車のブレーキ系統に使用するボルト選びは、安全性に直結するため慎重に行うべきです。特にステンレスボルトは「柔らかい」「弱い」と言われがちですが、実際には強度区分によって大きく異なります。この記事では、ステンレスボルトの強度特性とブレーキ使用における適正について詳しく解説します。
ステンレスボルトの強度とは?
ステンレスボルトは、主にA2およびA4といった規格に基づいて分類されます。さらに、その中でも「A2-70」「A2-80」「A2-90」「A2-100」といった強度等級に分かれており、数字が大きいほど強度が高いことを示しています。
例えば、A2-80の耐力は600N/mm²、A2-100では約800~1000N/mm²に達します。これは一般的な鉄製ボルトの8.8=640N/mm²、10.9=940N/mm²と比較しても十分に近い数値です。
ブレーキに使用できるのか?
一部では「ステンレスボルトは破断しやすい」と言われますが、それは古い情報や適合外の使用例に基づく誤解が多いです。特にA2-90やA2-100といった高強度タイプであれば、設計やトルク管理を正確に行うことで十分な性能が得られます。
ただし、キャリパーサポートがアルミ製の場合、ネジのねじ込み長さや母材のねじ山強度にも注意が必要です。つまり、ボルト自体の強度が高くても、母材側の強度不足では意味がありません。
ステンレスの利点と注意点
ステンレスボルトの利点には、耐腐食性が挙げられます。特に塩害地域や冬季の融雪剤による腐食が心配な地域では、ステンレスが有効な選択肢となることもあります。
一方で、ステンレスは摩擦係数が高く、かじり(焼き付き)やすいため、モリブデングリスやアンチシーズなどの潤滑剤を併用する必要があります。
実例:A2-100ボルトでの使用例
とあるユーザーは、A2-100のステンレスボルトを使って自車のブレンボキャリパーを固定しています。トルク管理を徹底し、ネジロックも適切に使った結果、1年経過後も緩みや異常は一切見られなかったと報告されています。
また、ディスクローターを固定するボルトにA2-80を採用している例もあり、軽量車での使用では特に問題はないとのことです。
メーカーや規格に準じた判断を
車両の設計段階では、想定される応力や温度、振動なども考慮されてボルト選定がなされているため、基本的には純正ボルトと同等以上の性能が求められます。
もし社外ボルトに変更する場合は、JIS B 1186やISO3506などの国際規格に準拠したボルトを選び、かつ設計者レベルの理解がある方が行うことをおすすめします。
まとめ:高強度ステンレスボルトは選択肢になり得る
● ステンレスボルトでもA2-80やA2-100であれば、鉄製8.8級と同等またはそれ以上の強度を持つ
● かじり防止の潤滑やネジロックなど、取り扱いに工夫が必要
● 使用箇所の素材(アルミ等)にも配慮したトルク管理が不可欠
● 車両への適合判断は自己責任で、可能ならプロへの相談を
強度と耐久性のバランスを見極め、正しく使えばステンレスボルトも有効な選択肢になります。
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