以前の日本の運転免許証には「本籍地」の記載がありましたが、現在ではこの欄が削除されています。なぜ本籍の記載がなくなったのか、その背景と現代における意義について解説します。
なぜ本籍欄が廃止されたのか?
運転免許証の本籍欄は、2010年(平成22年)1月4日から廃止されました。これは運転免許証のICカード化にともない、個人情報保護の観点から本籍地の情報を表面に表示しないよう変更されたためです。
ICチップ内には記録されているものの、表面に記載しないことで、落としたり盗まれた際の個人情報の悪用リスクを減らす狙いがありました。現住所は運転や身分証明に直接関係する情報であるため記載されています。
「出身が外国かどうか」を隠すためではない
「本籍が記載されないのは出身が外国だと分かるからでは?」という意見もありますが、これは誤解です。本籍はそもそも「戸籍の所在地」を示すものであって、国籍や出生地とは必ずしも一致しません。
例えば日本国籍を有する人でも、転籍や結婚などで本籍を任意の都道府県に設定していることがあります。したがって「外国出身かどうかを隠す」という理由は公式には存在しません。
ICチップには本籍情報が記録されている
ICカード化により、運転免許証のICチップには依然として「本籍」情報が記録されています。これは、警察などの公的機関で必要な場合に限り読み取ることができるようになっています。
本人が希望すれば、パスワードを用いて本籍を確認することも可能です。ただし、通常の用途ではこの情報が使われることはありません。
なぜ現住所は記載されているのか?
現住所は運転免許証を身分証明書として利用するために重要な情報です。銀行口座開設や携帯電話の契約などで、住所確認の書類として運転免許証を提示するケースが多く、住所の記載は不可欠です。
一方、本籍は多くの生活シーンで使われる情報ではないため、外部に公開する必要がないと判断されました。
本籍情報が必要な場面ではどうする?
パスポート申請や一部の公的手続きで本籍が必要な場合には、住民票(本籍記載あり)を取得するのが一般的です。住民票の交付時に「本籍欄あり」で請求することで、必要な情報が得られます。
また、自分の免許証に記録されている本籍を確認したい場合は、警察署や運転免許センターに設置されているIC読取端末で確認できます。
まとめ|個人情報保護が最大の理由
運転免許証から本籍欄が廃止されたのは、個人情報保護とICカード化によるセキュリティ向上が主な理由です。「出身地を隠す」などの噂は根拠に乏しく、制度の透明性と合理性を目的とした措置といえます。
本籍の確認が必要な場合には、住民票の発行やICチップの読み取りなど、正しい手段での対応が可能です。個人情報の扱いがますます重要になる中で、こうした制度変更は今後も続く可能性があります。
コメント