トヨタの高級車「クラウンセダン」は、その上質なデザインと最新技術だけでなく、ボディカラーにも細やかなこだわりが詰まっています。中でも注目されるのが、いわゆる「ソリッドブラック」が設定されておらず、代わりに「プレシャスブラックパール」が採用されている点です。この記事では、その背景や意図、そしてそれがもたらす価値について解説します。
ソリッドブラックとプレシャスブラックパールの違いとは?
まず「ソリッドブラック」とは、粒子感のない単一の黒色で、光沢や深みが控えめな代わりにシャープな印象を与えるカラーです。一方「プレシャスブラックパール」は、トヨタが上級モデル向けに採用しているパール(真珠光沢)を含んだブラックで、光の当たり方によって色合いが変化し、深みと高級感を演出します。
例として、昼間の自然光の下では黒に近い深いネイビーにも見え、夜間や屋内では艶やかな黒として映るなど、見る環境によって表情を変えるのが特徴です。
クラウンというブランドに求められる「上質感」
クラウンセダンは単なる高級車ではなく、「トヨタの象徴的な存在」として、重厚さ・品格・高級感を重視した設計がなされています。そのため、ソリッドブラックのようなシンプルでストイックな色合いよりも、プレシャスブラックパールのような複雑な表現ができる塗装の方が、ブランドの方向性に合致しているのです。
実際、レクサスの上位モデルでも類似のパール系ブラックが採用されていることから、クラウンセダンの位置づけとしても自然な選択といえるでしょう。
メンテナンス性の観点からも考慮されている
ソリッドブラックは美しい反面、非常に傷や汚れが目立ちやすいという弱点があります。指で軽く触れただけでも跡が残りやすく、洗車キズが白く浮かび上がってしまうこともあります。
一方、プレシャスブラックパールは多層構造の塗装により、傷の視認性が軽減されるだけでなく、洗車やメンテナンスにおいても比較的扱いやすい点がユーザーからも評価されています。
プレミアム感とブランド差別化のための配色戦略
トヨタは、車両の個性とブランド価値を高めるため、「特別塗装色」という形でパール系やマイカ系のカラーを採用しています。これにより、一般的なカラーとの差別化が図られ、価格面でもオプション料が設定されることがあります。
このような戦略は、クラウンセダンに限らず、アルファードやハリアーなど他の上位車種でも見られ、プレシャスブラックパールもその一例として位置づけられています。
なぜあえて「選べない」選択肢を設定するのか
選択肢が少ないということは、ユーザーにとって制限にも映りますが、メーカー側からすれば「ブランドイメージの統一」「車両の質感のコントロール」「残価の安定化」などの利点もあります。
特にクラウンのような歴史あるモデルでは、「色のばらつき」によって中古市場の価値や印象が分散するのを避けるため、一定のイメージカラーに絞る傾向が見られます。
まとめ:ソリッドブラックが無いのは「戦略的な選択」
クラウンセダンにソリッドブラックが設定されていないのは、「ただの仕様不足」ではなく、ブランド価値の強化とデザイン戦略に基づいた意図的な選択です。プレシャスブラックパールは、その質感と高級感によってクラウンという車の魅力をより引き立てる役割を担っているのです。
今後のモデルチェンジや限定仕様でソリッドブラックが復活する可能性もゼロではありませんが、現時点では「クラウンらしさ」を体現するための最良の選択といえるでしょう。
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