クルマ好きの中には、純正の枠にとどまらず、自由な発想で自分だけの一台を作りたいという思いを持つ方も多いのではないでしょうか。中でも、2000年代初頭のメルセデス車を使ってSLRマクラーレン風のルックを再現するというアイデアには、確かに胸が躍ります。
CLKとSLKのフェイスは似て非なるもの
まず、W208型CLK(1997〜2003年)とR170型SLK(1996〜2004年)は、同時期のメルセデスでありながらも車格やシャシー設計が異なります。CLKはEクラスベースのクーペ、SLKはCクラスベースのロードスターです。
フェイス(フロントバンパー、ヘッドライト、グリルなど)をスワップする場合、ボディ幅や取り付けポイントの違いがあるため、ボルトオンでの移植はほぼ不可能と考えてよいでしょう。大幅な加工が必要です。
SLRマクラーレンのデザイン要素とは
SLR(2003〜2009年)の最大の特徴は、ロングノーズ・ショートデッキのシルエット、深く彫られたボンネットダクト、特徴的なヘッドライト形状、サイドエグゾーストなどです。これらを再現するためには、単なるフェイススワップでは足りません。
例えば、ヘッドライトの形状はR230型SLなどと比較しても独自性が高く、どの既存モデルとも一致しません。そのため、本格的なSLRルックを目指すなら、ワンオフ加工やFRP製カスタムパーツの導入が不可欠になります。
実例紹介:自作SLRルックのカスタム車
国内外のカスタム事例では、SLKやCLKをベースにSLR風バンパーやボンネットを装着した「なんちゃってSLR」が存在します。海外フォーラムでは、FRP製のSLR風バンパーを装着したSLK320などが紹介されています。
ただし、実車を見ると完成度はピンキリ。プロショップでのワンオフ依頼であれば完成度は高まりますが、費用は50万〜100万円以上になるケースもあります。
技術的・法的な注意点
フェイススワップに伴う加工では、車両の強度や安全性、そして灯火類の配置に関して保安基準を満たす必要があります。特に、ヘッドライトやウインカーの位置変更は、車検対応を想定した設計が求められます。
また、重大な構造変更を行う場合には「改造申請」や「構造変更検査」が必要となるため、国土交通省の定めるルールも確認しておくべきです。
DIYでのカスタムは可能か?
工具と技術があればDIYでの挑戦も不可能ではありませんが、溶接やFRP成型といった高度な作業が発生します。外装加工の経験が浅い場合は、プロショップに依頼するほうが結果的に安定します。
DIYで実施するなら、まずはバンパーやグリルだけの交換から始め、徐々に完成度を高めていく方法もあります。
まとめ:SLRルックは夢があるが現実はシビア
CLKとSLKのフェイスを組み合わせてSLR風のスタイルを目指すというアイデアは、確かにユニークで魅力的です。しかし、実現には多くの加工と費用、そして知識が必要です。
「似せる」ことを目指すライトカスタムから、「そっくりに仕上げる」本格ワンオフまで、レベルと予算に応じたプランニングが重要です。自分だけのSLRルックを作るという夢、ぜひ現実に近づけてください。
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