近年、中東地域、特にサウジアラビアやアラブ首長国連邦では、「カムリ・ドリフト」と呼ばれる特異な自動車文化が注目を集めています。意外にもトヨタのセダン「カムリ」を用いた派手な走行がSNSや動画プラットフォームで話題になっており、そのドライビングスタイルには独特のテクニックとカルチャーが反映されています。
中東で人気の「カムリ・ドリフト」とは?
このスタイルは、「ハジワ(Hajwalah)」と呼ばれるアラビア半島発祥のストリート走行文化に起源があります。特徴としては、後輪駆動ではないFF車(前輪駆動)であるカムリで無理やりスライド走行を行い、ドリフト風に見せる技術が用いられます。
そのため、伝統的な「ドリフト」とは異なり、むしろアクセルで無理やりリアを滑らせる「パワースライド(パワスラ)」に近い走法が多く見られます。
なぜカムリが選ばれるのか?
中東ではカムリの流通量が非常に多く、また耐久性・整備性にも優れているため、若者を中心に手に入れやすい車種として人気です。さらに、車両の重量バランスが良く、比較的高出力なグレードも多いため、「意外と滑る」特性もカムリ人気の要因の一つとなっています。
また、カムリでこのような走行をすることで「どんな車でも魅せる運転ができる」というドライバーの腕前をアピールする文化的背景もあります。
ドリフトとパワースライドの違い
一般的に「ドリフト」は後輪駆動(FR)車を使い、アクセルとカウンターステアを駆使してコーナーを横滑りしながら曲がる技術です。一方「パワースライド」は急加速やハンドル操作により無理やりリアタイヤを滑らせる現象で、主に前輪駆動の車や雪道などで見られます。
つまり、「カムリ・ドリフト」の多くは厳密にはパワースライドであり、プロフェッショナルなモータースポーツにおけるドリフトとは異なるスタイルといえるでしょう。
交通安全と法律の観点から見るリスク
このような走行は公道で行われることが多く、大変危険です。中東でもこの行為は当然ながら違法であり、当局は摘発を強化しています。事故率が高く、歩行者や他のドライバーを巻き込む危険性があるため、絶対に真似してはいけません。
YouTubeなどでバズっている動画の多くも、法を無視して撮影されたものであることを認識し、安全運転を心がける意識が求められます。
「カムリ・ドリフト」は文化か危険行為か
このような運転が人気になる背景には、自己表現の手段としてのクルマ文化や、若年層の娯楽不足など、社会的な事情も関係しています。一方で、それを楽しむ方法が「危険走行」である場合、問題視されるのも当然です。
クルマを使ったカルチャーは世界中で多様に発展していますが、安全性とモラルを守りながら発展することが何より重要です。
まとめ:カムリ・ドリフトを正しく理解しよう
「カムリ・ドリフト」は中東独自の自動車カルチャーとして注目を集めていますが、それは本来の意味でのドリフトとは異なり、どちらかといえば「パワースライド」に近い走行スタイルです。若者文化の一環として一定の理解を示す一方で、違法行為であること、安全に対する配慮の欠如が大きな問題でもあります。
車に対する情熱は大切ですが、それを表現する手段は法の範囲内で、安全第一で行われるべきです。
コメント