日産SR20DETエンジンでシリンダーヘッドの整備中に遭遇しやすいトラブルのひとつが、タイミングチェーンの詰まりです。特にカムシャフト装着前後にチェーンがクランク側で引っかかってしまい、チェーンが本来の位置に戻らなくなるケースがあります。本記事では、SR20DET特有の構造を踏まえ、こうした詰まりの原因と安全な解消手順を解説します。
チェーン詰まりの典型的な発生シーン
SR20DETはDOHC構造でタイミングチェーンが長く、テンショナーとガイドを経由して上部のカムギアへ接続されています。シリンダーヘッドを外した際にチェーンのテンションが抜けることで、チェーンがクランク側のギアに噛み込む、または脱線するような状態になることがあります。
とくにテンショナーのピンを戻したままにしていたり、カムを未装着の状態でチェーンを無理に動かそうとした場合、チェーンの長さが足りないように見えるトラブルが発生します。
カム非装着時にクランクを回すとどうなる?
クランクを時計回りに手動で回すことは、エンジン設計上の回転方向に合致しており、チェーン詰まりを解消する一つの手段です。ただしこのとき、タイミングチェーンが正常にガイドを通過していること、テンショナーが機能していることを確認してください。
逆に、逆回転(反時計回り)で回すと、テンショナーが機能せずチェーンが暴れて噛み込みやすくなるため、詰まりが悪化するリスクがあります。
詰まり解消の安全な手順
- テンショナーをいったん外して手で押し込み、ピンをロックする
- チェーンのスラックを上に引き上げながら、クランクをゆっくり時計回りに回す
- チェーンが正常な長さまで戻ったことを確認後、再度テンショナーをセット
- 必要であれば、チェーンガイドの位置や浮きも確認
なお、チェーンが内部で外れている場合やテンショナーのピンが戻っていない場合は、チェーンが引っかかったままになることがあります。その際はヘッドを再度外す必要がある場合もあります。
カムシャフト装着前の注意点
カムシャフトを取り付ける際、タイミングチェーンが上部のスプロケット位置に自然に来ている必要があります。無理に引っ張ってテンションをかけると、後のバルブタイミングにズレが生じ、最悪の場合バルブとピストンが干渉することも。
また、ヘッドガスケット交換後は、カムとクランクのタイミングマークを必ず確認してからチェーンを装着しましょう。
実際の整備現場でのトラブル例
あるDIYユーザーは、カム非装着のままクランクを逆回転させたところ、チェーンがクランクスプロケット裏に食い込んでしまい、最終的にオイルパン脱着が必要となったケースも報告されています。
別のケースでは、チェーンテンショナーのロックピンを戻し忘れていたため、カム装着後に異音が発生。テンショナーを再装着することで問題が解消されたとのことでした。
まとめ:焦らず正しい手順でチェーンの詰まりに対処を
SR20DETは構造上、チェーンの張りやテンショナーの働きに非常に敏感なエンジンです。チェーンが詰まった場合は無理に引っ張らず、クランクを時計回りに慎重に回しながらテンションを整えるのがポイントです。
どうしても解消しない場合や、チェーンが内部で噛んでいるような感触がある場合は、オイルパンやフロントカバーを開ける覚悟も必要です。経験のある整備士に相談するのも選択肢の一つとして検討しましょう。
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