車検場の近くでよく見かける「光軸調整専門」のテスター屋。表面上は設備も限られ、在庫も持たず、効率良く収益が上がるように見えるこのビジネス。しかし実際には、想像よりもはるかに複雑な要素が絡み、簡単に参入できる市場ではありません。
光軸調整専門店とはどんなビジネスか?
光軸調整とは、車検で義務付けられているヘッドライトの照射方向を適正に調整する作業です。車検に通すためには正しい光軸であることが不可欠なため、車検前にこの調整を依頼する車が多く、テスター屋には一定の需要があります。
一般整備工場と異なり、特定の作業に特化しているため、作業効率は高く、回転率もよいため収益性が高く見える傾向にあります。
なぜ儲かる仕事に見えるのか?
まず、設備投資が比較的少ない点が挙げられます。光軸テスターと基本的な整備工具、そして簡単な待合室があれば開業できるため、初期費用が抑えられます。
さらに、作業自体が短時間で済むため、1台あたりの作業時間が短く、1日あたりの処理台数を多く見込めます。例えば、1台15分で済む作業を1台2,000円で受けていれば、1時間で8,000円、1日8時間稼働すれば64,000円の売上も現実的です。
実はハードルが高い参入障壁
しかし、見かけ以上に参入には多くのハードルがあります。まず、設置場所の選定です。車検場の近くに出店するのが理想ですが、すでに既存業者が根付いており、新規参入は難しいエリアがほとんどです。
さらに、法令や認証制度への理解も必要です。光軸調整機器は精度が求められ、国土交通省の認可が必要なケースもあります。定期的な校正や報告義務が発生する点も見落とせません。
地域性や競合との関係も重要
都市部では既存店との競争が激しく、価格競争に巻き込まれるリスクがあります。一方、地方ではそもそも需要が少なく、単独での経営は難しいケースも。
例えば、首都圏のある車検場近隣では、光軸テスター屋が半径200m以内に3軒ある地域もあり、価格は1回1,000円以下という厳しい競争になっています。これでは利益を確保するのは困難です。
設備以外に求められるスキルと信頼性
光軸調整といっても、車種ごとに異なる構造やライトの特性を理解していなければ、正確な作業はできません。ミスをすればユーザーの車検不合格に直結し、クレームや信頼失墜にもつながります。
また、顧客対応も重要です。短時間で的確な説明と作業が求められ、現場での経験値やサービスの質がリピートに大きく関わってきます。
まとめ
光軸調整専門のテスター屋は、一見すると楽で高収益に思えますが、実際には参入の難しさや競合環境、技術と信頼の構築といった数々の課題があります。成功している店舗は、それらをクリアし、地域に根差した信頼を築いているのが実情です。
安易に「美味しい仕事」と捉えるのではなく、十分な準備と現場理解が必要な専門職といえるでしょう。
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