原付バイクが突然エンジン始動しなくなると、焦りや不安に襲われます。特にAF68 Dioのようなインジェクション車両は構造が複雑で、キャブ車とは異なる診断が求められます。本記事では、セル・キックともに反応しない場合に考えられる原因と対処法について、点検ポイントを整理しながら解説していきます。
原付が始動しない3大要素を再確認
エンジンが始動するためには「良い火花(点火)」「良い混合気(燃料供給)」「良い圧縮」の3つが必要です。これらの要素がそろっていなければ、どれだけセルやキックをしても始動には至りません。
点火はプラグから火花が出ているか、燃料は新しくエアや水分が混じっていないか、圧縮はキックが重く感じるかを目安に確認します。今回のようにキックがスカスカな場合、圧縮不良の可能性が非常に高いです。
圧縮不良の原因と対策
キックが2本指でも軽く動く場合、ピストンリングの摩耗やカーボンの噛み込み、バルブの密閉不良などが疑われます。古い車両や長期放置車ではこのような圧縮不良がよく起こります。
対策としては、エンジンコンディショナーをプラグ穴から直接注入して3日間ほど放置後に再トライする方法や、エンジンのオーバーホールを検討する必要があります。
電装トラブルも並行して確認を
セルは回るのに点火系やライト、ウインカーが不調であれば、バッテリーだけでなくレギュレーターやヒューズボックス、ハーネス断線などの電装系統トラブルも考慮に入れるべきです。
とくにAF68のようなインジェクション車はECU制御が関与しているため、センサーの異常信号やECU自体の誤作動で燃料噴射や点火が遮断されることもあります。
インジェクション車特有のチェックポイント
インジェクション車両は燃料ポンプの動作確認がカギです。キーON時に「ウィーン」というポンプの作動音があるかチェックしましょう。音がなければリレー、ポンプ、または配線の断線の可能性があります。
また、キルスイッチがONの状態か、サイドスタンドスイッチが誤作動していないかなども確認が必要です。これらの安全装置が働いていると、セルは回っても燃料がカットされ始動しません。
実際に試すべき対処法
- プラグを外して混合気の臭いがあるか確認
- セル後すぐにプラグを抜き、濡れていれば燃料は届いている証拠
- コンプレッションゲージで圧縮測定(最低でも6〜7kg/cm²が目安)
- 電装系チェックにはテスターで電圧・導通を測定
これらの診断により、始動不良の根本原因に近づけます。
動画診断のポイント
提供された動画では、セルモーターの回転音はあるものの明らかに圧縮が感じられない点が注目されます。また、点火は確認済であるため、電装よりも機械的な圧縮側のトラブルが濃厚といえます。
このようなケースでは、ピストンリングの固着、またはエンジンの焼き付きが疑われます。次のステップとしては、エンジンの分解も視野に入れて整備を進める必要があります。
まとめ:始動トラブルは原因の切り分けがカギ
AF68 Dioのようなインジェクション原付が始動しない場合、電装・燃料・圧縮の3本柱を丁寧に確認することが重要です。特にキックが軽く感じられるなら、圧縮不良が主原因である可能性が高く、エンジン内部の点検が必要になります。
あせらず一つ一つの可能性を潰していけば、必ず原因は突き止められます。整備初心者の方も、焦らず確実な診断と対策を行いましょう。
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