GN125-2Fのような小排気量OHCエンジンでは、エンジンロックと見られる症状が発生した場合でも、原因が単純な内部干渉や部品の固着にとどまるケースがあります。本記事では、クランクが一時的に回った後に再度ロックする現象について、OHC構造に基づいて考えられる故障原因とその対処の糸口を解説します。
▼OHCエンジン構造とロックの関係
GN125-2FのOHC(OverHead Camshaft)エンジンは、カムシャフトがシリンダーヘッド上部にあり、チェーン駆動でクランクシャフトと連動します。構造上、カムチェーン・テンショナー・バルブ系統・カムホルダーが固着や干渉を起こすと、クランクの回転を阻害する可能性があります。
特にヘッドカバーを取り外した状態でクランクが回るのに、再び組み付けるとロックする現象は、「上部部品の干渉」か「組付けトルクによる歪み」が疑われます。
▼考えられる原因①:カムシャフトの固着・焼き付き
最も多い原因はカムシャフトのベアリング焼き付きや、ホルダーとの当たりが強すぎて軸が回らない状態です。これにより、クランクからの駆動で回らず、まるでエンジンがロックしているように見えます。
特にエンジンがオイル管理不良だった場合、タペットやシャフトが軽く焼きついていることもあります。オイル通路の詰まりやOリング欠落も要確認ポイントです。
▼考えられる原因②:テンショナーの不良・過張力
GN125-2Fは自動式または手動式のカムチェーンテンショナーを使用しており、テンショナーが過度に張力をかけていた場合や、内部で固着していた場合、チェーンが過緊張になりクランク回転にブレーキがかかります。
ヘッドカバーを仮組み状態で締めすぎるとテンショナーの動きが制限され、カム軸に余計な負荷がかかるケースがあります。再使用時にはテンショナーの状態を点検し、可能なら仮締め状態でのチェーン動作を確認しましょう。
▼考えられる原因③:バルブとピストンの干渉
カムスプロケットやタイミングチェーンの組みミスによってバルブタイミングがずれると、バルブとピストンが干渉して回らなくなることがあります。ピストン上死点付近でのバルブの動きと、バルブの開度タイミングを確認することが重要です。
特にカムギアの位相ズレ、チェーンのコマ飛びなどが発生していると、手でクランクを回している途中で急に止まるような感触が出ることもあります。
▼実例:似た症状のあった整備事例
・GN125のエンジンにて、クランク回らず→テンショナー内部バネ破損+カムシャフト摩耗が原因でロック
・ヘッドカバー組付け後のみロック→カムホルダーボルトの過締めによりシャフトが圧迫されて回らず
・バルブ組み間違いによりピストン干渉、異音発生+強制ロックで再始動不可(タイミング再設定で復旧)
▼確認の手順チェックリスト
- カムシャフトとホルダーの当たりを手で確認(手回しでスムーズか)
- テンショナーを外した状態でのチェーンたるみ確認
- バルブスプリングの戻りとリフターの動作確認
- ピストンTDC位置でのバルブ干渉の有無(バルブが開いていないか)
- クランクシャフト単体でのスムーズな回転チェック
▼まとめ
GN125-2Fエンジンで「カバーなしではクランクが回るが、組むとロックする」という場合、多くは上部機構(カム/テンショナー/ヘッドカバー)の干渉や締め付けバランスの不備が原因です。
焦らず一つずつ部品を分解・確認しながら再組付けを行いましょう。異常が見つからない場合でも、カムシャフトの当たり面やバルブの動作を丹念に確認することで原因が見えてくる可能性があります。
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