4WD車に乗っていると、タイヤ交換の際に「4本すべて交換すべき」と言われることが多く、コスト面で悩む方も多いでしょう。とくにパンクなどで急なタイヤ交換が必要になったとき、「前2本だけ交換で済ませたい」というのが本音かもしれません。この記事では、その判断が車にどんな影響を及ぼすか、そして実際にどう対処すべきかを、デリカD:5後期型を例に詳しく解説します。
4WDで前2本だけ交換がNGとされる理由
4WD車では、前後輪のタイヤ径(外周)が大きく異なると、常時異なる回転数で走行することになります。これはセンターデファレンシャルやカップリング機構などに負担をかけ、過熱や焼き付き、故障のリスクを高める原因となります。
たとえば、片方のタイヤが摩耗して直径が小さくなっている場合、走行中に回転差が発生し、それを吸収しようとデフが常に仕事をしてしまう状況になります。これが「火災のリスク」や「高額修理費の原因」になるのです。
デリカD:5後期型の4WDシステムの特徴
デリカD:5は、三菱の「電子制御4WD(AWC)」を搭載しており、前後輪のトルク配分を状況に応じて制御する賢いシステムです。が、それでも機械的な部分では回転差を物理的に吸収する必要があるため、異なる外径のタイヤが混在すると誤作動や負担が発生します。
このモデルでも「4WDロック」モードでの使用時などは、デフへの負担が増すため、誤差にシビアな設計であるといえるでしょう。
エラー警告や異常は表示される?
一部の4WD車では、異常な回転差が検知されると、メーター内に「4WD異常」「AWC異常」といった警告灯が点灯することがあります。しかし、それはすでに機構にダメージが及んでいる可能性もあるため、警告表示の有無に関わらず慎重に対応することが求められます。
また、誤作動によってスリップ制御がうまく機能しない、トラクションが不安定になるといった症状も現れる場合があります。
どうしても前2本だけ交換したい場合の対処法
「前2本だけ交換したいけど、リスクは避けたい」という場合は、以下の対策が考えられます。
- 残り2本のタイヤの摩耗状況を測定(残溝4mm以上、外径差3%未満ならOKな場合も)
- 新品に合わせて古い2本を少し削る(シェービング加工)
- 前後輪を均等に入れ替える(装着位置のバランスをとる)
- メーカー推奨を確認する(三菱ディーラーに相談)
とくにシェービングはタイヤ専門店でしかできないため、コストや安全性とのバランスをよく考えましょう。
4本同時交換が「高くない」理由
タイヤ4本交換は確かに高額な出費です。しかし、デフやトランスファーの修理・交換となると、10〜30万円単位の修理費用がかかることもあります。その差を考えれば、タイヤ代はむしろ安上がりな保険とも言えるでしょう。
さらに、4本均等のグリップにより、走行安定性や制動性能も向上し、安全性にも直結します。
まとめ:快適な4WDライフのために知っておくべきこと
4WD車における「前2本だけタイヤ交換」は、一見コスパが良さそうに見えても、駆動系へのリスクを無視できません。とくにデリカD:5のような重量級で電子制御を多用する車両では、より注意が必要です。
「ちょっとの差」が大きな故障につながる可能性があるからこそ、慎重に判断し、安全と安心を優先する選択が求められます。
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