自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えており、エンジンの“付け方”や“配置”も、従来の常識から大きく変わりつつあります。EV(電気自動車)や燃料電池車(FCV)、そしてハイブリッドなど、多様化するパワートレインと車体設計の関係を踏まえながら、未来の車におけるエンジンやモーターの配置について解説していきます。
これまでのエンジン配置の主流とは?
従来のガソリン車では、主に以下の3パターンが主流でした。
- FF(前輪駆動):エンジンと駆動輪を前方に集約
- FR(後輪駆動):エンジン前方+後輪駆動
- MRやRR(ミッド/リアエンジン):主にスポーツカーに多い
これらは整備性・コスト・走行性能のバランスを考慮した設計ですが、エンジンサイズや冷却の都合上、ある程度のボンネットスペースを要していました。
EV・次世代車は“パッケージ自由度”が鍵に
電気自動車では、モーターやインバーターが非常にコンパクトなため、従来のような大きなエンジンルームが不要になります。その結果、ホイールベースを伸ばしつつ、車室内空間を最大化した“スケートボード構造”が主流に。
たとえば、テスラや日産アリア、トヨタbZ4Xなどは「床下にバッテリー+前後にモーター配置」といった新しい取り付け構造を採用しています。
将来は「脱・ボンネット」もあり得る?
今後はフロントモーターを小型化し、車両前部から“完全に突起物を排したデザイン”も登場するかもしれません。実際、Apple Carなどのコンセプトカーでは「モーター内蔵ホイール」構想もあり、エンジン(モーター)をどこに“付けるか”すら新しい常識になる可能性があります。
その結果、事故時の歩行者保護性や空力性能、車内スペース設計が大きく進化することになります。
ハイブリッド・FCVでは複合配置も
トヨタ・プリウスのようなハイブリッド車では、エンジンとモーターが一体となってフロントに収まる構成が一般的ですが、今後はシリーズ式やプラグイン式によってエンジンを“発電専用”として車体後部に設置するような構造も登場しています。
また、水素燃料電池車ではバッテリー・燃料電池・水素タンクなどを分散して配置するため、今後の設計自由度はますます高まるでしょう。
未来の整備やカスタムの姿も変わる
「どこにエンジン(モーター)があるか」が標準化されていない未来では、整備士の知識や修理方法も車ごとに異なる時代になるかもしれません。専用スキャンツールやAI診断による補助が主流になり、物理的な部品交換が減る可能性もあります。
カスタムの世界でも、ホイールモーターの後付けや、ボディ一体型ドライブユニットなど、新たなトレンドが生まれるでしょう。
まとめ:未来の“エンジンの付け方”は柔軟かつ分散化へ
未来の車は、従来のように「前にエンジンがある」のが常識ではなくなります。モーターの配置、バッテリーの搭載方法、エネルギー源の多様化により、クルマの構造自体がゼロから再設計される時代がやってきます。
それに伴い、開発・整備・運転体験のすべてが変化し、「エンジンの付け方」そのものが、車の個性や用途に合わせて最適化されていくのがこれからの常識になるでしょう。
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