世界規模で電気自動車(EV)が期待されながらも、思うように普及が進まない——その背景には複数の構造的・心理的要因があります。本記事では、なぜ世界でEV人気が伸び悩んでいるのかを、最新の調査結果や実例を交えて解説します。
充電インフラの不足が最大の障壁
多くの調査で、公共充電ステーションの不足がEV購入をためらわせる最大の要因となっていることが明らかです。特に都市部やアパート住まいの人には、自宅での充電手段がない例が多く、心理的な不安を招いています。
充電設備の整備が進んでいる中国を除き、ほとんどの国で充電インフラ整備が遅れており、購入意欲を大きく削いでいる状況です[参照]
航続距離への不安(レンジアニキシア)
EVの航続距離が心配、という心理的な不安(いわゆるレンジアニキシア)も、普及の障壁として大きく作用しています。
たとえば、平均的なEVの走行距離が実際には通勤や買い物程度で事足りるケースでも、「途中で電池切れになるのでは」という不安が敬遠される原因となっています。
高い初期費用と価格への抵抗感
購入時の初期費用がガソリン車より高いため、消費者がEVを選びづらくなっています。多くの地域で補助金や税制優遇があるものの、それでもなお費用の高さが主な抵抗要因です。
英国の調査では、非EV検討者の54%が「高価格」を理由に挙げ、充電関連の不安が44%に上るという結果も報告されています[参照]
モデルの選択肢が限られている
地域によってはEVの選べる車種が極端に少なく、市場の魅力が伝わりにくいケースがあります。
北米では従来型ガソリン車モデルが400種以上あるのに対し、EVは数十モデルのみという市場構造も課題です[参照]
政策や補助金の不安定さと地域格差
政府の補助金や税制優遇策がEV普及の後押しになる一方、その制度が急変すると市場に大きな逆風となります。
ドイツでは補助金打ち切り直後にEV販売が大幅に落ち込んだ事例もあり、政策の安定性がキーファクターです[参照]
地域ごとの差が普及率に大きく影響
中国では政府補助とインフラ整備の強力な支援により、EVシェアが急速に拡大し、新車販売の半分近くが電動車となっています。
一方、米国や欧州では依然として普及率が10〜25%程度に留まり、政策・価格・インフラの三拍子が揃わない地域では普及が遅れています[参照]
まとめ
電気自動車が世界規模で広がりにくい主な原因は、充電インフラ不足・レンジ不安・高コスト・車種選択肢の狭さ・不安定な政策支援という複合的な要因です。
これらを乗り越えるには、政府や自治体によるインフラ整備、補助制度の継続的な運用、メーカーによる低価格モデルの提供、そして消費者への情報発信が不可欠です。
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