長年お世話になった整備工場が廃業するという話を聞くと、少なからず寂しさと不安を感じる方も多いことでしょう。実は現在、全国的に小規模整備工場の廃業が増えています。その背景には、整備士の高齢化や、新しい技術導入の負担、さらに制度や税制の変化といった複数の要因が重なっています。本記事では、こうした動向の背景と今後の展望について、わかりやすく解説します。
整備工場の高齢化と後継者不足
現在、自動車整備士の平均年齢は50歳を超えており、特に個人経営の整備工場では70歳前後まで現役というケースも珍しくありません。長年地域密着で営業してきた整備士の多くは、引退後に後継者がいないため廃業を選ばざるを得ない状況です。
また、若い世代が自動車整備士という職業に魅力を感じにくくなっているのも要因の一つで、国家資格が必要でありながら待遇面での魅力が不足しているとも言われています。
新制度「OBD検査」の導入がもたらす影響
2024年10月から新車を対象に段階的に導入される「OBD検査(オンボード・ダイアグノーシス検査)」は、車載コンピュータの異常をチェックする新しい制度です。これにより、整備工場には新しい診断機器の導入やスキル習得が求められ、数十万円〜百万円以上の投資が必要となるケースも。
OBD検査は安全性や環境性能の向上には重要な制度ですが、経営体力の弱い小規模工場にとっては導入コストが重くのしかかり、廃業の判断材料になっている現実もあります。
税制変更と車検制度の変化
13年以上経過した車両に対する「自動車税・重量税の割増」は、古い車を所有し続けることへのコスト負担を重くしています。環境負荷の高い車を減らすことを目的とした政策ですが、結果的に長く車を大切に乗るユーザーや、整備の需要を担ってきた整備工場にとっては逆風となっているのも事実です。
また、車検時期を「2ヶ月前から受け付け可能」とする柔軟な制度変更も、一見利便性向上のように見えますが、整備工場側には予約の集中や作業スケジュール管理の負担増という課題も生んでいます。
政府・政党による政策の影響はあるのか?
これらの制度変更や政策の多くは、国土交通省や環境省が中心となって進めています。政治的には、自民党の政策を軸に、脱炭素やカーボンニュートラルに向けた方向性が反映されているため、党派による違いというよりは国全体としての長期方針と見るべきでしょう。
とはいえ、現場に与える影響が大きい割に支援策が限定的であるため、整備業界からの声を吸い上げる機能や補助金制度の充実は今後の課題といえます。
ユーザー側ができることと、今後の整備業界の展望
ユーザーとしては、整備記録をデジタルで残す、自動車整備士の国家資格保有者が在籍する店舗を選ぶ、信頼できるディーラーとの付き合いを築くなどが有効です。
また、整備補助金や自治体の支援制度が出ている地域もあるため、「整備工場支援 補助金 地域名」などで調べてみると良いでしょう。
まとめ:制度と時代の変化により整備工場の淘汰が進む時代へ
長年親しまれてきた整備工場が廃業する背景には、制度の変化、高齢化、設備投資負担など複合的な要因があります。個人経営の工場にとっては、新制度に対応するためのコストや労力が限界を迎えているのが現実です。
ユーザーとしても、信頼できる整備拠点を見直しつつ、時代に合ったメンテナンスの選択肢を模索していくことが求められています。
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