ハーレーダビッドソンFXDBB(2015年式)などのBCM(ボディ・コントロール・モジュール)搭載車では、ウインカー操作系も従来のリレー式から電子制御へと進化しています。右手の操作に支障がある場合など、右ウインカースイッチを左手側へ増設したいという要望もありますが、BCM搭載車特有の配線構造を理解せずに改造すると、誤作動やBCMへの負荷を招く可能性もあります。本記事では、BCM車のウインカースイッチ増設の考え方と具体的な対処法、配線上の注意点について詳しく解説します。
BCM搭載車のスイッチ配線の基本構造
2011年以降の一部モデルから採用されたBCM(Body Control Module)は、従来のリレーやフラッシャーユニットを使わず、すべての信号をCANバスもしくは独自のデジタル信号で制御しています。
従来のように「茶/白」「橙/白」といったウインカー配線にスイッチを割り込ませる方式は使用できず、スイッチ自体が電子信号を出力するため、基板とBCM間で通信が成立していることが前提となります。
したがって、スイッチ配線を物理的に「並列化」して追加するには、信号線の特定とスイッチの仕様確認が不可欠です。
ウインカー回路の配線色と識別ポイント
BCM搭載車のウインカースイッチに使われている配線は、モデル年式や仕様により異なる場合がありますが、2014〜2017年のFXDB系では、以下のような色が該当するケースが多いです。
- 右ウインカースイッチ信号線:白/紫(White with Purple tracer)
- 共通グラウンド線:黒(Black)
- 電源ライン:赤またはオレンジ
上記はメインハーネスとスイッチ基板をつなぐコネクター付近で確認可能です。必ずサービスマニュアルまたはテスターで通電を確認したうえで作業することが重要です。
左側スイッチへの増設方法と注意点
物理的に左スイッチボックスにスイッチを追加する方法としては次の手順が考えられます。
- 左側スイッチボックスに空きスペースがあることを確認
- 右スイッチ信号線(例:白/紫)を分岐させ、延長して左側に配線
- スイッチ側はノーマルと同じ瞬間式(モーメンタリ)タイプを使用
- GNDは共通またはスイッチ内部で接続
なお、BCMに対して並列スイッチを増設しても通常は問題ありませんが、基板側に直接ハンダ付けするのは推奨されません。必ずコネクター部分で分岐するか、専用の中継ハーネスを利用してください。
BCMとCAN通信を考慮した施工例
ハーレーのBCMシステムでは、スイッチ入力が「単なる通電信号」ではなく、CAN通信やデジタル制御でBCMに伝達されています。したがって。
- 信号干渉のリスクがある並列増設は避ける
- 純正スイッチやBCM互換品の利用が望ましい
- 診断モードで動作確認を行う
実際にスイッチ増設を行ったユーザーの中には、モーメンタリスイッチを白/紫線に分岐接続し、問題なく作動した例もあります。ただし、CAN配線と誤って接続したことでBCMの故障に至ったケースも報告されています。
プロショップに相談する価値も大きい
BCM制御モデルのカスタムは高度な知識を要するため、不安がある場合はハーレー専門ショップや電子制御に詳しい整備士に依頼するのが確実です。
また、障害を持つライダー向けに操作系のカスタムを行っているバリアフリー対応のバイクショップも存在します。スイッチの設置位置やボタン形状など、自分に合わせた施工が可能です。
まとめ:BCM搭載ハーレーのスイッチ増設は慎重に計画を
ハーレーFXDBBなどのBCM搭載モデルでは、ウインカースイッチの配線が従来モデルと大きく異なり、単純な並列接続ではトラブルのリスクがあります。配線色の特定・スイッチの仕様・増設位置・接続方法などを丁寧に確認し、可能であれば専門家のサポートを受けて作業するのがベストです。
電子制御を理解しながら工夫すれば、身体的制約を超えて快適にバイクを楽しむカスタムも十分に実現可能です。
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