久しぶりにベスパ125などのスクーターに乗ろうとしたところ、セルが回らずバッテリーが上がっていることがあります。そこでバッテリーを取り外してみると、昔ながらのバッテリーのような液口栓がなく、「このまま充電器につないで大丈夫なのか」と迷うことがあります。
液口が見当たらないバイク用バッテリーは、VRLA(制御弁式)などの密閉型である可能性があります。密閉型でも充電はできますが、重要なのは「密閉型だから充電できない」のではなく、そのバッテリーに対応した充電器・充電条件を使うことです。また、長期間完全に近い状態まで放電していたバッテリーは、充電しても性能が戻らず交換が必要になる場合があります。
液口がない密閉型バッテリーでも充電できる
バイクに広く使われているVRLA(制御弁式)バッテリーは、通常使用時に液量の点検や補水を必要としない構造です。GSユアサも、VRLA型は電解液面の点検や補水ができない構造であり、充電自体は対応する専用充電器を使用して行うよう案内しています。[参照] GSユアサ「バイク用バッテリーの充電方法とメンテナンス」
したがって、「液口がないから充電できない」ということではありません。むしろVRLA型では、密封されている部分を無理に開けないことが重要です。GSユアサもVRLA型について、密封栓を外さないよう明記しています。
ただし、「液口がない」という外観だけでバッテリーの種類を断定するのは避けたほうが安全です。まずバッテリー側面のラベルに記載されたメーカー名、型式、電圧、容量、AGM・VRLAなどの表示を確認し、その型式の取扱説明書やメーカー情報と照合します。
重要なのは手持ちの充電器が密閉型に対応しているか
密閉型バッテリーを充電するときに最も確認したいのが充電器です。GSユアサは、VRLA(制御弁式)バッテリーにはVRLA対応充電器を使用するよう案内しています。充電方法を誤ると過充電による液枯れ、性能低下、寿命短縮などにつながるためです。[参照] GSユアサ「バイク用バッテリーの型式と選び方」
特に、昔から使っている自動車用の大型充電器を「12Vだから同じ」と考えて、そのまま小容量のバイク用バッテリーにつなぐのはおすすめできません。バイク用バッテリーは自動車用より容量が小さいものが多く、適切な充電電流も異なります。
例えばGSユアサでは、バイク用バッテリーの普通充電について、まずバッテリー本体に指定された電流値に従い、表示がない場合には容量の1/10の電流を目安としています。つまり6Ahなら単純な目安は0.6Aです。ただし実際にはバッテリーメーカーと充電器メーカー双方の指定を優先してください。
密閉型のフタや密封栓は開けない
開放式バッテリーでは液口栓を外して充電する方法がありますが、VRLA型では考え方が異なります。液口らしい部分が見当たらないからといって、上部カバーをドライバーなどでこじ開ける必要はありません。
GSユアサはVRLA型について「いかなる場合でも密封栓は外さない」と案内しています。また、補水も不要で、密封栓を外して補水すると短寿命や液漏れの原因になるとしています。[参照] GSユアサ「バイク用バッテリーの充電方法とメンテナンス」
密閉型は、充電時などに発生するガスを内部で処理する構造を採用しています。ただし異常な過充電では内部圧力が高まり、安全弁からガスが放出される場合があります。そのため、火気の近くで作業しないこと、充電中に異常な発熱や膨らみなどがないか確認することも重要です。
「車とつないで走ったのに復活しない」理由
車などから始動を補助し、その後スクーターをしばらく走らせてもバッテリーが復活しない場合があります。これは必ずしも車両側の充電装置が故障しているという意味ではありません。
長期間放置されて深く放電した鉛バッテリーでは、充電を受け付けにくくなったり、充電後の容量が大幅に低下したりすることがあります。エンジンを始動できても、短時間の走行だけで健全な満充電状態まで回復するとは限りません。
例えば、ブースター接続中はセルが元気に回るのに、外して少し時間を置くと再びセルがほとんど回らない場合、単なる充電不足だけでなくバッテリー自体の劣化も疑う必要があります。一方、正常なバッテリーに交換・充電しても繰り返し上がるなら、車両の充電系統や暗電流など別の原因を調べる段階になります。
一度完全に近い状態まで上がったバッテリーは復活する?
バッテリー上がりには程度があります。数週間乗らずに少し電圧が低下した程度なら、適切な充電によって再使用できる可能性があります。一方、長期間放置され、セルどころかメーターなどもほとんど動かないほど深く放電していた場合は、充電しても十分な性能が戻らないことがあります。
また、古いバッテリーでは「充電器上では充電完了になるのに、セルを回すと一気に電圧が下がる」という状態もあります。これは始動時に必要な大きな電流を供給できなくなっている可能性があり、単純な充電だけでは解決しません。
GSユアサでは、VRLA型を専用充電器で24時間充電しても充電が完了しない場合はバッテリー不良としています。実際の判定は使用しているバッテリーと充電器の仕様にも左右されるため、判断できなければバイク店やバッテリー販売店で点検してもらうのが確実です。
充電前に確認したい5つのポイント
手持ちの充電器を接続する前に、最低限次の項目を確認しておくと安全です。
- バッテリーの型式:側面ラベルの型番を確認する
- 公称電圧:12Vなのかを確認する
- 種類:VRLA・AGMなど密閉型か、開放式かを確認する
- 充電器の対応種類:VRLA・AGMなどに対応しているか取扱説明書で確認する
- 指定充電電流:バッテリー本体・メーカーが指定する値を確認する
とくに「ベスパ125」という車名だけではバッテリー型式を一つに決めることはできません。ベスパには年代やモデルによって複数の125cc車があり、さらに前オーナーが異なるバッテリーへ交換している可能性もあります。車名から推測するより、現在装着されているバッテリーの型式を直接確認するのが確実です。
充電器が対応していれば基本的には端子から充電する
取り外した密閉型バッテリーを充電する場合、適合する充電器であれば、基本的にはプラス・マイナス端子へ充電器を接続して充電します。液口を開けて液を補充してから充電する、という作業はVRLA型では行いません。
ただし接続順序や電源を入れるタイミングは充電器によって指定があります。GSユアサの一般的な案内だけを自己流で流用するのではなく、実際に使用する充電器の取扱説明書に記載された接続・取り外し手順を優先してください。
充電中にバッテリーが異常に熱くなる、ケースが膨らむ、異臭がする、液漏れがあるなどの異常が確認された場合は、そのまま充電を継続しないことが重要です。
急速充電より普通充電が基本
「早く乗りたいから大電流で一気に充電すればよい」と考えたくなりますが、小容量のバイク用バッテリーでは特に注意が必要です。GSユアサも急速充電について、バッテリー寿命を縮めるため緊急時以外は普通充電を行うよう案内しています。
密閉型は過充電にも注意が必要です。対応した全自動のバイク用充電器であれば、バッテリー状態に応じて充電を制御する製品もあります。年に数回しかスクーターに乗らない場合は、バイク用・密閉型対応の充電器を用意しておくと管理しやすくなります。
なお、リチウム系バッテリーに交換されている車両では、鉛バッテリー用充電器をそのまま使用できない場合があります。ラベルにLiFePO4などの表示がある場合は、必ずそのバッテリーに対応した充電器を使用してください。
ジャンプ始動するときは車側にも注意
スクーターのバッテリーが上がったとき、自動車のバッテリーを使って始動を試みる方法がありますが、車両メーカーの取扱説明書にジャンプスタート方法が指定されている場合は、その方法を優先する必要があります。
特に「自動車のエンジンをかけた状態でつないでおけば早く充電できる」と自己判断するのは避けたほうが安全です。バイク側の電装品への影響を避けるためにも、車両メーカー指定の手順が確認できない場合はバイク店などへ相談するのが確実です。
ジャンプスタートは、あくまでエンジンを始動させるための応急的な方法と考えるのが分かりやすいでしょう。弱ったバッテリーを健全な状態に戻す作業は、対応充電器による適切な補充電、または劣化している場合の交換です。
充電してもまた上がる場合は車体側も点検する
新品または正常に充電されたバッテリーなのに短期間で再び上がる場合は、バッテリー以外の原因も考えられます。代表的なのは車両の充電系統の不具合や、キーOFFでも電気を消費する機器による暗電流です。
例えばエンジンをかけて走っているのに充電されない場合、発電機やレギュレーターなどの点検が必要になることがあります。また、後付けUSB電源、アラーム、電装アクセサリーなどが長期駐車中の消費電力に影響する場合もあります。
「新品バッテリーでもすぐ上がる」「充電しても数日でセルが弱くなる」という場合は、バッテリーを何度も充電するだけで済ませず、バイク店で充電電圧や漏電・暗電流を確認してもらうと原因を切り分けやすくなります。
まとめ|密閉型は開けず、対応充電器で充電する
ベスパ125から取り外したバッテリーに液口がない場合、VRLAなどの密閉型である可能性があります。密閉型バッテリーも充電できますが、VRLA・AGMなどその種類に対応した充電器を使い、メーカー指定の電流・充電方法を守ることが重要です。
密閉型であれば、液口を探してフタをこじ開けたり、精製水を補充したりする必要はありません。まずバッテリー側面の型式を確認し、メーカーの仕様と手持ちの充電器の対応条件を照合してください。
また、長期間の放置で深く放電したバッテリーは、適切に充電しても復活しない場合があります。車とつないで始動し、走行しても回復しなかったのであれば、対応充電器による補充電を試したうえで、充電不能・始動性能不足なら交換を検討するのが現実的です。交換後も短期間で上がる場合には、車両の充電系統や暗電流の点検まで進めると原因を切り分けられます。


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