「運転免許試験に何度も落ちる人に免許を与えるべきか?」というテーマは、交通安全や社会的責任の観点からたびたび議論されます。特にスリーストライク制(一定回数不合格で制限を設ける制度)を導入すべきでは?という声には共感も多い一方で、現実的な課題や反対意見も少なくありません。本記事では、免許試験の再試験制度の現状とスリーストライク制導入の是非について多角的に考察します。
現在の免許試験制度と合格率の実態
日本の普通自動車免許試験は、学科試験と技能試験の二本立てで実施されます。指定自動車教習所を卒業した場合は試験場での技能試験が免除され、卒業時の教習評価で一定基準を満たせば合格扱いとなります。
一方、一発試験(教習所を経由せずに試験場で直接受ける方式)の場合、技能試験の合格率はおおむね10〜30%程度とかなり低く、10回以上落ちる受験者も珍しくありません。これは決して珍しい例ではなく、試験の難易度や審査基準の厳格さが大きな要因です。
スリーストライク制の導入は合理的か?
スリーストライク制とは、例えば3回不合格になったら再受験に制限をかけたり、再教育を義務化する制度を指します。受験回数に上限を設けることで、不適格な運転者が公道に出るのを防ぐという狙いがあります。
しかし、現行の制度では「回数ではなく、最終的な適性や技能水準」で判断するため、一概に試験回数だけで能力を測るのは非合理的との指摘もあります。また、回数制限を設けると、緊張や環境要因によって数回落ちた優良ドライバー候補が免許を取得できなくなる懸念もあります。
試験回数と運転能力の関係とは
10回以上試験に落ちた人が危険運転をするかというと、必ずしもそうとは限りません。むしろ、真面目に練習を積み、慎重な運転を心がけるようになる人も多いのが実情です。免許取得後の実際の運転行動には、試験の合否以上に「運転習慣」「性格」「リスク意識」などが影響を与えます。
一方、数回の受験であっさり合格した人が無謀運転を繰り返すケースもあり、試験回数のみで安全性を判断するのは早計といえるでしょう。
制度的な改善案:再試験者への追加講習など
スリーストライク制の代替案として、有効と考えられるのが「再試験回数に応じたステップアップ式の教育強化」です。例えば、3回以上不合格となった場合には再度座学講習や実技講習を受講しなければならないという制度です。
これにより、単なる受験回数ではなく、理解度・習熟度に応じた再教育がなされることで、安全運転に必要な基礎力の底上げが期待できます。また、心理的にも「適性が足りていない部分」に気づく契機となり得ます。
海外ではどうなっているのか?他国の制度事例
アメリカやイギリスなどでは州や地域により再試験回数や受験間隔に制限が設けられていることがあります。一部では、一定回数以上の不合格で医師の診断や心理テストの提出を求められる場合もあります。
一方で、日本のように「回数制限は設けず、最終的な能力判断を重視する」国も多く、個々の事情や発達段階に配慮した柔軟な制度設計が主流です。
まとめ:試験回数よりも安全意識と教育が重要
免許試験に複数回落ちたからといって、必ずしも危険な運転者になるわけではありません。むしろ、繰り返しの挑戦によって慎重な運転習慣を身につける人も多く存在します。
スリーストライク制の導入よりも、受験者の理解度を高める教育強化や、試験後の実地指導を充実させることが、交通安全につながる本質的な対策といえるでしょう。
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