年収300万円で300万円以上の車に乗れるのはなぜ?新車価格の上昇とローン・世帯収入・購入予算の考え方を解説

新車

街を見ていると、年収300万円前後でも300万円、400万円を超える車に乗っている人は珍しくありません。「年収より高い車をどうやって買っているのか」「昔より給料に対して新車が高くなりすぎているのでは」と疑問に感じることもあるでしょう。

実際には、車の価格と本人の1年間の年収を1対1で比較しても、購入可能性は判断できません。車は数年間使う耐久消費財であり、現金一括だけでなく、貯金、下取り、一般的な自動車ローン、残価設定型ローン、世帯収入などを組み合わせて購入する人がいるためです。

一方で、新車価格が上昇しているという感覚にはデータ上の根拠があります。日本自動車工業会の2025年度乗用車市場動向調査では、新車の平均購入価格は331万円となり、300万円を超える新車の割合も4割を超えています。この記事では、年収300万円の人が300万円以上の車に乗れる理由と、車両価格と給与の関係、無理のない購入額を考えるポイントを解説します。

年収300万円でも300万円の車を買うこと自体は不思議ではない

まず、年収300万円だから300万円の車を買えないというルールはありません。年収は1年間に得る収入ですが、車は購入してその年だけ使うものではなく、一般的には何年間も使用します。

日本自動車工業会の2025年度乗用車市場動向調査では、前に保有していた車の平均保有期間は7.2年、新車だった場合の平均保有期間は7.3年でした。300万円の車を7年以上使うのであれば、「300万円を1年で消費する」と考えるのとは意味が違います。

単純化して300万円の車を7年間利用すると、車両価格だけなら1年あたり約43万円です。もちろん実際には保険、税金、燃料、車検、整備なども必要ですが、購入価格と年収だけを比べて高い・安いを判断するのは適切ではありません。

[参照] 日本自動車工業会「2025年度乗用車市場動向調査」

新車の平均購入価格は331万円まで上昇している

「最近の車は高くなった」という印象は、単なる感覚だけではありません。日本自動車工業会の2025年度乗用車市場動向調査によると、新車の平均購入価格は331万円でした。

同調査では、新車購入価格が300万円を超える人が4割強を占めています。そのため、現在では300万円台の車は必ずしも一部の高所得者だけが購入する価格帯ではなくなっています。

さらに2023年度調査では平均購入価格が264万円で、2017年度から上昇傾向が続いていると報告されていました。また、車両価格の高騰を認識している購入者は約8割に達していました。

[参照] 日本自動車工業会「2023年度乗用車市場動向調査」

なぜ新車価格は上がっているのか

車の価格が上昇している背景には、一つだけではなく複数の要因があります。車そのものの性能・装備が以前より充実していることもその一つです。

現在の新車では、衝突被害軽減ブレーキをはじめとした安全運転支援機能、大型ディスプレイ、各種センサー、カメラ、通信機能などが搭載される車種が増えました。ハイブリッド車や電気自動車など電動車の比率が上昇していることも、車両構成の変化につながっています。

加えて、原材料費、部品価格、物流費、人件費などの変動も製品価格へ影響します。そのため、「昔と同じような車なのに価格だけ上がった」というより、車そのものの装備・性能・製造コストが変化している面もあります。

給与も上がっているが「車が高くなった」と感じやすい

国税庁の2024年分民間給与実態統計調査によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。前年より3.9%増えており、給与水準自体も上昇しています。

一方で、車の購入価格も上昇しています。日本自動車工業会の調査では2023年度の平均購入価格264万円から、2025年度には331万円となっています。調査年や対象条件が同一ではないため単純な伸び率比較はできませんが、少なくとも新車購入価格が上昇傾向にあること自体は確認できます。

したがって、「給料がまったく上がっていないのに車だけ高騰した」と一言で表現するのは正確ではありませんが、給与上昇とは別に新車価格が大きく上がっており、購入者が負担感を覚えやすくなっているのは自然です。

[参照] 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

年収より高い車を買える最大の理由は「一括払いではない」から

300万円の車を買うからといって、購入日に銀行口座から300万円を全額支払う必要はありません。自動車ローンを利用すれば、購入代金を数年間に分けて返済できます。

たとえば300万円を年3%、7年間の元利均等返済で借りたと仮定すると、毎月返済額は約4万円です。金利や手数料などによって実際の金額は変わりますが、300万円という車両価格がそのまま一度の支出になるわけではありません。

年収300万円でも、家賃が低い、実家暮らし、他に借金がない、車以外への支出が少ないといった人なら、月4万円程度のローンを家計に組み込める場合があります。

頭金や下取りがあれば300万円すべてを借りる必要はない

車の販売価格が300万円でも、購入者が300万円全額をローンで借りているとは限りません。貯金から頭金を出したり、今まで乗っていた車を下取りに出したりするからです。

たとえば車両価格350万円でも、下取り100万円、現金50万円を入れれば、ローンで必要なのは200万円です。このケースなら「350万円の車に乗っている人」でも実際の借入額は200万円しかありません。

特に数年ごとに車を買い替えている人は、前の車に一定の下取り価値が残っていることがあります。そのため、外から車両価格だけを見ても、本人が実際にいくら現金を出し、いくら借りたのかは分かりません。

年収300万円でも貯金が多い人はいる

年収と保有資産も別物です。現在の年収が300万円でも、これまでに500万円、1,000万円と貯金している人はいます。

たとえば30歳で年収300万円でも、実家暮らしを長期間続けて700万円の預金がある人なら、300万円の車を現金で購入することも可能です。反対に年収800万円でも、住宅ローンや教育費などで毎月ほとんど余裕がない家庭もあります。

したがって、「年収300万円なのに400万円の車」という情報だけから、無理な購入をしていると判断することはできません。車を買えるかどうかは年収より、預貯金・負債・生活費を含めた家計全体で見る必要があります。

本人年収300万円でも世帯年収はもっと高い場合がある

もう一つ見落としやすいのが世帯収入です。本人の年収が300万円でも、配偶者が500万円稼いでいれば世帯の給与収入は800万円になります。

夫婦共働きなら、車を購入する本人の年収より世帯全体の家計から購入可能額を決めているケースもあります。また、住宅費や生活費を夫婦で分担しているため、本人単独の年収から想像するより車へ使えるお金が多いこともあります。

逆に本人年収300万円で配偶者・子どもを一人で扶養している場合には、同じ300万円の車でも負担感は大きくなります。「年収300万円」という一つの数字だけでは家計の余裕を比較できない理由です。

残価設定型ローンで月々の支払いを抑えているケースもある

近年の新車購入では、通常のローンだけでなく「残価設定型ローン」も使われています。これは数年後の車両価値を残価としてあらかじめ設定し、車両価格からその残価を除いた部分を中心に分割返済する仕組みです。

たとえば400万円の車について、5年後の残価を180万円と設定する契約なら、一般的な仕組みでは400万円全額を5年間で均等に返す場合より月々の支払いを抑えやすくなります。

日本自動車工業会の2025年度調査では、新車購入方法として一般のローン・クレジットと、残価設定・据置型ローン・クレジットがそれぞれ1割台半ば利用されていました。

ただし、残価設定型ローンは車両価格そのものが安くなる仕組みではありません。契約終了時には返却、乗り換え、残価の支払いなど所定の選択が必要になり、走行距離や車両状態に条件が設けられることもあります。

実は現金一括購入もかなり多い

高額な車を見ると「みんなローンで買っている」と思いがちですが、日本自動車工業会の2025年度調査では、新車の購入方法で最も多かったのは現金一括でした。

2023年度調査では「現金一括で購入」が58%とされており、特に高齢層などではその割合が高い傾向がありました。

このことからも、道路を走っている300万円、400万円の車について「その人が現在300万円以上の借金を抱えている」と考えることはできません。貯蓄、退職金、前車の売却代金などを使って購入している人もいます。

中古車なら「新車価格400万円の車」に200万円で乗れることもある

外から見ただけでは、その車を新車で購入したのか中古車で購入したのかも分かりません。新車価格400万円のモデルでも、年式や走行距離によっては中古車として200万円台で購入できる場合があります。

また、モデルチェンジ後の旧型車や走行距離が多い中古車では価格がさらに下がることもあります。外観だけなら新車と中古車の違いがほとんど分からない車種も少なくありません。

したがって、「年収300万円なのに400万円の車に乗っている」と見えても、本人が400万円で購入したとは限らないという点も重要です。

親からの援助や相続など給与以外の資金もある

車を購入する資金は給与だけとは限りません。親や祖父母から資金援助を受けたり、相続した資産を使ったり、投資など給与以外で得た資金を利用したりする人もいます。

例えば本人の年収は300万円でも、親から100万円の援助を受け、自分の貯金100万円、ローン150万円で350万円の車を購入することは可能です。

もちろん贈与を受ける場合には金額などによって贈与税の問題が生じることがありますが、「現在の給与年収=使える財産のすべて」ではありません。

300万円の車を買えることと無理なく維持できることは別

自動車購入で最も注意したいのは、「ローン審査に通った=家計にとって適正な車」というわけではないことです。車は購入後も継続的に費用がかかります。

必要になる代表的な費用には、自動車税、重量税、自賠責保険、任意保険、ガソリン・電気代、駐車場代、車検、タイヤ、オイル、修理費などがあります。

日本自動車工業会も、車の保有者は車両代だけでなく、自動車関係諸税、保険料、点検整備、有料道路料金などさまざまな費用を負担していることを示しています。

[参照] 日本自動車工業会「ユーザーの負担」

年収300万円で車両価格300万円なら月々いくらになる?

実際の負担感を見るため、300万円を全額ローンで借りる単純な例を考えてみましょう。金利を年3%と仮定すると、返済期間によって月額は大きく変わります。

借入条件の例 月々の返済額の概算
300万円・5年・年3% 約5万4,000円
300万円・7年・年3% 約4万円
300万円・10年・年3% 約2万9,000円

返済期間を長くすると毎月の支払いは低くなりますが、その分だけ利息の総額は増えます。また、ローン期間が長すぎると車を買い替える時点で前のローンが残る可能性もあります。

年収300万円なら月収換算は額面25万円程度ですが、税金や社会保険料を差し引いた手取りはそれより少なくなります。そこから月5万円の車ローンと維持費を負担するのが無理なく続けられるかは、住宅費などによって大きく変わります。

「車は年収の半分まで」というルールに根拠はある?

インターネットでは「車は年収の半分まで」「年収と同じ価格までは大丈夫」などさまざまな目安があります。しかし、すべての家庭に当てはまる公的な基準があるわけではありません。

同じ年収300万円でも、実家暮らしで家賃0円・借金なし・預金500万円の人と、家賃10万円・カードローンあり・貯金10万円の人では適正な車両価格はまったく違います。

そのため購入予算は「年収の何割」という一つの数字より、頭金を払った後も緊急資金が残るか、ローンと維持費を払っても毎月貯蓄できるかで判断するほうが実用的です。

購入前は「車両価格」より年間の車関連支出を計算する

車の負担を判断するときは、車両価格だけでなく年間総額を計算すると分かりやすくなります。

たとえばローン月4万円なら年間48万円です。そこへ任意保険8万円、税金3万円、車検・整備積立8万円、ガソリン12万円、駐車場12万円を仮に加えると、年間の車関連支出は約91万円になります。

この例では車両価格が300万円かどうかより、「年収300万円の家計から年間約90万円を車へ使って問題ないか」のほうが重要です。実際の費用は車種、地域、走行距離、保険条件などで大きく変わります。

高い車に乗っていても「お金持ち」とは限らない

高価格の車は外から確認できるため、その人の経済状態を判断する材料にされやすいものです。しかし、車から分かるのは基本的に「その車を利用している」という事実だけです。

現金で購入して預金も十分ある人、ローン返済中の人、家族名義の車を使っている人、中古で安く買った人など背景はさまざまです。

反対に、古い軽自動車に乗っている人が大きな金融資産を持っているケースもあります。車両価格と資産額・年収には一定の関係は考えられても、個人単位では必ずしも一致しません。

まとめ:新車は確かに高くなっているが、年収以上の車に乗れる理由は複数ある

年収300万円の人が300万円以上の車に乗っていても、それ自体は特別不自然ではありません。車は数年間利用する商品であり、貯金、下取り、ローン、残価設定型ローン、配偶者の収入、給与以外の資産などを組み合わせて購入できるからです。

また、外から見た車の新車価格が400万円でも、その人が中古車として250万円で買った可能性もあります。車両価格だけから購入者の年収や借入額を推測することはできません。

一方、新車価格が上がっているという認識には根拠があります。日本自動車工業会の2025年度乗用車市場動向調査では新車の平均購入価格は331万円となり、300万円超の購入が4割強でした。2023年度調査でも車両価格は2017年度から上昇傾向が続いているとされ、購入者の約8割が価格高騰を認識していました。

給与についても国税庁の2024年分調査では平均給与478万円と前年比で増えていますが、「給与が上がったから車の値上がりをまったく感じない」という状況ではありません。安全装備や電動化など車そのものの高度化に加え、さまざまなコスト上昇もあり、新車の購入負担は大きくなっています。

したがって「年収300万円なのに300万円の車はおかしい」と年収だけで判断するより、実際の借入額、毎月のローン、維持費、貯蓄、住宅費などを含めても家計が黒字になるかを見ることが重要です。買える価格と、無理なく持ち続けられる価格は必ずしも同じではありません。

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