スクーターで峠道を楽しみたい場合、単純に排気量や最高出力が大きい車種を選べばよいとは限りません。上り坂の加速力だけでなく、車重、ホイール径、サスペンション、ブレーキ、切り返しの軽さなどによって峠での乗り味は大きく変わります。
また「峠向き」には、タイトな低速コーナーを軽快に走りたいのか、中高速コーナーで安定感を求めるのかという違いがあります。マジェスティS、PCX150・160、NMAX155、XMAX、TMAXではキャラクターがかなり異なります。
軽快さを重視するなら150~160ccクラス、パワーと車体性能のバランスならXMAX、本格的な動力性能まで求めるならTMAX560が有力です。ただし、公道の峠はサーキットではないため、対向車や落石、濡れた路面などを考慮して安全な速度で楽しむことが前提です。
峠向きスクーターは排気量だけでは決まらない
峠では直線よりも、減速、旋回、加速を繰り返します。そのため最高出力だけを見るより、車重に対するエンジン性能や車体の扱いやすさを見ることが重要です。
例えば現行PCX160は156cc・最高出力15.8PS・車両重量134kgです。NMAX155も同じクラスで、現行モデルは155cc・15PSとなっています。PCX160の公式諸元はHondaで確認できます。[参照:Honda PCX・PCX160]
対してXMAXは249ccで車両重量183kgです。ヤマハ自身もモーターサイクルタイプのフロントサスペンションによるフロント接地感と、軽快でスポーティなハンドリングを特徴として挙げています。[参照:ヤマハ XMAX]
PCX160は軽さと扱いやすさが魅力
PCX160は134kgという軽量な車体が大きなメリットです。狭い峠道で左右へ切り返したり、ヘアピンが連続したりする場面では、大型スクーターより身体的な負担を抑えやすいでしょう。
156ccエンジンは最高出力15.8PS、最大トルク15N・mで、日常域から郊外のワインディングまで扱いやすい性能です。前14インチ・後13インチのタイヤを採用しており、単なる街乗り専用車というわけではありません。
一方で、急な上り坂で力強く加速する性能では250cc以上に及びません。平坦路では十分でも、勾配が強い峠では「もう少しパワーが欲しい」と感じる場面が出てきます。燃費や街乗りも重視しつつ、ときどき峠を楽しむ用途との相性がよいタイプです。
NMAX155はスポーティさを求める人の有力候補
NMAX155も峠用として検討しやすい150ccクラスです。現行モデルは155cc・15PSで、車重も135kg程度と軽量です。[参照:ヤマハ NMAX155]
PCX160との絶対的な性能差は大きくありませんが、購入時にはスペック表だけでなく実際に試乗して、ハンドリングや着座位置、ブレーキのフィーリングまで比較したいところです。同じ150ccクラスでもライダーとの相性によって峠での楽しさは変わります。
小排気量スクーターの面白さは、絶対速度を上げなくてもエンジンと車体を使って走れることです。細くタイトな峠なら、重く高出力な車両よりNMAX155やPCX160の軽さが楽しく感じられるケースもあります。
中古ならマジェスティSも面白い存在
マジェスティSは現在の国内新車ラインアップから外れていますが、中古車まで含めるなら候補になります。最終期の国内仕様では155cc・15PS、車両重量145kg、前後13インチタイヤという構成でした。[参照:ヤマハ マジェスティSカタログ]
PCX160やNMAX155と比較すると設計世代が異なるため、ABSなど安全装備や燃費、快適装備まで含めれば新しいモデルが有利な部分があります。一方、中古価格や車体のフィーリングを含めてマジェスティSを好む人もいるでしょう。
中古車の場合は車種本来の性能以上に、タイヤ、ステアリングステム、フォーク、リアショック、ブレーキ、駆動系のコンディションが重要です。峠を走る目的なら、安い個体を買ってすぐ走るのではなく、まず基本整備を優先するのがおすすめです。
XMAXは峠とツーリングを両立しやすい
今回の候補の中で「峠を楽しみたいが高速道路や長距離ツーリングにも使いたい」という条件なら、XMAXは非常にバランスのよい選択肢です。
現行XMAXは249ccで、車両重量183kg。前15インチ・後14インチタイヤを採用しています。さらにスクーターとしては特徴的なモーターサイクルタイプのフロントサスペンションを備え、ヤマハもフロント接地感とスポーティなハンドリングを特徴として説明しています。[参照:ヤマハ XMAX 機能・装備]
150~160ccクラスより重いものの、上り坂での余力や高速道路での巡航性能とのバランスがあります。タイトな道だけを軽快に走るなら150ccクラス、峠までの移動を含めた総合力ならXMAXという選び方ができます。
TMAX560は別格の性能だが軽快さとは別の方向
TMAX560は561cc直列2気筒エンジンを搭載する大型スクーターで、150ccや250ccクラスとは性能カテゴリーそのものが異なります。ヤマハはTMAXを「オートマチック・スーパースポーツ」と位置付けています。[参照:ヤマハ TMAX560]
561ccエンジンは48PS級の出力を持ち、中高速域の加速や上り坂では明らかに余裕があります。高速コーナーを含むワインディングや、峠まで高速道路を使うツーリングでは強みがあります。
ただし車重は200kgを大きく超えます。狭いヘアピンが連続する峠で「小さなスクーターを軽快に振り回す楽しさ」を求めるなら、TMAXが無条件に一番とはいえません。車両価格やタイヤなどの維持費も150ccクラスとは大きく異なります。
目的別に選ぶとおすすめが変わる
各モデルは排気量が大きく異なるため、単純な順位を付けるより用途で分けたほうが実用的です。
| 重視するポイント | 候補 | 理由 |
|---|---|---|
| タイトな峠での軽快さ | NMAX155・PCX160 | 130kg台の軽量な車体 |
| 中古で個性的な155cc | マジェスティS | 前後13インチのコンパクトな構成 |
| 峠+高速+ツーリング | XMAX | 249ccとスポーティな車体のバランス |
| 動力性能を最優先 | TMAX560 | 561cc直列2気筒による余裕 |
| 燃費・日常性との両立 | PCX160・NMAX155 | 軽量で普段使いもしやすい |
「峠専用に近い遊び方」なら軽量な150~160ccクラス、「峠も長距離も一本でこなしたい」ならXMAX、「大型バイク級の余裕をスクーターで楽しみたい」ならTMAX560という分け方が分かりやすいでしょう。
峠では車種以上にタイヤと足回りの状態が重要
同じ車種でも、タイヤの状態によって走りは大きく変わります。溝が残っていても製造から長期間経過して硬化したタイヤでは、本来のグリップ性能を期待できません。
またフォークオイルやリアショックの劣化、ステアリングステムやホイールベアリングのガタ、ブレーキパッドやフルードの状態などもハンドリングに影響します。特に中古のマジェスティSやPCX150を選ぶ場合には、カスタムより先に基本整備を行うことが重要です。
公道の峠には砂、落ち葉、湧き水、マンホール、対向車、自転車や歩行者などがあります。性能を試す場所ではないため、余裕を残した速度でラインを守って走ることが、結果として最も長く峠を楽しめる乗り方です。
まとめ:峠での総合力ならXMAX、軽快さならNMAX155・PCX160が有力
峠に向いたスクーターは一台に決められるものではありません。軽くタイトな峠を楽しむならNMAX155やPCX160、パワー・車体性能・ツーリング性能をバランスよく求めるならXMAXが有力です。
TMAX560は動力性能では別格ですが、車重や価格も大きくなるため、細い峠での軽快さだけを目的に選ぶ必要はありません。マジェスティSも中古車として面白い選択肢ですが、年式が進んでいるため車両状態を重視して選びたいところです。
最終的にはスペックだけで決めず、PCX160、NMAX155、XMAXなどを実際に試乗し、低速での取り回し、ブレーキの感触、切り返し、足着き、乗車姿勢を比較するのがおすすめです。峠で楽しいスクーターとは、最高出力が最も大きな一台ではなく、自分が余裕を持って操作できる一台です。


コメント