エンジンオイルの粘度は、エンジン性能や耐久性に大きな影響を与える重要な要素です。最近では「低粘度の方がパワーが出る」「油温が上がりにくい」といった話をよく耳にしますが、本当にそうなのでしょうか?この記事では、エンジンオイルの粘度とパワー、油温の関係を科学的かつ実践的に掘り下げて解説します。
粘度とは何か?エンジンオイルの「数字」の意味
エンジンオイルの粘度は「0W-20」や「10W-40」といった形式で表記されます。前半の「0W」や「10W」は低温時の流動性、後半の「20」や「40」は高温時(100℃程度)の粘度を示します。
つまり「30」「40」「50」などの数字が高くなるほど、高温時でもオイルが粘る=油膜が厚くなるということです。一方、数値が低いと流動性が高く、摩擦抵抗が減るためエンジン効率は上がる傾向があります。
低粘度オイルがパワーに与える影響とは?
低粘度オイルはエンジン内部での摩擦を減らすため、トルクやレスポンスの向上が期待できます。特にサーキットや高回転域での使用では、回転の軽さが体感できることがあります。
ただし、その差はあくまでも「微差」であり、パワー計測機で測定しても1~2馬力程度の差にとどまることがほとんどです。街乗りで体感できるレベルかというと、個人差が大きいのが実情です。
油温への影響:粘度が低ければ冷えるのか?
粘度が低いからといって、必ずしも油温が上がりにくいわけではありません。むしろ、油膜が薄くなることで摩擦が増え、結果として油温が上がりやすくなるケースもあります。
特に高負荷走行や長時間のスポーツ走行では、油温が110~140℃に達することは珍しくありません。この温度域で粘度の差がどれだけ意味を持つかというと、オイルの「耐熱安定性」や「ベースオイルの質」のほうが重要になります。
粘度差は誤差範囲か?30と50ではどう違う
一見「30と50で大差ない」と思われがちですが、高速走行や高温状態が続く状況では粘度の差が明確に表れます。たとえば、30番オイルでは油圧が不足しやすく、金属接触のリスクが増す一方、50番では油膜が厚くなりすぎて内部抵抗が増えます。
つまり、どちらを選ぶかは走行条件とエンジン特性に大きく左右され、「誤差範囲」とは一概に言えないのです。街乗り重視なら30や40、サーキット重視なら50という選び方が基本です。
具体的な事例:サーキット走行での体験
筆者が実際にサーキット走行した際、10W-30のオイルで連続走行を行うと、5周目以降から油温が130℃を超え、フィーリングにも変化が出てきました。これを10W-50に変更したところ、油温の上昇は緩やかになり、安定した走行が可能になりました。
ただし、街乗りではその差を感じることはほとんどなく、エンジンの軽快さや始動性を重視するなら低粘度の方が扱いやすいと感じました。
まとめ:粘度選びは使用条件に応じた「最適解」を
エンジンオイルの粘度によるパワー差や油温変化は、確かに存在しますが、状況によってはその差は極めて小さなものです。大切なのは、車の用途や走行環境に応じた適切な粘度を選ぶことです。
低粘度が万能というわけではなく、高粘度もまた一長一短。エンジンの保護とパフォーマンスのバランスを考え、自分の走り方に合ったオイルを選ぶことが、愛車を長く快適に走らせる秘訣です。
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