自動車業界では近年、各社が競争力を高めるためにOEM(相手先ブランドによる製造)提携を活用しています。日産自動車もその例外ではなく、いすゞやスズキといった他メーカーとのOEM関係を維持しています。本記事では、日産がこれらのOEM関係をなぜ解消しないのか、その理由と背景について掘り下げていきます。
OEM提携の概要と自動車業界における意義
OEMとは、ある企業が他社に製造を委託し、自社ブランドとして販売する形態を指します。コスト削減、ラインアップの拡充、研究開発の負担軽減といった多くのメリットがあり、軽自動車や商用車などの分野で特によく用いられています。
日産も、軽自動車をスズキや三菱自動車などからOEM供給を受け、自社ブランド「デイズ」「ルークス」などとして販売することで、コストを抑えつつ市場ニーズに対応しています。
スズキとの関係:軽自動車市場の維持と合理化
スズキは軽自動車分野における圧倒的な開発力と販売網を持ちます。日産はスズキから「アルト」ベースの車両などをOEM供給しており、自社で軽自動車を一から開発するよりも、スズキに委託した方がコスト・時間の両面で有利です。
軽自動車は利益率が低いため、スケールメリットを持つスズキとの提携は日産にとって合理的な選択となっています。
いすゞとの関係:商用車部門での補完関係
いすゞは商用車に特化した強みを持つメーカーです。日産はかつて商用車分野にも積極的に展開していましたが、現在は自社開発・生産を縮小し、いすゞからOEM供給を受けることでラインアップを維持しています。
たとえば、日産の「アトラス」は、いすゞ「エルフ」のOEM版です。これはトラックや配送車両など商用車市場での存在感を保つために不可欠な提携です。
OEM提携を解消しない理由:3つの戦略的要因
- ①コスト競争力の維持:軽自動車や商用車は価格競争が激しく、OEM供給により開発コストと製造コストを抑えることができます。
- ②製品ラインアップの拡充:自社では展開できない領域の商品を、他社から供給を受けることで補う戦略です。
- ③ブランド力の維持と顧客接点の確保:OEM車でも「日産」ブランドで販売することで、ディーラー網の活用や顧客との接点を維持できます。
OEM関係の今後:柔軟な協業体制の価値
自動車業界はEV(電気自動車)・自動運転・MaaSといった変革期にあり、全てを単独でまかなうのは現実的ではありません。日産にとって、OEM提携は単なる「下請け契約」ではなく、「協業による戦略的選択肢」として価値を持っています。
今後、より柔軟な提携や共同開発が進む可能性もあり、OEM関係は進化を続けると見られます。
まとめ:OEMは「妥協」ではなく「戦略」
日産がいすゞやスズキとのOEM関係を解消しないのは、単にコスト面だけでなく、製品ラインアップの維持、業界競争への対応、ブランド力の確保といった多角的な理由があるためです。
OEM提携は今後も日本の自動車産業における合理的な選択肢として活用され続けるでしょう。
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