バイクや水上オートバイなどのエンジンを長期間保管する際には、内部の金属部品が錆びないようにする「防錆処理」が重要です。特に燃焼室内に油膜を張って内部腐食を防ぐ方法は、整備や格納点検の基本作業のひとつとして広く知られています。この記事では、プラグを外して潤滑剤を注入する作業の意味や目的、そして正しい方法について詳しく解説します。
長期保管前の「防錆処理」とは?
エンジン内部の金属は、長期間動かさないことで空気中の湿気や燃焼ガスの残留成分によって腐食が進行するおそれがあります。これを防ぐため、燃焼室内に防錆性のあるオイルや潤滑剤を吹き込み、ピストンを数回動かしてシリンダー壁に油膜を作る作業が行われます。
このような処置は専門的には「シリンダー防錆処理」や「エンジン格納処理(エンジンプリザベーション)」と呼ばれています。航空機や船舶などでも使われる、非常に信頼性の高い保全技術です。
作業手順:点火プラグを外して行う防錆処理
防錆処理の基本手順は以下の通りです。
- 点火プラグを取り外す
- CRC 5-56などの潤滑・防錆剤をシリンダー内に適量噴射
- スターターモーターを空回しするか、キックペダルを踏んでピストンを数回上下させる
- プラグを戻して作業終了
この操作によって、シリンダー壁面全体に防錆油膜が形成され、内部の錆びを防ぐ効果が期待できます。特に湿気が多い地域や冬季の保管には非常に有効です。
なぜCRC 5-56を使うのか?
CRC 5-56のような浸透性防錆潤滑剤は、薄い油膜で金属表面をコーティングする特性があり、エンジン内部のような密閉空間にも均一に広がりやすいため、格納前の処置に適しています。
ただし、エンジン再始動時には燃焼室に残った潤滑剤が一時的に白煙となる場合がありますが、これは異常ではなく自然な現象です。心配はいりません。
実例紹介:バイク格納処理の失敗と成功の違い
あるユーザーは、2年間ガレージ保管していた水上バイクを始動しようとしたところ、エンジンが固着して動かず、分解するとピストンとシリンダーに錆が発生していたというケースがありました。これは保管前に防錆処理を行わなかったためです。
一方、別のユーザーはプラグ穴からオイルを注入し、毎月クランキングしていたことで、2年後も問題なくエンジン始動できたとの報告もあり、いかに防錆処理が効果的かがわかります。
保管時の補足ポイント:湿気対策と始動前処置
格納場所の湿度が高いと、せっかくの防錆処理も効果が落ちてしまいます。ガレージ内には除湿剤や乾燥剤を設置したり、換気を適度に行ったりすることも有効です。
また、エンジン再始動前にはプラグを一度抜き、オイルや潤滑剤の状態を確認し、手動でクランキングして異音や抵抗がないかチェックすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
まとめ:防錆処理は長期保管の必須作業
バイクや水上バイクの長期保管では、「シリンダー防錆処理」がエンジンの寿命を守る鍵になります。点火プラグを外して潤滑剤を注入し、ピストンを数回動かすだけの簡単な作業ですが、その効果は絶大です。
正しい手順で処理することで、エンジン内部の錆を防ぎ、再始動時も安心して使える状態を維持できます。大切な愛車を長く楽しむために、ぜひ防錆処理を習慣に取り入れてみてください。
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