1990年代初頭の日本は本当に“みんなお金持ち”だったのか?バブル時代のクルマ事情と庶民感覚を解説

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1990年前後、日本では「庶民でも高級車を買えた」と語られることがあります。クラウンやソアラ、セドリック&グロリア(セドグロ)、ルーチェ、パジェロなど、今では高嶺の花とされる車種が、多くの一般家庭で所有されていたという話です。本記事では、当時の経済背景や自動車市場の実情を振り返りながら、なぜこのような現象が起きたのかを解説します。

バブル経済とは?1990年前後の日本の経済状況

1986年頃から始まった日本のバブル経済は、株式や不動産価格の高騰により国全体が好景気に包まれた時代でした。企業のボーナスや給与水準も上昇し、一般家庭の可処分所得が増加していました。

この時代のトレンドは「贅沢を楽しむこと」であり、ブランド品や高級外車、ハワイ旅行などが当たり前のように語られていました。中でも自動車は、“成功の象徴”として、多くの家庭がローンを活用しながらも上位モデルを購入していたのです。

クラウンがベストセラーに?当時の販売実績を振り返る

1990年には、トヨタ・クラウンが月間販売台数でトップを記録したこともあります。クラウンは当時から「いつかはクラウン」というキャッチコピーで知られる高級車でしたが、それでも庶民が手を伸ばしていた背景には以下のような事情がありました。

  • 金利が高くてもローンの審査が緩く、多くの人が借入可能だった
  • 企業の福利厚生や補助金で車の購入費用が一部カバーされていた
  • 住宅購入よりも車のほうが“手軽な贅沢”として選ばれた

これにより、実際にクラウンやソアラが“庶民の愛車”として存在していたことは事実です。

なぜ高級車が「庶民の車」になったのか

当時の庶民の感覚では、「給料の何年分」といった長期視点で車を購入する人も多く、5年~7年ローンは一般的でした。月額の支払さえ工面できれば、車のグレードを上げることに対してさほど抵抗がなかったのです。

また、保険や税金の制度も現在よりも寛容で、ランニングコストの高さがさほど問題視されなかったことも後押し要因でした。

実際の庶民の生活はどうだったのか?

しかし、すべての家庭が裕福だったかといえばそれは誤解です。年収には大きな格差があり、家計に無理をしてまで高級車を買った家庭も多数存在していました。バブル崩壊後には、そうした無理なローン返済に苦しんだ家庭も少なくありません。

つまり、「誰もが高級車を買えた」わけではなく、「買えたように見える時代背景があった」と言うのが正確でしょう。

バブルとクルマ文化の名残は今も?

当時の名車たちは、現在でもクラシックカーやネオクラシックとして人気があります。特にソアラやセドグロは、中古市場で再評価される傾向があり、バブル時代の“憧れの車”は今でも一部のファンに愛されています。

また、当時の「車はステータス」という感覚は現代の若者とは異なり、マイカー保有率にも影響を与えていたことがうかがえます。

まとめ:バブルは“みんなお金持ち”というより、“買う気と空気”があった時代

1990年頃の日本は確かに豊かで、給与水準も高く、多くの人が将来に明るい希望を抱いていた時代でした。その中で「高級車を庶民が買う」現象が起きたのは、経済の追い風と社会の空気が後押しした結果です。

それは「本当に皆が金持ちだった」わけではなく、「皆が高いものを買っていた」時代だったのです。今振り返ると、その背景にある社会的・経済的な構造こそがバブル時代の特徴と言えるでしょう。

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