かつて英国紳士の象徴ともされた高級車ブランド「ジャガー」は、2020年代に入り日本市場での存在感を大きく落としています。売上の低迷は単なる時代の流れだけではなく、ターゲット戦略や製品開発、ブランド構築のあり方にも課題があったと言われています。本記事では、その背景と今後の可能性について、多角的に分析します。
かつてのジャガー購入層は誰だったのか?
1990年代〜2000年代にかけて、ジャガーは「英国の伝統と品格」を体現するブランドとして中高年層から支持を集めました。特にXJシリーズは、60代以上の経営者層や医師、団塊世代に人気がありました。
一方で、若年層への訴求はほとんどなく、CM・プロモーションも落ち着いたトーンが多く「年配向け」の印象が強く残りました。
高齢化による市場縮小と買い替え不能問題
かつての主力購買層が高齢化・免許返納の時期に入ると、ジャガーの販売にも影が差します。2010年代後半以降、「次の購買層」が育っておらず、既存顧客が自然減していったのです。
特にXJの終了(2019年)は、象徴的なモデルがなくなることによって、ジャガーの象徴性そのものが曖昧になった要因とも言えます。
若年層への訴求戦略はなぜ失敗したのか?
BMWやメルセデスは、「1シリーズ」「Aクラス」などで若年層の獲得を図ってきました。一方、ジャガーはF-PACEやXEで若返りを狙ったものの、日本市場においてはマーケティング投資やタッチポイントが圧倒的に少なく、話題性に欠けました。
さらに、英国ブランドとしての「伝統と格式」が、若者にとっては“近寄りがたい”イメージとして作用したことも否定できません。
EVシフトの遅れとブランド再定義の迷走
世界的にEV(電気自動車)シフトが進む中、ジャガーはI-PACEを発表するも、ラインナップの拡充が遅れ、テスラやポルシェ・アウディなどに押されました。さらにブランドビジョンも「伝統」から「未来志向」へ大きく振れた結果、長年のファンからも“らしさが失われた”という声が増加。
2021年には「ジャガーは2025年以降、完全EVブランドに」と発表しましたが、それまでの数年間をどう乗り切るかという“空白期間”がさらなる存在感低下に繋がっています。
実例比較:他ブランドはどう若返りを成功させたか?
レクサスはUXやNXの投入で若年層の関心を引き、SNS戦略にも積極的でした。
アウディは洗練されたデザインとインフォテインメント技術で“デジタルネイティブ”を惹きつけました。
対してジャガーは、SNS活用やデジタルコミュニケーションの浸透が他ブランドに比べて遅れており、若年層との接点形成が弱かったと分析されています。
まとめ:ジャガーはなぜ日本で“終わった”ように見えるのか
- ・かつての主要購買層が高齢化し、新規顧客層を育てられなかった
- ・若者向けモデルはあっても、販売・広報が消極的だった
- ・EVシフトやブランド再定義が空回りし、方向性が見えにくくなった
今後、日本市場で復活の兆しを見せるには、「新世代ジャガー」のコンセプトをどう根付かせるかが鍵となります。
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