンジンを正確な位置で停止させる制御、燃料噴射、点火、各種コンピューター、そして確実な再始動のためのスターターアシストにも電力が必要です。

しかもアイドリングストップを頻繁に行うには、バッテリー残量が十分でなければなりません。現在のマツダ車でも、12Vバッテリーの状態が良好であることがi-stop作動条件の一つになっています。[参照:マツダ i-stopの作動条件]

では2個のバッテリーは「燃費のためだけ」に追加されたのか

ここは重要なポイントです。2個目のバッテリーを「これを積めば直接燃費が○%良くなる部品」と考えると、本末転倒に見えます。しかし実際には、アイドリングストップというシステムを成立させるための電源設備の一部です。

つまり、「サブバッテリーそのものがガソリンを節約している」というより、エンジン停止中の電力供給や頻繁な再始動に対応できるようにすることで、アイドリングストップを積極的に作動させ、その結果として燃料消費を減らすという関係です。

エアコンを付けるためにコンプレッサーが必要なのと似ています。コンプレッサー自体が目的ではなく、「車内を冷やす」という機能を実現するために必要な部品です。デュアルバッテリーも、初期のアイドリングストップ技術を成立させるための一つの方法だったと考えると分かりやすいでしょう。

アイドリングストップで燃費はどれくらい改善したのか

マツダが2008年に発表したSmart Idle Stop Systemでは、信号待ちや渋滞など停止機会の多い市街地を想定した日本の10・15モード試験で、燃費を約10%改善すると発表していました。[参照:マツダ Smart Idle Stop System]

またマツダの2009年技術資料でも、アクセラクラスにおいて国内10・15モードで最大約10%の燃費改善が可能だったとされています。[参照:マツダ技報 i-stop]

ただし「どんな人でも実際のガソリン代が10%安くなる」という意味ではありません。高速道路中心なら停車時間が少ないため効果は小さく、信号や渋滞の多い市街地ほど効果が大きくなります。またエアコン使用、バッテリー状態などによってi-stopが作動しない場合もあります。

バッテリー3万円を燃費だけで回収できるか計算してみる

では、「追加バッテリーに3万円かかった」と仮定して、燃料代だけで元を取るにはどれくらい走ればよいのでしょうか。分かりやすく、アイドリングストップなしでは10km/L、ガソリン180円/Lの車を例にします。

10km/Lなら1万km走るために必要なガソリンは1,000Lです。燃料代は18万円になります。

仮に燃費が10%改善して11km/Lになれば、1万kmを走るのに必要なガソリンは約909Lです。燃料代は約16万3,636円なので、差額は約1万6,364円です。

条件 アイドリングストップなし 10%燃費改善
燃費 10km/L 11km/L
1万kmの燃料 1,000L 約909L
180円/Lの場合 180,000円 約163,636円
節約額 約16,364円

この条件なら、3万円を燃料代だけで回収するには約1万8,300km走る計算になります。

実燃費改善が5%なら回収距離はさらに長くなる

実際の使用環境で燃費改善が5%だった場合も計算してみましょう。10km/Lから10.5km/Lになったと仮定します。

1万km走行時の燃料消費量は約952Lとなり、10km/Lの場合との差は約47.6Lです。ガソリン180円/Lなら節約額は約8,570円です。

この条件で3万円を回収するには、単純計算で約3万5,000km必要になります。

実際の燃費改善率 1万kmあたりの節約額の例 3万円回収までの距離
約10% 約16,364円 約18,300km
約5% 約8,570円 約35,000km

この試算だけを見ると、「3万円なら絶対に回収不能」というほどではありません。一方、短距離しか乗らない人では回収まで何年もかかる可能性があります。

ただし「バッテリー3万円=アイドリングストップの追加コスト3万円」ではない

ここで注意したいのが、バッテリー本体の販売価格をそのままアイドリングストップによる追加コストとして計算することです。

アイドリングストップがなくても普通の自動車には始動用バッテリーが必要です。そのため比較すべきなのは、バッテリー代全額ではなく、通常車とアイドリングストップ車との追加コストです。

例えば通常車でも交換に1万5,000円かかり、アイドリングストップ車のバッテリー関連費用が3万円だったとすれば、純粋な差額は1万5,000円です。逆に2個とも高価で交換周期も短ければ、維持費差はさらに大きくなります。したがって車種ごとの実際の部品価格と交換周期を見なければ正確な損得は計算できません。

バッテリーは永久に使えるわけではないので交換周期も重要

燃料代の節約額と比較するときに忘れやすいのが、バッテリーは消耗品だということです。マツダは使用条件によって異なるとしながら、バッテリー交換時期について2~3年を一つの目安として案内しています。[参照:マツダ バッテリーの点検・交換]

仮に3万円の追加費用を3万kmで燃料代から回収できたとしても、その頃にバッテリー交換が再び必要になるのであれば、単純に「3万kmを超えればあとは全部得」とはいえません。

反対に交換費用の差が小さく、年間走行距離が多く、都市部でアイドリングストップが頻繁に作動する人なら、燃料節約効果が維持費差を上回る可能性があります。

実はメーカー自身も2バッテリー方式をそのまま続けたわけではない

非常に興味深いのが、その後のマツダ自身の技術開発です。2011年の新型デミオでは、それまでのデュアルバッテリー方式からサブバッテリーを廃止したシングルバッテリー方式が採用されました。

マツダの技術資料では、それまでのi-stopシステムにはメインN-55とサブ26B17Lの2個のバッテリーに加え、パワーリレーやチャージリレーが使われていました。一方、新しいシステムではサブバッテリーなどを廃止し、Q-85バッテリー1個とDC/DCコンバーターなどを使う構成へ変更されています。[参照:マツダ技報 新型デミオ向けバッテリマネジメントシステム]

つまりメーカー側も「バッテリーを2個積めばそれで完成」と考えていたわけではなく、技術の進歩によって1個へ減らし、小型化・軽量化する方向へ進化させています。

なぜ後のシステムではバッテリーを1個にできたのか

マツダによると、新型デミオでは減速時の回生エネルギーを増やすため、オルタネーターとバッテリーを大型化しました。しかし従来の2バッテリー方式のまま大型化すると重量とサイズが増え、車両への搭載が難しくなるという問題がありました。

そこでサブバッテリー、パワーリレー、チャージリレーを廃止し、小型DC/DCコンバーターを採用することでシングルバッテリー化しています。これによって従来のデュアルバッテリー方式より小型・軽量化したと説明されています。[参照:マツダ技報 デュアルバッテリーとシングルバッテリーの比較]

この経緯を見ると、「バッテリーが2個あること自体が燃費に良い」のではなく、当時の技術条件の中でアイドリングストップを成立させるために2個方式が選ばれ、その後より効率的な方式へ改良されたことが分かります。

バッテリーを増やせば重量増で燃費が悪化するのでは?

もちろん重量増はゼロではありません。サブバッテリー、配線、リレーなどを追加すれば車重は増えるため、その部分だけを見れば燃費にはマイナスです。

しかし自動車メーカーが評価するのは「バッテリー重量だけ」ではなく、システム全体で燃料消費量が減るかどうかです。数kg程度の装備増による悪化より、停車中にエンジンを止めることによる燃料削減量が大きければ、車両全体では燃費改善になります。

一方でメーカーが後にデュアルバッテリーからシングルバッテリーへ変更して軽量化したことからも、余分な重量や部品は少ない方が望ましいことは明らかです。初期方式は技術的な過渡期の設計だったと見ることもできます。

「5秒以上止まれば省エネ」というマツダの目安もある

マツダは、アイドリングストップ非搭載車について手動でエンジンを停止する場合のFAQで、車種によって異なるものの、一般的には5秒以上アイドリングストップすると省エネにつながり燃費が改善すると説明しています。[参照:マツダ アイドリングストップの省エネ効果]

これは再始動にも燃料が必要なためです。停止時間が極端に短ければ、停止による節約効果も小さくなります。

ただしマツダは、アイドリングストップ機能のない車で運転者が頻繁に手動停止すると、スターターやバッテリーなどの寿命を低下させる可能性があるとも注意しています。アイドリングストップ車では、このような頻繁な停止・始動を前提としてシステム全体が設計されています。

燃費だけでアイドリングストップの価値を評価するのも少し違う

アイドリングストップの目的には、ユーザーのガソリン代削減だけでなく、燃料消費量やCO2排出量の削減、停車中の排出ガス削減、アイドリング騒音の低減なども含まれています。

例えば1台あたり年間数千円しか燃料代が減らなかったとしても、何十万台、何百万台という車で燃料消費が数%減れば、社会全体では非常に大きな燃料・CO2削減量になります。

したがって「ユーザーが追加バッテリー代を何年で回収できるか」と「メーカーが環境技術として採用する価値があるか」は、同じ問題ではありません。

一方でユーザー目線では「本当に得なの?」という疑問は合理的

ユーザーが自分の財布だけで考えるなら、アイドリングストップ車が必ず経済的とは断定できません。節約できる燃料代に対して、専用バッテリーの価格、交換頻度、スターターなど関連部品の負担を比較する必要があるからです。

年間3,000kmしか走らない人と年間2万km走る人では、燃料節約額が大きく違います。また高速道路中心の人と東京都心の渋滞路を走る人でも、アイドリングストップ時間は大きく変わります。

つまり「アイドリングストップは絶対に得」「バッテリー代が高いから絶対に損」のどちらも単純化しすぎです。

年間走行距離によって3万円回収までの年数は大きく変わる

先ほどの「10km/Lから11km/Lへ10%改善、ガソリン180円/L」という仮定では、3万円相当の燃料を節約するまで約1万8,300kmでした。

年間走行距離 約1万8,300km走るまで
3,000km/年 約6.1年
5,000km/年 約3.7年
10,000km/年 約1.8年
15,000km/年 約1.2年

ところが実際の改善率が5%程度なら必要距離は約3万5,000kmとなるため、年間5,000kmしか乗らない人なら単純計算で約7年かかります。

この間にバッテリー交換が必要になれば、燃料代だけを比較した経済性はさらに変わります。したがって「3万円ならすぐ回収できる」と一律にはいえません。

アイドリングストップの損得は「車両全体」で比較する必要がある

本当に経済性を調べるなら、「3万円のバッテリー」と「節約できたガソリン」だけを比較するのでは不十分です。

理想的には、同じ車をアイドリングストップあり・なしで所有した場合について、車両価格差、バッテリー交換費、燃料代、スターターなどの整備費、売却までの走行距離を合計して比較します。

その結果、5年間で燃料代が5万円減っても追加整備費が5万円なら金銭的メリットはほぼありません。反対に追加費用が2万円で燃料代が8万円減れば、ユーザーにも経済的メリットがあります。

現在も「バッテリー2個」がアイドリングストップの必須条件ではない

初期のマツダi-stopでデュアルバッテリー方式が採用されていたからといって、アイドリングストップ車には必ず2個の12Vバッテリーが必要というわけではありません。

実際、マツダは2011年のデミオですでにシングルバッテリー方式を実現しています。現在のMAZDA2についても、マツダの公式FAQではi-stop用としてQ-85の1個が案内されています。[参照:マツダ MAZDA2のバッテリー仕様]

つまり2バッテリー方式は、アイドリングストップ技術の一つの実装方法であって、永久に必要な仕組みではありませんでした。

「昔の技術は無駄だった」ということでもない

後にバッテリー1個へ改良されたのを見ると、「それなら最初から1個にすればよかった」と感じるかもしれません。しかし自動車技術は、最初から最終形が完成しているわけではありません。

初期のシステムで実用化し、実際の車で大量のデータを得ながら、バッテリー性能、発電制御、DC/DCコンバーター、電力マネジメントなどを改善して小型・軽量化していくのが技術開発の一般的な流れです。

マツダ自身の技術資料でも、デュアルバッテリーからシングルバッテリーへ移行した目的として小型・軽量化が明確に説明されています。この意味では、2バッテリー方式は「燃費のために無意味な部品を増やした」というより、当時の技術でアイドリングストップを商品化するための一つの解だったと評価する方が適切でしょう。

まとめ:バッテリー2個は燃費改善そのものではなく、初期アイドリングストップを成立させるための仕組み

12V車なのにバッテリーが2個搭載されていたアイドリングストップ車は実際に存在します。代表例の一つが初期のマツダi-stopで、メインバッテリーとサブバッテリーを使用するデュアルバッテリー方式が採用されていました。[参照:マツダ 2バッテリー式i-stop車]

ただし、バッテリーを2個にしたから直接燃費が良くなるわけではありません。エンジン停止中にも必要な電力を供給し、頻繁な停止・再始動を安定して行い、アイドリングストップという燃料節約機能を成立させるためのシステムでした。

また初期i-stopは単純なセルモーターだけの再始動ではなく、直噴エンジンのシリンダー内で燃料を燃焼させ、その力を利用する「燃焼始動」を特徴としていました。マツダは当時、約0.35秒という素早い再始動と、10・15モードで最大約10%の燃費改善を説明しています。[参照:マツダ i-stop]

バッテリー代3万円を燃料節約だけで回収できるかについては、条件次第です。10km/Lの車が10%改善して11km/Lになり、ガソリン180円/Lなら、3万円分を節約するまで単純計算で約1万8,300kmです。改善率が5%なら約3万5,000kmになります。ただし、通常車にもバッテリーは必要なので、本来比較すべきなのは3万円全額ではなく通常車との追加費用です。

一方、バッテリーは消耗品なので交換費用も発生します。年間走行距離が少ない人、高速道路中心でアイドリングストップする機会が少ない人では、燃料代だけで追加維持費を回収できない可能性もあります。したがってユーザー個人の金銭面では「アイドリングストップなら必ず得」とは言い切れません。

そして興味深いことに、マツダ自身もその後はサブバッテリーを廃止しました。2011年のデミオでは、従来のメイン+サブという2バッテリー方式から1個のバッテリーを使うシステムへ変更し、小型・軽量化しています。[参照:マツダ技報 新型デミオ向けバッテリマネジメントシステム]

そのため「燃費を良くするために重くて高価なバッテリーを永久に2個積み続ける」という設計思想だったわけではありません。当時は2個でアイドリングストップを成立させ、技術が進歩すると1個へ減らして軽量化したという流れです。「2個のバッテリーは本末転倒ではないのか」という疑問には一理ありますが、実際の技術史を見ると、まさにメーカー側も重量・コスト・燃費・信頼性のバランスを改善しながらシステムを進化させてきたことが分かります。

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