ポルシェ928の誕生背景とアメリカ市場への戦略的意図を読み解く

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1970年代後半に登場したポルシェ928は、当時のポルシェの常識を覆すフロントエンジン・リアドライブ方式を採用した革新的なモデルでした。その一方で、「アメリカ人向けに開発されたポルシェ」との見方もしばしば語られます。果たしてその背景にはどのような戦略や意図があったのでしょうか。

ポルシェ928の開発コンセプトとは?

ポルシェ928は「911の後継モデル」として企画されました。1970年代初頭、ポルシェは911のリアエンジン方式が将来的に限界を迎えると懸念し、より快適性と安定性を備えたグランドツーリングカーを模索し始めたのです。

その結果生まれたのが、水冷V8エンジンをフロントに搭載し、トランスアクスルレイアウトで前後重量配分を最適化した928でした。スポーツ性とラグジュアリー性の両立を図ったこのモデルは、まさに新時代のフラッグシップを目指した存在でした。

アメリカ市場を意識した設計思想

当時、ポルシェの販売の中心はアメリカ市場にありました。1970年代、ポルシェ車の約60%以上がアメリカで販売されており、北米市場はビジネスの生命線とも言える存在だったのです。

そのため、928は広大なアメリカの道路環境に合ったゆとりあるV8エンジン、高速巡航性能、快適なインテリア、大柄なボディ設計など、まさに「アメリカ人好み」の仕様が随所に見られます。特にエアコンの効きやオートマチックトランスミッションの設定などは、明らかに北米ユーザーを意識したものでした。

他のポルシェとは一線を画す乗り味

911のようなタイトなスポーツ感ではなく、928はGTカーとしての滑らかな走行フィールを追求しました。これはドイツ国内よりも、ロングドライブ文化を持つアメリカで特に評価されるポイントでした。

また、初期モデルから一貫して高出力なV8エンジンを搭載していたことも、アメリカの高馬力信仰にマッチしていました。車重は増えたものの、トランスアクスルによる理想的な重量バランスにより、操縦性はスポーツカーとしても十分な水準を維持していました。

実際の販売実績とユーザー層

ポルシェ928は1978年から1995年まで生産され、累計生産台数は約6万1千台。そのうち半数以上がアメリカに輸出されました。これは、まさにポルシェが狙った市場で928が受け入れられた証拠とも言えるでしょう。

ユーザー層としては、911のような硬派なスポーツカーを求める層よりも、ラグジュアリーな車を求めるミドル〜シニア層の富裕層が多かったとされています。

まとめ:ポルシェ928は「アメリカ人向け」であると同時に「未来志向」の一台だった

ポルシェ928は確かにアメリカ市場を強く意識して開発されたモデルであり、その快適性やパワー志向の設計は多くの北米ユーザーのニーズを反映しています。しかし同時に、それは911とは異なる次世代のポルシェを志向した革新の結晶でもありました。

今日ではクラシックカーとして再評価が進む928。ポルシェの挑戦と、時代を先取りしたビジョンが詰まった一台として、アメリカだけでなく世界中の愛好家に支持され続けています。

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