ボアアップやチャンバー、キャブ交換などでパワーアップを図る際、意外と見落とされがちなのが駆動系の状態。特にクラッチ周りに異常があると、加速不良や変な吹け上がりの原因になります。この記事では、2ストビーノを68ccにボアアップした際に発生した不具合を事例に、クラッチアウターローターのグリス付着や異常症状の原因を掘り下げていきます。
加速時の「パァパァパァ~」という吹け上がりの違和感
まず、実走時の「パァ~パァパァパァ~」と断続的に吹ける症状について。無負荷(センタースタンド時)ではきれいに吹けるにもかかわらず、実走行では20〜30km/h付近でもたつくのは、負荷時に駆動系の伝達ロスが起きている可能性が高いです。
このような症状は以下の原因が考えられます。
- クラッチシューの滑り
- ベルトの空転(摩耗やグリップ不足)
- ウェイトローラーやプーリーの不適合
その中でも今回のケースでは、クラッチアウターローター内側の異常なグリス付着が決定的な要因になっているようです。
クラッチアウター内のグリスは異常!正常時は完全にドライ
クラッチアウター内は、クラッチシューが遠心力で拡がって接触・摩擦によって動力を伝える仕組みです。つまり、この部分は完全に乾いた状態が正常です。
グリスが付着していたということは、シューが滑ってトルクが伝わらない状態になっていたと考えられます。実際、「滑っているような吹け上がり」や「もたつき」はまさにその典型です。
グリスが入り込む原因としては。
- クラッチシャフトやトルクカム周辺のグリスが過剰で飛散した
- 整備時に誤ってグリスがついた
- シール類の劣化により漏れた
などが考えられます。
脱脂後に再セッティングすべきポイント
クラッチアウターとシューを完全に脱脂するのは正しい対応です。その後は、以下の点も確認・調整しましょう。
- クラッチスプリングの強さ:早すぎる接続や滑りの原因になるため、パワーに合った硬さに変更
- トルクカムのグリス:グリスの量が適切か、シール状態に異常はないか確認
- ウェイトローラーの重量:重すぎると吹けが鈍り、軽すぎると回転だけ上がって前に進まない
クラッチそのものが摩耗している場合は、シューやアウターの交換も視野に入れてください。
同様の症例:よくある「滑る原因」とその対応例
他のユーザーからも、次のような症状が報告されています。
- グリスが飛び散ってクラッチがまったく接続しない
- スタート時に「ウィンッ、ウィンッ」と波打つような回転音
- クラッチ焼けによる焦げたにおいと黒ずみ
こうしたトラブルを未然に防ぐには、定期的な駆動系メンテナンスと、グリス塗布時の量や場所に細心の注意を払うことが重要です。
まとめ:グリスで滑るクラッチに要注意!症状の原因を正確に診断しよう
2ストビーノのセッティング中に遭遇した「クラッチアウターにグリスがベタベタ」という異常は、決して見過ごせるものではありません。これは明らかに不適切な状態であり、加速不良や滑りの原因になります。
まずは完全脱脂し、その後クラッチやトルクカムの点検、必要に応じたセッティング変更を行うことで、正しい吹け上がりと加速感が戻るはずです。ボアアップ車両はノーマルとは異なるバランスが求められるため、駆動系との整合性を丁寧に見直すことが成功への近道です。
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