ホンダのカラーコードNH737M(ポリッシュドメタル・メタリック)を市販の補修用缶スプレーで塗装したところ、純正塗装より黒い、濃いダークグレーに見えることがあります。同じNH737Mというカラーコードの商品を選んだのに色が合わないと、塗料メーカーを変えれば解決するのか、それとも塗り方や下地に原因があるのか判断しにくいものです。
自動車補修塗装では、カラーコードが同じだからといって、補修部分と既存塗膜が完全に同じ色に見えるとは限りません。特にメタリックカラーは塗料そのものの色だけでなく、メタリック粒子の並び方、塗膜の厚さ、下地、スプレー距離、クリア塗装、既存塗装の経年変化などによって見え方が変化します。
ここではNH737Mを例に、市販缶スプレーで色が黒っぽく見える主な理由、ホルツとソフト99などメーカーを変更した場合の考え方、そしてDIYで色差を小さくするためのポイントを整理します。
NH737Mとはどんなボディカラーなのか
NH737Mは、ホンダ車に採用されているポリッシュドメタル・メタリックのカラーコードです。グレー系のメタリックカラーで、光の当たり方によって明るいガンメタリックにも、かなり濃いグレーにも見えます。
ここで重要なのが末尾の「M」です。一般にメタリック系の塗装には金属調の粒子が含まれており、この粒子が光を反射することで独特の明暗が生まれます。そのため、単純な白・黒などのソリッドカラーと比較するとDIYでの部分補修は難しくなります。
例えば同じ塗料を使った場合でも、正面から見ると近い色なのに斜めから見ると補修部分だけ黒く見える、といった現象が起こり得ます。このように見る角度によって色差が変化するため、「塗料自体が間違っている」とは限らない点がポイントです。
同じNH737Mなのに黒く見える主な原因
缶にNH737Mと記載されているにもかかわらず補修部分が黒っぽくなる場合、まず考えたいのがメタリック粒子の配向と塗装条件です。メタリック塗料は吹き付け方によって粒子の並び方が変わり、それが明るさの違いとして現れます。
スプレーガンによる自動車補修でも、塗料の吐出量、エア圧、ガン距離、塗装速度などによってメタリックの見え方は変化します。缶スプレーではこれらを細かく調整しにくいため、広いフェンダーなどでは色差が目立ちやすくなります。
特に塗料を一度に厚く吹き付けて濡れた状態にしすぎると、メタリック粒子の状態が変わり、想定より暗く見える場合があります。反対に仕上げ段階で適切に薄く均一に吹くことで、メタリック感が整いやすくなる場合があります。
塗料の攪拌不足にも注意
メタリック塗料では缶の中の顔料や粒子が沈降していることがあります。そのため使用前の攪拌が不十分だと、本来想定されている色調にならない可能性があります。
缶スプレーはメーカーが指定する方法・時間に従って十分に振り、塗装中も適宜攪拌することが大切です。使用方法については必ず購入した製品の説明書を優先してください。
ホワイトプラサフは色の違いに影響する?
下地にホワイトプラサフを使用した場合、「白い下地なのだから完成色も明るくなるはず」と考えたくなります。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
上塗りを十分な隠ぺい状態まで重ねれば下地色の影響は小さくなります。一方、塗膜が薄く下地がわずかに透ける状態では、下地色によって完成時の色調が変化することがあります。そのため、補修用塗料によっては指定または推奨される下塗り色が設定されている場合があります。
また、白い下地を完全に隠そうとしてカラーベースを何度も厚塗りすると、結果的に塗膜が厚くなり、メタリックの見え方に影響することも考えられます。プラサフの色だけでなく、カラーベースをどの程度・どのように重ねたかまで確認する必要があります。
ホルツからソフト99に変えれば明るくなるのか
同じNH737Mでも、市販補修塗料はメーカーによって調色設計や塗料の仕様が異なる可能性があります。そのため、別メーカーの商品を使用したときに見え方が多少変わることは考えられます。
しかし、メーカーをホルツからソフト99などへ変更すれば必ず黒っぽさが解消する、とは言えません。どちらもNH737Mとして設定された製品であれば、基本的にはその純正色を再現することを目的とした補修塗料だからです。
さらに、色差の原因が塗装方法、既存塗膜、メタリック粒子の配向などにある場合、メーカーを変更しても同様の色差が出る可能性があります。いきなりフェンダー全体を塗り直すのではなく、不要な金属板やテストピースなどへ試し吹きし、乾燥・クリア塗装まで行ってから実車と比較するほうが安全です。
カラーコードが同じでも完全一致しない理由
自動車のボディカラーにはカラーコードがありますが、カラーコードは「この番号なら世界中の車が完全に同一色」という意味ではありません。同じカラーコードでも生産時期や塗装条件などによって個体差が生じることがあります。
さらに、実際の車は紫外線、雨、洗車、保管環境などの影響を何年も受けています。新車時と現在の塗膜では色調が微妙に変化していることもあるため、新しく作られた補修塗料と現在の車体色が完全一致しない場合があります。
プロの板金塗装では、カラーコードだけで塗料を決定するのではなく、実車の色を確認しながら調色したり、隣接部分へ徐々に色をなじませるぼかし塗装を行ったりして色差を目立ちにくくします。DIYでフェンダー1枚を境界線まで単色で塗ると、隣のドアやバンパーとの違いがはっきり見えやすいのはこのためです。
クリア塗装前と完成後では見え方が違う
メタリックカラーでは、カラーベースを塗った段階だけを見て「黒すぎる」と判断するのは早い場合があります。製品の塗装システムによっては、その上からクリアを施工して初めて本来に近い光沢と深みが得られます。
艶のないカラーベースと、クリアによって光沢が出た完成面では光の反射が大きく異なります。そのため色比較をするなら、できればメーカー指定の工程をすべて終え、十分に乾燥させたテストピースで確認します。
また、屋内照明だけでなく屋外の日光、日陰、曇天など複数の環境で確認すると違いが分かりやすくなります。メタリックカラーでは、ある角度では一致しているように見えても別角度では暗く見えることがあるためです。
NH737MをDIY補修するときのチェックポイント
色が合わないときは、塗料メーカーを次々変更する前に工程を一つずつ確認すると原因を絞り込みやすくなります。特に次の項目は確認しておきたいポイントです。
- 車両側のカラーコードが本当にNH737Mか確認する
- 缶スプレーの商品番号・対応カラーを再確認する
- メーカー指定どおり十分に缶を攪拌する
- 推奨される下地色やプラサフを確認する
- 一度に厚塗りせず、指定された塗装間隔を守る
- スプレー距離と移動速度をなるべく一定にする
- クリアまで含めた完成状態で色を比較する
- 本番前にテストピースへ試し吹きする
特にフェンダーのような面積の大きいパネルでは、小さなタッチアップとは難易度が大きく異なります。数センチ程度の補修なら多少の色差が目立たなくても、パネル単位になると隣接パネルとの差が一気に分かりやすくなります。
また、製品によって推奨工程が異なるため、下地・カラー・クリアを異なるメーカーで組み合わせる場合には塗膜の相性にも注意が必要です。各メーカーの商品説明や注意事項を確認してから施工することが重要です。
どうしても色が合わないなら調色という選択肢もある
市販缶スプレーは手軽で便利ですが、既存塗膜への完全な色合わせを保証するものではありません。何度試しても補修箇所が明らかに黒い、あるいは隣のパネルとの差が大きい場合は、板金塗装店などへ相談する方法があります。
専門業者では実車に合わせた調色や、必要に応じたぼかし塗装によって色差を目立ちにくくできます。特にフェンダーを丸ごと塗装する場合、DIY用缶スプレーを何本も購入してやり直すより、最終的には専門業者へ依頼したほうが効率的なケースもあります。
DIYを続ける場合でも、現在の塗装をすぐ剥がして別メーカーで全面再塗装するのではなく、まず別の板へ候補となる塗料を塗り、実車のフェンダーやドアと比較する方法が失敗を減らせます。
まとめ:NH737Mが黒く見える原因は塗料メーカーだけとは限らない
ホンダNH737M(ポリッシュドメタル・メタリック)を市販缶スプレーで補修して純正塗装より黒く見えたとしても、ただちに塗料そのものが間違っているとは判断できません。メタリックカラーでは、塗り方、塗膜の厚さ、粒子の配向、下地色、クリア、既存塗膜の経年変化など複数の要素が完成色に影響します。
ホルツとソフト99などメーカーによって仕上がりに差が生じる可能性はありますが、別メーカーのNH737Mなら必ず明るくなるというものでもありません。本番施工前に同じ下地・カラー・クリアの工程をテストピースで再現し、完全乾燥後に実車と比較するのが確実です。
そして、フェンダーのような大きなパネルで既存塗装との色差をできるだけ小さくしたい場合、市販のカラーコード指定塗料だけでは限界があります。色差が大きい場合には、実車を確認して調色できる板金塗装店へ相談することも有力な選択肢です。


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