かつてのHonda(ホンダ)には、シビック、インテグラ、プレリュード、CR-X、NSX、S2000など、クルマ好きの記憶に残るモデルが数多くありました。そのため現在のホンダを見ると「N-BOXのメーカーという印象が強くなった」と感じる人もいるでしょう。
しかし、現在のホンダを「N-BOXしか売れていないメーカー」と評価するのは正確ではありません。軽自動車ではN-BOXが圧倒的な主力である一方、登録車にはフリード、ヴェゼル、WR-V、ステップワゴン、シビックなどがあり、ハイブリッド技術も現在の重要な競争力です。
ただし、2026年時点のホンダ四輪事業は絶好調というより、売れる商品を持ちながら事業戦略を立て直している途中と見るのが実態に近いでしょう。国内販売だけでなく、世界市場、EV戦略、ハイブリッド戦略まで見ると現在の立ち位置が分かりやすくなります。
N-BOXの強さは本物で、2025年も軽自動車販売トップ
N-BOXの存在感が大きいという印象には明確な理由があります。全国軽自動車協会連合会の統計によると、2025年1~12月のN-BOX販売台数は201,354台で、軽乗用車の車名別販売台数1位でした。2位のスズキ・スペーシアは165,589台であり、N-BOXは依然として非常に強い商品です。[参照:全国軽自動車協会連合会 2025年軽四輪車通称名別新車販売]
2025年度(2025年4月~2026年3月)でもN-BOXは198,893台を販売しています。したがって「最近のホンダ=N-BOX」という印象が形成されること自体は不思議ではありません。[参照:全国軽自動車協会連合会 2025年度車名別販売]
ただしメーカー全体の軽自動車販売では、2025年度にスズキが556,632台、ダイハツが534,969台、ホンダが276,109台となっています。つまりN-BOX単体は非常に強いものの、軽自動車メーカーとしての商品数・販売規模ではスズキやダイハツのほうが大きいという構図です。[参照:全国軽自動車協会連合会 2025年度軽四輪車販売台数]
ホンダはN-BOX以外にもフリード・ヴェゼル・ステップワゴンなどを持つ
ホンダの国内ラインアップを見ると、N-BOX以外にも用途の異なるモデルがあります。コンパクトミニバンのフリード、SUVのヴェゼルとWR-V、ミニバンのステップワゴン、コンパクトカーのフィット、スポーティなシビックなどです。
特に現在のホンダを理解するうえで重要なのが、独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」です。一般的な走行領域ではモーターを積極的に利用しながら、条件に応じてエンジンによる駆動も使い分ける仕組みで、燃費だけでなく電動車らしい加速感を狙っています。
昔のホンダが高回転型エンジンやスポーツモデルによって技術イメージを形成していたのに対し、現在はハイブリッド、居住性、安全運転支援、SUV・ミニバンなどへ技術の見せ方が変化しています。そのため、1990~2000年代のホンダを基準にすると「昔ほど尖って見えない」と感じやすい面があります。
昔のホンダと今のホンダでは「勢い」の見え方が違う
昔のホンダには、VTECを前面に出したスポーツモデルや個性的な車種が多く、クルマ好きに強烈な印象を残しました。一方、現在の日本市場ではSUV、軽スーパーハイトワゴン、ミニバン、ハイブリッド車など実用性の高いカテゴリーが販売の中心になっています。
つまりホンダだけが変わったのではなく、自動車市場そのものが変わっています。2ドアクーペやスポーツセダンを大量に販売できた時代とは異なり、メーカー側も安全性、環境性能、燃費、室内空間、運転支援などへ開発資源を投入する必要があります。
そのため「昔のホンダのようなワクワク感が薄い」という評価と「現在の商品競争力がない」という評価は分けて考えたほうがよいでしょう。趣味性の高い車種が減ったことと、日常車としての商品力は別の話だからです。
一方で2026年のホンダ四輪事業は厳しい局面にある
販売車種だけを見ると堅調に見えるホンダですが、世界規模の四輪事業では課題を抱えています。ホンダ自身も2026年3月、四輪事業についてEV戦略の見直しやアジアでの商品競争力低下などにより収益性が悪化し、厳しい状況にあることを公表しました。[参照:Honda 四輪電動化戦略の見直しと今後の方向性]
背景にはEV市場の成長速度の変化、北米の政策・関税環境、中国やアジアにおける新興EVメーカーとの競争などがあります。特に中国系メーカーはEV、ソフトウェア、ADASなどで急速に存在感を高めており、日本メーカー全体にとって大きな競争相手になっています。
したがって2026年のホンダを「他社を圧倒するほど勢いがある」と評価するのは難しい一方、「N-BOXしかなく衰退している」と評価するのも極端です。国内で強い商品を持ちながら、世界市場で四輪事業の再構築を進めている段階と考えると分かりやすいでしょう。
EV一本ではなくハイブリッドへ再び力を入れる方向に
ホンダは一時期EVへの大規模な投資計画を打ち出していましたが、市場環境の変化を受けて戦略を修正しています。2026年5月に公表したビジネスアップデートでは、今後3年間を四輪事業の再構築に集中的に取り組む期間と位置付けています。[参照:Honda 2026ビジネスアップデート]
注目すべきなのは資源配分です。ホンダは2029年3月期までの3年間について、EV投資を0.8兆円規模にコントロールする一方、ICE(内燃機関)・ハイブリッド車へ4.4兆円、ソフトウェアへ1兆円を投入する方針を示しています。
これはEVを完全にやめるという意味ではありません。EV市場の成長速度を見極めつつ、当面は現在需要の大きいハイブリッド車などで競争力と収益性を高める戦略です。e:HEVを持つホンダにとって、今後数年はハイブリッドの商品展開が非常に重要になります。
トヨタ・スズキ・日産などとは得意分野が違う
「他社より勢いがあるか」を判断するときは、何を比較するかによって答えが変わります。トヨタは国内外で圧倒的な事業規模と幅広い車種を持ち、ハイブリッドでも長い実績があります。スズキは軽自動車に加えてインド市場に大きな強みを持ちます。
ホンダの場合、日本ではN-BOX、フリード、ヴェゼルなどが重要な商品であり、北米も非常に重要な市場です。また自動車だけでなく、世界規模で非常に強い二輪事業を持っていることも他の国内自動車メーカーとは異なる特徴です。
一方で商品ラインアップの幅ではトヨタほどではなく、軽自動車全体の販売規模ではスズキやダイハツに及びません。したがって単純な販売台数だけでなく、「どのカテゴリーで強いのか」を見る必要があります。
今のホンダ車を評価するならN-BOX以外にも試乗してみる価値がある
昔のホンダ車が好きだった人ほど、現在のホンダをカタログだけで見ると物足りなく感じるかもしれません。しかし現在はエンジン単体の最高出力より、モーターとの協調制御、ハンドリング、運転支援、静粛性などに技術が使われています。
例えば現在のホンダらしさを確認するなら、N-BOXだけでなく、e:HEVを搭載したフリード、ヴェゼル、シビックなどを実際に試乗して比較すると分かりやすいでしょう。昔のVTECスポーツとは方向性が違いますが、アクセル操作に対するレスポンスや車体の扱いやすさなどにメーカーごとの個性があります。
逆に「軽量なボディに高回転エンジンを載せた安価なスポーツモデル」を昔のホンダらしさと考えるなら、現在のラインアップに寂しさを感じるのも自然です。これは商品力の優劣というより、ホンダが戦っている市場そのものが変わった結果でもあります。
まとめ:ホンダはN-BOXだけではないが、2026年は四輪事業の再構築期
現在のホンダには確かにN-BOXのイメージが強く、2025年も年間20万台を超えて軽乗用車販売トップとなりました。しかしN-BOXだけのメーカーではなく、フリード、ヴェゼル、WR-V、ステップワゴン、フィット、シビックなどを展開し、e:HEVというハイブリッド技術も重要な武器になっています。
一方、世界の四輪事業まで含めると2026年のホンダは順風満帆ではありません。EV市場の変化や中国・アジアでの競争激化などを受けて戦略を修正し、今後3年間を四輪事業の再構築期間としています。
現在のホンダは「昔のようなスポーツモデル中心の勢い」ではなく、N-BOXなどの実用車とe:HEVを軸に強みを持ちながら、次の成長モデルを作ろうとしているメーカーと捉えるのが実態に近いでしょう。昔と同じ基準だけで評価するより、現在の主力車種、ハイブリッド技術、そしてこれからの商品戦略を合わせて見ることで、今のホンダの立ち位置が見えてきます。


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