トルクレンチを使ったボルトの締め付けは、正確な数値で行わないと部品の破損や事故につながることもあります。特に、エクステンション(延長ハンドル)などを使った場合は、設定値を調整する必要があります。この記事では、トルクレンチの設定方法について、有効長の違いを踏まえてわかりやすく解説します。
トルクレンチの基本構造と「有効長」とは?
トルクレンチの「有効長」とは、グリップの中心からソケット取付け部の中心までの距離を指します。この長さが変わると、同じ力でかけた場合でもトルクの大きさが変化します。
例えば、標準の有効長が330mmのトルクレンチに対し、延長アダプターや力点の変化がある場合には、補正が必要です。
締め付けトルクの目盛り補正式
トルクレンチの設定値T’は、以下の式で求められます:T' = T × L / (L + A)
ここで、
T:ボルトにかけたい目標トルク(例:104N·m)
L:トルクレンチの有効長(例:330mm)
A:延長工具(アダプター)の長さ(今回は0と仮定)
今回は延長なしなので、104 × 330 / 330 = 104
となり、目盛りはそのまま104N·mに設定でOKです。
エクステンションバーを使用する場合の注意点
もしエクステンション(アダプター)を使って力点が延びる場合、補正が必要です。例えば、150mmのエクステンションを使用した場合:104 × 330 / (330 + 150) ≒ 75.5N·m
に設定する必要があります。
このように、延長が加わると目盛りは「低く」設定しないと、実際のボルトには過大なトルクがかかってしまうため、危険です。
具体例で理解を深めよう
例1:330mmのトルクレンチで104N·m締め付け→そのまま104N·mに設定
例2:330mm+200mmの延長使用時→104×330/(330+200) ≒ 66.3N·m
に設定
正確な計算のためには、mm単位の正確な寸法を測定することも大切です。
正しい締め付けのためのチェックリスト
- トルクレンチの有効長を確認
- 延長工具の長さがあるか把握
- 目標トルクに対し補正式を使って設定
- 締める前に一度テストして感覚をつかむ
まとめ:力点を意識すれば締め付けはもっと正確に
トルクレンチは、ただ目盛りを合わせるだけでなく、有効長や力点を意識することで、より安全かつ精密な作業が可能になります。特に延長工具を使用する場面では補正計算を必ず行い、トルク過多によるトラブルを防ぎましょう。
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