日本では日常の足として大活躍している軽自動車。しかし、イギリスやデンマークといった欧州諸国では、ほとんど見かけることがありません。なぜ軽自動車はこれらの国で輸入販売されていないのでしょうか?その理由には、規格の違い、安全基準、消費者ニーズなど、いくつかの要因が関係しています。
軽自動車は日本独自の規格
軽自動車(660cc以下)は、日本の道路事情や税制優遇に合わせて設計された日本固有のカテゴリーです。全長3.4m・全幅1.48m・高さ2.0m以下というサイズ制限があり、コンパクトで燃費効率も高いことが特徴です。
しかし、この規格は国際的には標準化されておらず、欧州の「車両型式認証(Whole Vehicle Type Approval)」に適合しないことが多く、販売にあたっては個別認証や改修が必要になります。
安全基準と衝突性能の壁
ヨーロッパでは車両の安全性能に対して非常に厳しい基準が設けられており、Euro NCAP(欧州新車アセスメントプログラム)などの衝突試験で高評価を得ることが販売の前提になります。
日本の軽自動車は軽量・小型ゆえに衝突安全性能の面で不利な面があり、改造なしで欧州基準をクリアするのが難しいとされています。輸出用に安全装備を強化すると、コスト面での競争力も失われてしまうのです。
消費者ニーズの違いと道路環境
イギリスやデンマークでは、都市部を除いて道路幅が広く、中型~大型車が主流です。また、高速道路走行や長距離移動のニーズも多いため、小排気量・非力な軽自動車は選ばれにくい傾向があります。
加えて、燃料価格が高いヨーロッパでは、ディーゼル車やEV(電気自動車)が普及しており、CO2排出量ベースでの課税体系も軽自動車の利点を活かしづらくしています。
右ハンドルと輸送コストの問題
イギリスは日本と同じ右ハンドルの国ですが、EU離脱後の税関手続きや通関コスト、規格の違いなどで輸送コストが割高になっています。
また、デンマークをはじめとする多くのEU加盟国は左ハンドル市場であるため、日本の軽自動車をそのまま輸出するにはステアリング位置の変更や仕様変更が必要になります。これにより価格競争力が失われ、市場に投入する意義が薄れてしまうのです。
例外的に存在する「軽自動車系EV」の可能性
一方で、最近は軽商用EVのような超小型モビリティに注目が集まっています。例えば、ダイハツやホンダが開発している軽EV車は、都市部の配送やカーシェアリング向けとして欧州市場でも可能性があると考えられています。
実際、フランスやドイツでは「L7e」などの超小型EVカテゴリーが存在し、日本の軽EVをベースにした製品がニッチ市場に参入する動きも見られます。
まとめ
イギリスやデンマークで日本の軽自動車が輸入販売されていないのは、法規制、安全基準、ユーザーニーズ、コスト構造といった複合的な要因があるためです。日本での軽自動車の強みが、そのまま海外では活かせないという現実があります。
しかし、今後のEV化や都市型モビリティの進展により、軽自動車の新たな価値が再評価される可能性もあります。グローバル市場での「小さなクルマ」の役割は、まだ進化の余地があるのかもしれません。
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