レーサーやスポーツバイクでよく使われるニッシン製ラジアルキャリパーですが、整備後に“ブレーキタッチが出ない/戻らない”というトラブルに悩まされるケースがあります。本記事では、原因の切り分けと改善策を具体例と共に解説します。
キャリパー/マスターシリンダー構造の仕組み
ニッシンのラジアルマウントキャリパーは複数ピストン構成で、ピストン間やマスターとの圧力バランスが重要です。
マスターに空気が含まれていなくても、ピストン戻りが強すぎるとタッチが得にくくなります。
原因①:ピストンの“かじり癖”と戻り量の影響
ピストンが奥まで戻りすぎるとマスターに戻る量が多くなり、レバー引き始めに反応しにくくなります。
実例:手を離すとピストンが戻ってしまうような時、整備後しばらく走行してタッチ復活した経験が多く聞かれます。
原因②:パッドとディスクの接触不良
パッド面を軽く面取りしても、初期慣らし(アタリ付け)が不足すると当たり面が安定せず、タッチが出にくいことがあります。
具体例:整備後20分ほど軽く走らせてディスクとの当たりをとると、タッチが戻ったという報告があります。
原因③:フルード交換手順と圧力調整不足
フルード交換時、ブリーダーを少し緩めて圧力を抜いたまま締めると、戻り側の流路が強制的に開くため、タッチが不安定になることがあります。
対策としては、交換後に必ずピストンに軽圧をかけ、内部のクリアランスを調整する必要があります。
対処手順まとめ
- キャリパー清掃・ピストン“揉み出し”後、ブレーキパッドを仮装着して軽く引きピストンを適正位置へ戻す。
- タイヤを空転させながらレバーを引き、ピストンの戻り具合とタッチの出方を確認。
- 路上(安全な場所)でディスクとパッドの初期慣らし運転を20~30分行う。
- 再度フルード交換を行い、レバー引き戻し時にピストン戻り量が適正かチェック。
マスターシリンダーの影響は?
ニッシン・ラジアルポンプ自体が原因である可能性は低く、むしろ上記のピストン戻り・パッド当たり・手順不足のほうが影響大です。
ただし、シール摩耗が進むと“戻りが強くなってタッチ低下”の原因となるため、シール交換時期を目安にチェックが必要です。
まとめ:整備と慣らしの手順が鍵
ブレーキタッチの感覚は微妙なバランスから生まれます。ピストン戻り量・パッド当たり・交換手順の3点を見直すことで、整備後でもタッチを安定させることが可能です。
不安な場合は、整備ショップで“整備→慣らし→感触確認”を一連で対応してもらうのが安心です。
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