歩行中に他人の車に触れたと主張され、「証拠がある」「修理代を払え」と言われた場合、戸惑う方も多いはずです。今回は、ドライブレコーダーに映る映像の限界や、仮に請求された場合の対応方法について、法的観点や実例も交えながら詳しく解説します。
ドライブレコーダーの録画範囲と種類
ドライブレコーダー(通称ドラレコ)は、前方・後方を撮影するものが主流ですが、最近では360度録画タイプや左右のドアに取り付けられるサイドカメラも登場しています。とはいえ、車の横方向を高精度に録画できるものは限られており、録画範囲は車種や設置位置、カメラの性能に左右されます。
たとえば前後カメラのみのドラレコでは、車のサイド(特に後部ドア周辺)の細かい動きや傘先端の接触などは捉えづらいケースが多いです。360度カメラの場合でも、映像の歪みや解像度により、物理的な接触の有無を正確に判断できないことがあります。
「証拠映像」の扱われ方と送られてくるタイミング
一般に、相手が「証拠映像がある」と主張しても、その映像があなたに開示される義務は法律上はありません。しかし、民事請求(修理代の請求)を行うには、映像を含む証拠を根拠として提出する必要があります。請求書に添付されていたり、示談交渉の材料として「映像の一部」が送られてくるケースはあります。
ただし、多くの場合は「映像はある」と主張するのみで、実際に開示されないまま終わることも珍しくありません。現時点で映像が提示されていなければ、無理に対応する必要はありません。
器物損壊罪や民事請求になる可能性と現実的な対応
器物損壊罪が成立するには、「故意に壊す意図」が必要です。通行時に日傘が偶然触れた程度では、原則として刑事事件としては扱われにくく、今回のように警察も「事件性なし」と判断するケースが多いです。
一方、民事的に修理代を請求される場合もありますが、「請求には証拠」「損害額の立証」が必要で、傘の接触が原因と断定できるほどの証拠がない限り、強制力はありません。仮に裁判を起こされても、相手の立証責任が問われることになります。
相手から何か送られてきたらどうする?
もしも「修理費用の請求書」「映像付きの証拠資料」などが送付されてきた場合、決して独断で支払わず、まずは弁護士や法テラスなどの無料法律相談窓口に相談しましょう。冷静に対応すれば、根拠の乏しい請求を拒否できる可能性は高いです。
また、警察にも記録が残っているため、相手の行動があまりにも理不尽であれば「悪質クレーマー」として対応してもらえることもあります。
実例:ドライブレコーダー映像と傘の接触の証明
過去の事例では、360度カメラで接触の瞬間が映っていたにも関わらず、「どの程度の傷か」「実際にその傘が原因か」は断定できなかったため、裁判では請求が棄却された例もあります。
映像に人の顔や傘の先端が「映っていること」と、「接触した」「傷をつけた」ことは別問題です。つまり、相手がどんなに自信を持っていても、それが法的に有効な証拠かはまた別なのです。
まとめ:慌てず冷静に対処を
ドライブレコーダーの映像は、確かに状況を記録する手段ですが、傘の接触の有無や責任の所在を法的に決定づけるほどの証拠になるとは限りません。相手の請求や言動に過度に反応せず、「何か送られてきたら対応を考える」で十分です。
最も大切なのは、相手と直接やり取りせず、第三者(弁護士や警察)を介して対応すること。正当な対応をとれば、トラブルに巻き込まれるリスクを最小限に抑えることができます。
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