長期間保管していたバイクが久しぶりに整備された後、エンジンがかからないというトラブルは珍しくありません。特にゼファー550のようなキャブレター車では、燃料・点火・圧縮のいずれかに問題があると始動不能となります。この記事では、セルは回るがエンジンがかからないという症状について、可能性のある原因とその対策を詳しく解説します。
症状と作業履歴の整理
今回のケースでは以下の点が報告されています。
- キャブレターOH済、ガスケット・ジェット類も対処済み
- インシュレーター・エアクリーナーは交換済
- ガソリンはキャブに来ており、ドレインから排出可能
- プラグは新品、火花は出ている
- エンジンは初爆なし、セルは回る
この情報から判断すると、典型的な「燃料・点火・圧縮」のいずれかの不良に該当する可能性があります。
キャブレターのガソリン供給に問題は?
キャブにガソリンが来ているとのことですが、「シリンダーまでガソリンが届いているか」は別問題です。セルを回した後、プラグが濡れていなければ混合気が燃焼室まで届いていない可能性があります。
対処法としては。
- 始動時にチョークを引き、軽くスロットルを開けてセルを回す
- プラグホールからガソリンスプレー(ブレーキクリーナー等)を吹いて初爆確認
- キャブのパイロットジェットやチョーク回路の詰まり再確認
特に一年間放置したことで、キャブの通路が再度固着しているケースもあります。
点火系の確認ポイント
「プラグに火が飛んでいる」だけでは不十分です。重要なのは、正しいタイミングで十分な強さの火花が飛んでいるかです。CDI、イグニッションコイル、プラグキャップの劣化や接触不良があると、高回転では正常でも始動時に火が弱いケースもあります。
確認方法。
- プラグを外し、車体アースに当てて火花の色と飛び方を確認
- プラグをイリジウムから標準タイプに変更してみる
- 抵抗入りプラグキャップや劣化したコードを新品と交換
また、イグナイターやピックアップコイルの劣化もゼファーでは稀にあります。
エンジンの圧縮確認と保管後の影響
圧縮がなければいくら点火と燃料が良くてもエンジンはかかりません。保管中にバルブが錆びたり、ピストンリングが固着していると圧縮が逃げてしまいます。
圧縮ゲージがない場合は以下で簡易確認が可能です。
- プラグホールに指を当ててセルを回し、空気が強く押し出されるか
- キック付き車であれば、キックの反発具合で体感確認
- エンジンオイル注入で一時的に圧縮回復するか確認(オイルブースト)
圧縮が全く無い場合は、エンジンのオーバーホールやバルブすり合わせが必要になることもあります。
長期保管車両特有のその他の原因
長期保管車両には、想定外のトラブルも潜んでいます。
- 燃料の劣化:タンクやキャブ内部に劣化ガソリンや錆が残っている可能性
- 接点腐食:アース不良やメインハーネスの導通不良による電圧ドロップ
- ヒューズやキルスイッチ:些細な見落としで始動できない場合もある
これらは電装確認や燃料系統の再点検で一つずつ潰していく必要があります。
まとめ
ゼファー550が「セルは回るが初爆なし」という場合、原因は燃料供給の不完全、点火のタイミングまたは火力の不足、圧縮の欠如などに絞られます。今回のケースでは、キャブの再点検と簡易圧縮チェックを最優先で行うことをおすすめします。また、保管中の影響や電装系の接触不良も視野に入れ、マルチメーターを活用して一つずつ丁寧に確認していくことがトラブル解決への近道です。
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