スバルといえば独自のシンメトリカルAWDシステムと水平対向エンジンを採用した4WD車が有名ですが、その一方でFR(後輪駆動)のBRZを開発した背景には、明確な目的とトヨタとの共同開発という事情があります。この記事では、なぜスバルが4WDベースではなくFR専用でBRZを開発したのかを技術的・戦略的観点から解説します。
BRZは4WD車ベースではなくFR専用設計
BRZはスバルとトヨタの共同開発車であり、トヨタ側の「純粋なFRスポーツカーを作りたい」という明確な開発意図がありました。これにスバルが合意し、既存の4WDベースではなく、専用FRプラットフォームを新規開発したのです。
BRZに搭載されているエンジンはスバル製の水平対向エンジン(FA20、現在はFA24)ですが、駆動方式やプラットフォームはインプレッサなどのAWDとは異なり、軽量化と低重心化を徹底した設計になっています。
4WDをFRに改造することの限界
たしかにスバルの一部4WD車は構造的にFR化が可能なケースもありますが、実際にはAWD用のトランスミッションやプロペラシャフト、デフ構造などを大幅に変更する必要があります。これはコストも工数も多く、「簡単にFR化できる」というのはあくまで理論上にすぎません。
また、4WDベースをFR化した場合、無駄な構造が残るため軽量化に不利となり、運動性能を追求するスポーツカーには向きません。
専用設計による運動性能の違い
BRZは重量配分や低重心、剛性バランスを最適化するため、FR専用の新設計シャシーを採用しています。車両の重心が低く、回頭性に優れたハンドリングは、AWDベース車では実現しにくい特徴です。
例えばインプレッサWRX STIは優れたトラクション性能を誇りますが、FRのような後輪駆動特有の「操る楽しさ」には違いがあります。この違いがスポーツカー愛好者にとって重要な要素となるのです。
コスト面ではなく「走りの思想」が優先された
一般的には既存のプラットフォームを流用した方がコストは安く済みますが、BRZではあえて専用設計とすることで、徹底的に走りの楽しさを追求しました。これは「走りのためにコストを惜しまない」というスバルとトヨタの共同理念によるものです。
コスト重視ならば4WDベースのFR化も選択肢に入ったはずですが、それでは「ピュアスポーツカー」の思想に反するという結論に至ったのです。
インプレッサ系とは異なる開発思想
インプレッサやWRXシリーズは実用性と高性能を両立したAWDスポーツセダンという位置づけであり、BRZとは設計思想が根本から異なります。したがって、共通点はエンジン形式くらいで、プラットフォームや走行コンセプトは完全に別物です。
「なぜインプレッサのAWDをFR化しなかったのか?」という疑問に対しては、「そもそも別ジャンルの車種であり、目的が違うため」と答えるのが適切でしょう。
まとめ:FRスポーツのためにすべてを一から設計
BRZは「純粋なFRスポーツカーを作る」という明確なビジョンのもと、スバルが誇るエンジン技術を活かしつつも、あえてAWDプラットフォームを流用せず、FR専用でゼロから設計されました。
その結果、軽快で操る楽しさに満ちたスポーツカーとして高い評価を得ています。スバルがなぜ4WDをベースにしなかったのかという問いの答えは、「走りの本質を求めた結果」だと言えるでしょう。
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