なぜスズキは125ccの新基準原付スクーターを出さない?アドレス125を「リミッター化するだけ」ではない理由と原付撤退の可能性を解説

新車

2025年4月1日から、従来の50cc以下に加えて、排気量50cc超125cc以下かつ最高出力4.0kW以下に制御された二輪車も、原付免許や普通自動車免許で運転できる「新基準原付」として認められるようになりました。ホンダはDio110 Liteなどの「Honda Lite」シリーズ、ヤマハはJOG ONEを発売しており、125ccクラスをベースにした新しい原付一種が実際に市場へ登場しています。

一方、2026年8月時点のスズキ国内ラインアップを見ると、アドレス125、アヴェニス125、バーグマンストリート125EXといった原付二種スクーターは販売されているものの、原付免許で乗れる新基準原付スクーターは掲載されていません。従来の50ccモデルであるレッツ、レッツバスケット、アドレスV50はいずれも生産終了と表示されています。[参照:スズキ 二輪車ラインアップ]

では、なぜアドレス125の出力を落として販売しないのでしょうか。結論からいうと、スズキは2026年8月時点で、新基準原付スクーターを発売しない理由を公式に明らかにしていないため、「会社の体力がないから」「採算が取れないから」と断定することはできません。ただし、新基準原付は既存125cc車へ単純な速度リミッターを追加するだけの商品ではなく、制度面・技術面・商品企画面で新たな対応が必要です。

そもそも「新基準原付」とは何か

新基準原付とは、排気量そのものを125ccまで自由化した制度ではありません。警察庁によると、2025年4月1日から原付一種として扱われる範囲に、総排気量50cc超125cc以下で、最高出力が4.0kW以下の二輪車が追加されました。[参照:警察庁 一般原動機付自転車の車両区分の見直しについて]

重要なのは「125cc以下なら原付免許で乗れる」という制度ではないことです。通常の125cc原付二種で最高出力が4.0kWを超えている車両は、従来どおり原付免許や普通自動車免許だけでは運転できません。

交通ルールも従来の原付一種と同じです。最高速度は30km/hで、二人乗りは禁止、一定の交差点では二段階右折が必要です。排気量が110ccや125ccになっても、原付二種と同じルールになるわけではありません。[参照:警察庁 新基準原付案内]

新基準原付が生まれた背景は50cc車の排出ガス規制

新基準原付が設けられた背景には、従来型50ccエンジン車を取り巻く排出ガス規制があります。

国土交通省によると、50cc以下の原付のうち設計最高速度50km/hを超えるものには2025年11月以降新たな排出ガス規制が適用されることになり、メーカーから「技術面及び事業性の観点から、規制に適合した車両の生産・販売が困難」との見込みが示されていました。そこで、50ccより排気量の大きなエンジンを使いながら最高出力を4.0kW以下に制御する新しい原付一種区分が整備されました。[参照:国土交通省 一般原動機付自転車について]

つまり新基準原付は「原付を速くする制度」ではなく、50cc車を従来どおり作り続けることが難しくなったため、より大きな排気量のエンジンを低出力化して原付一種の代替車を作りやすくする制度と理解すると分かりやすいでしょう。

ホンダとヤマハはすでに新基準原付スクーターを発売している

ホンダは2025年に「Honda Lite」シリーズを発表し、スクーターではDio110 Liteを発売しています。Dio110 Liteは110ccエンジンを搭載しながら最高出力を4.0kW以下に設定した新基準原付です。メーカー希望小売価格は239,800円です。[参照:Honda Dio110 Lite]

ホンダはスクーターだけでなく、スーパーカブ110 Lite、スーパーカブ110プロ Lite、クロスカブ110 Liteもラインアップし、「Honda Lite」シリーズとして新基準原付市場へ明確に対応しています。[参照:Honda Liteシリーズ]

ヤマハも2026年2月にJOG ONEを発売しました。JOG ONEはJOG125で実績のある124cc BLUE COREエンジンをベースにし、最高出力を4.0kW以下に設定した新基準原付です。メーカー希望小売価格は259,600円となっています。[参照:ヤマハ JOG ONE]

2026年8月現在、スズキには新基準原付モデルがない

2026年8月時点でスズキ公式サイトの「原付及び普通自動車免許で乗れるモデル」を確認すると、アドレスV50、レッツ、レッツバスケットが掲載されていますが、すべて「生産終了」とされています。新基準原付に該当する新型車は掲載されていません。[参照:スズキ 免許別ラインアップ]

一方、51~125ccクラスではアドレス125、アヴェニス125、バーグマンストリート125EXが販売されています。これらは原付二種であり、小型限定普通二輪免許などが必要です。[参照:スズキ 二輪車ラインアップ]

さらにスズキが公表している出荷台数を見ると、2026年度は7月までの原付第一種の出荷台数が0台で、原付第二種は3,740台となっています。少なくとも現時点では、国内の原付一種市場へ新基準原付を投入した状況ではありません。[参照:スズキ 原付出荷台数]

「アドレス125に速度リミッターを付ければ完成」ではない

ここが最も重要なポイントです。新基準原付の要件は「最高速度を30km/hに制限すること」ではなく、エンジンの最高出力そのものを4.0kW以下に制御することです。

現在のアドレス125は124ccエンジンを搭載し、最高出力は6.2kW(8.4PS)/6,500rpmです。新基準原付の上限4.0kWを大きく上回っています。[参照:スズキ アドレス125主要諸元]

単純計算すると4.0kWは現在の6.2kWの約65%です。つまり新基準原付版を作るなら、最高出力を約35%低下させる必要があります。

「30km/h以上出ないよう速度リミッターを付ければよい」のではなく、エンジンが発生できる最大出力を4.0kW以下にした車両として成立させなければなりません。

最高出力を落とすだけでも商品としての調整が必要

電子制御エンジンであれば、ECUなどによって出力特性を変更する方法は考えられます。しかし、メーカーが市販車を作る場合、「プログラムを書き換えて終わり」とはいきません。

最高出力を4.0kW以下にした状態で、発進加速、坂道性能、燃費、排出ガス、エンジン温度、耐久性、騒音、ドライバビリティなどを商品として成立させる必要があります。販売後の故障診断や整備に必要なサービス資料、専用部品、部品番号などの準備も必要になります。

例えば通常のアドレス125では最高出力6.2kWを前提にエンジンやCVTの特性が設定されています。単純に高回転側だけを制限すると、坂道や加速時のフィーリングが商品として望ましくない可能性もあるため、出力特性に合わせたセッティングが必要になる場合があります。

不正改造を防ぐ仕組みも必要

新基準原付では、4.0kW以下に制御した車両を簡単に本来の125cc出力へ戻せてしまうと制度そのものが成立しません。

このため国土交通省は、新基準原付について最高出力に関する不正改造を防止するための基準を追加しています。また、最高出力などを確認し、その確認済みであることを車両へ表示する制度も設けています。[参照:国土交通省 新基準原付の不正改造防止対策]

型式認定でも、新基準原付については総排気量だけでなく最高出力を表示する仕組みが導入されています。[参照:国土交通省 原動機付自転車の区分見直し]

したがってメーカー側には、「通常の125cc仕様から簡単に制限を解除できないこと」まで考慮した設計・認証対応が求められます。この点でも、市販の後付けスピードリミッターを一個取り付けるような話とは異なります。

ヤマハのJOG ONEも「リミッターを付けただけ」とは説明していない

ヤマハのJOG ONEは、JOG125で実績のある124ccエンジンをベースとしているため、「既存125ccを流用している」という点ではイメージに近いモデルです。

しかしヤマハの公式説明は、JOG125のエンジンをベースに最高出力を4.0kW以下に設定したとしています。単に最高速度30km/hのリミッターを追加したとは説明していません。[参照:ヤマハ JOG ONE 機能・装備]

ホンダのDio110 Liteについても110ccエンジンを搭載しながら、新基準原付として最高出力を4.0kW以下に設定しています。つまりホンダ・ヤマハとも、既存の大排気量側の技術を利用しつつ、新基準原付という別仕様の商品を開発して販売しているわけです。

ではスズキが作るとしたらアドレス125がベースになる?

スズキが将来新基準原付スクーターを投入する場合、既存の125ccスクーターをベースにする可能性を考えることはできます。ただし、どの車種をベースにするかについてスズキから公式発表はありません。

現行アドレス125は124cc・最高出力6.2kWで、メーカー希望小売価格280,500円です。アヴェニス125は124cc・最高出力6.1kWで284,900円、バーグマンストリート125EXも125ccクラスに位置します。

アドレスは日常の通勤・買い物用途との親和性が高いため、新基準原付のベース車として想像しやすいのは確かです。しかし、「アドレス125 Liteのような車種が出る」といった公式情報がない段階で発売を断定することはできません。

スズキがまだ発売していない本当の理由は公表されていない

「ホンダとヤマハが販売しているのに、なぜスズキだけないのか」という疑問に対して最も正確な答えは、スズキ自身が理由を明らかにしていないため、外部からは確定できないというものです。

可能性としては、市場規模を見極めている、開発・認証の優先順位が異なる、既存125cc商品の販売を優先している、海外生産車を日本向け新基準へ仕立てる採算性を検討しているなど、さまざまな事業判断が考えられます。

しかし、これらはあくまで一般論から考えられる可能性です。公式発表がない以上、「スズキは会社に体力がないから作れない」「開発に失敗した」「採算が悪いから撤退した」といった理由を事実として書くことはできません。

「スズキにはホンダやヤマハほど体力がないから」は根拠になる?

メーカーごとの企業規模や収益を比較して、新基準原付を投入しない理由を説明するのも慎重であるべきです。

新しい車種を発売するかは、企業全体が黒字か赤字かだけでは決まりません。二輪事業の販売地域、生産拠点、年間販売台数、開発費、認証費、販売価格、利益率、販売店網、同社の他モデルとの競合などを考えて商品計画が決められます。

極端にいえば会社全体が大幅な黒字でも、そのカテゴリーで十分な販売数量が見込めなければ商品化しないことはあります。逆に市場を維持する戦略的な意味があれば、単独モデルで大きな利益が出なくても投入することはあり得ます。

したがって「会社の体力」が原因だとするにはスズキの公式説明や具体的な事業資料が必要であり、現在確認できる商品ラインアップだけからは断定できません。

50cc市場はもともと大きく縮小してきた

新基準原付を考えるうえでは、日本の50cc市場そのものが長期的に縮小してきたことも重要です。

かつて原付一種は高校生や若者の移動手段、買い物、新聞・郵便などの業務用として非常に大きな市場でした。しかし公共交通の変化、電動アシスト自転車の普及、利用者の高齢化、原付二種への移行などによって市場環境は変わっています。

つまり新基準原付を販売するメーカーにとって、「既存125cc車があるから簡単に追加すれば売れる」というものではなく、縮小してきた原付一種需要の中で開発・認証・在庫・販売店教育などのコストを回収できるだけの台数があるかを判断する必要があります。

新基準原付と普通の125ccではユーザー層も異なる

同じ110~125ccエンジンをベースにしていても、新基準原付と通常の原付二種では商品価値がかなり違います。

項目 新基準原付 通常の125cc原付二種
排気量 50cc超125cc以下 50cc超125cc以下
最高出力 4.0kW以下 4.0kW超も可
必要免許 原付免許または普通免許等 小型限定普通二輪免許等
法定最高速度 30km/h 一般道では道路の速度規制に従う
二段階右折 必要となる場合あり 原付一種の二段階右折規定は適用されない
二人乗り 不可 車両・免許・経験等の条件を満たせば可

アドレス125を購入する現在の顧客は、小型二輪免許などを持ち、30km/h制限や二段階右折を受けずに使いたい人が中心です。一方、新基準原付は原付免許や普通免許しか持たない人の移動手段です。

同じような車体を2種類用意しても対象顧客が異なるため、メーカーとしては価格差や商品構成をどう設定するかも重要になります。

新基準原付は125ccだから速く走れるわけではない

「125ccなら50ccより速く走っても安全なのでは」と思われることがありますが、新基準原付の交通ルールは従来型原付一種と同じです。

警察庁は、新基準原付について最高速度30km/h以下、二段階右折、二人乗り禁止、最大積載重量30kgなど従来の原付一種と同じ交通ルールが適用されると案内しています。[参照:警察庁]

排気量を大きくした主な意味は、最高速度を上げることではなく、排出ガス規制へ対応しながら日常利用に必要な発進・坂道性能などを確保しやすくすることにあります。

「125ccの車体なら原付免許で乗れる」と中古車を買うのは危険

制度変更後に特に注意したいのが、中古の125ccスクーターとの混同です。

例えば通常のアドレス125は最高出力6.2kWなので、新基準原付には該当しません。原付免許や普通自動車免許だけで運転することはできません。

中古車販売サイトなどで「125cc」とだけ確認して、「法改正されたから原付免許で乗れる」と判断してはいけません。新基準原付として認められるには、最高出力4.0kW以下などの基準を満たした該当車両である必要があります。

排気量ではなく、その車両が新基準原付として正式に設定・確認されたモデルかどうかを必ず確認することが重要です。

スズキは原付から完全撤退したのか

2026年8月時点の事実だけを見ると、スズキの従来型50ccスクーターであるレッツ、レッツバスケット、アドレスV50はすべて生産終了です。また、スズキの公式ラインアップに新基準原付は掲載されていません。

その意味では、現時点の新車ラインアップに原付免許・普通免許だけで乗れる現行スズキ製エンジンスクーターが存在しない状態と見ることができます。生産終了車については販売店に流通在庫が残っている可能性があります。[参照:スズキ]

しかし、これをそのまま「スズキが永久に原付一種市場から撤退すると決定した」と言い換えることはできません。将来の新基準原付投入についてスズキが公式に否定していることを示す発表が確認できないためです。

今後、新基準原付を追加する可能性もあれば、原付二種以上へ商品を集中する可能性もあります。これは今後のスズキの正式発表を待つ必要があります。

今後スズキの新基準原付を待つなら何をチェックする?

スズキから新基準原付が発売されるか確認したい場合は、噂や販売店の未確認情報より、スズキ公式サイトのニュースリリースと二輪車ラインアップを見るのが確実です。

新基準原付として発売される場合、単に車名と排気量が発表されるだけではなく、主要諸元に最高出力4.0kW以下であることや、原付一種に該当する旨が明示されると考えられます。

現在のアドレス125がそのまま原付免許対応になるわけではないため、「アドレス125を買って後からリミッターを付ければ原付免許で乗れる」と考えるのも避けるべきです。

まとめ:スズキが出さない理由は未公表。「アドレス125にリミッターだけ」は制度上も正確ではない

2026年8月時点では、ホンダがDio110 LiteなどのHonda Liteシリーズ、ヤマハがJOG ONEを販売している一方、スズキには新基準原付に該当する現行スクーターがありません。従来型50ccのレッツ、レッツバスケット、アドレスV50はいずれも生産終了しています。

ただし、スズキが新基準原付を発売していない理由について、スズキ自身から「会社の体力」「開発費」「採算性」などを理由とする公式説明は確認できません。したがって、外部から特定の理由を断定することはできません。

また、「アドレス125へリミッターを付けるだけで作れる」という考え方にも注意が必要です。新基準原付の条件は最高速度を30km/hへ制限することではなく、エンジンの最高出力を4.0kW以下に制御することです。現行アドレス125の最高出力は6.2kWなので、そのままでは新基準原付になりません。

さらに新基準原付では、最高出力の確認や表示、不正な出力変更を防ぐための対策も制度化されています。メーカーが商品化するには、出力制御だけでなく、走行性能や排出ガス、耐久性などの評価、認証、量産、補修部品やサービス体制まで含めた商品開発が必要です。

一方で、ヤマハのJOG ONEがJOG125系の124ccエンジンをベースに最高出力4.0kW以下としているように、既存の110~125cc技術を利用して新基準原付を作る考え方自体は現実的です。そのためスズキにも技術的なベースとなり得る125ccスクーターが存在することと、実際に日本市場へ商品化することは分けて考える必要があります。

現状を最も正確に表現するなら、「スズキの従来型50ccスクーターは生産終了し、2026年8月時点では新基準原付の後継モデルも公式ラインアップにない。ただし、スズキが将来も原付一種から完全撤退すると公式に表明したとまでは確認できない」ということになります。今後アドレス系などをベースとした新基準原付が登場するかどうかは、スズキからの正式発表を確認する必要があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました