スズキ・アドレスV125G(K9)のようなFI(フューエルインジェクション)搭載スクーターで、アイドリング不安定が続く場合、単なる清掃やセンサー類の交換では解決しないケースもあります。この記事では、走行距離5万km前後の車体に見られる「アイドリング不調」の代表的な原因と対策を解説します。
よくある対処済みの項目とその効果
まず、スロットルボディの清掃、ソレノイドバルブ(ISCバルブ)、IGコイル、クランクポジションセンサーなどの部品交換は、アイドリング不調時の定番対応です。
これらの部品は、吸気・点火・燃料調整に関与しており、交換しても改善が見られない場合は、より根本的な要因が存在する可能性が高くなります。
見落とされがちな吸気系のトラブル
FI車でアイドリングが安定しない原因のひとつが、吸気漏れです。ゴム製のインテークマニホールド(インシュレーター)が経年劣化によりヒビ割れていると、二次エアを吸い込み、空燃比が狂ってアイドリング不良を引き起こします。
この現象は、特に走行距離が5万kmを超えた車両に多く見られ、エンジンが温まると症状が悪化する傾向があります。キャブクリーナーを吹きかけて回転数が変動する場合、インシュレーターの劣化が疑われます。
エンジン本体のコンプレッション低下
5万kmを超えると、ピストンリングの摩耗やバルブシートの劣化により、エンジン圧縮が低下することがあります。これにより、始動性の悪化やアイドリングのばらつきが発生します。
簡易的なコンプレッションゲージを使えば、自宅でも目安を測定できます。V125Gの正常値は約11kg/cm²以上が理想とされています。
もし基準値を大きく下回っている場合は、腰上オーバーホール(ピストン・リング・バルブ研磨)などの対応が必要になります。
燃料系の劣化やインジェクター詰まり
インジェクターの詰まりも無視できない要因です。長期間にわたりガソリンが劣化すると、噴射ノズルにスラッジが溜まり燃料噴射量が不安定になります。
インジェクター洗浄は専用の機械が必要なため、バイクショップなどでの実施がおすすめです。費用の目安は3,000~8,000円程度です。
ECU(電子制御ユニット)の学習リセット
一部のFI車は、ECUがアイドリング調整の学習値を記憶しており、センサー交換後にリセットを行わないと効果が出にくいケースがあります。
アドレスV125Gの場合は、バッテリー端子を外して数分放置することで初期化されることがあります。さらに、IGオン→オフのパターンを特定回数繰り返すことでリセットを促す方法も存在します(車種によって異なるため詳細はサービスマニュアルを参照)。
まとめ:複合的な要因に着目し、段階的な点検を
アドレスV125G K9のアイドリング不調は、スロットル清掃やセンサー類の交換では解決できない場合、吸気漏れ・圧縮低下・インジェクター詰まり・ECUの学習不良など複合的な原因が疑われます。
まずはインテークマニホールドの状態確認と簡易圧縮測定から始め、段階的に燃料系や電装系まで点検を進めていくと良いでしょう。
走行距離が伸びている車両ほど、細かな経年劣化が重なりやすいため、焦らず1つずつ絞り込んでいく姿勢が大切です。
コメント