車中泊仕様の車や仕事で使うバン・貨物車では、荷台にサブバッテリー、ベッド、テレビ、工具棚などを常時積んでいることがあります。そこで困りやすいのが車検です。車検を依頼した際に「荷物を全部降ろしてください」と言われることがありますが、毎回大掛かりな荷下ろしをするとなると大きな負担になります。
ただし、車検で問題になるのは単純に「荷物があるか、ないか」だけではありません。通常の積載物なのか、車体の一部とみなされる設備なのか、検査や整備を妨げないかなどによって扱いが変わります。この記事では、荷台にサブバッテリーや簡易ベッド、テレビ、棚などを載せている車の車検について整理します。
そもそも車検では何を確認しているのか
一般に「車検」と呼ばれているものは継続検査です。自動車技術総合機構では、継続検査を「自動車検査証の有効期間満了後も引き続き自動車を使用するときに受ける検査」と案内しています。一方、長さ・幅・高さ・最大積載量などに変更が生じるような改造をした場合には、構造等変更検査が関係します。
つまり、車検では単にエンジンやブレーキが正常ならよいというわけではなく、その車が保安基準に適合しているか、登録されている車両の状態との間に問題がないかなども確認されます。車検の種類については自動車技術総合機構の「自動車検査の種類」[参照]で確認できます。
そのため、荷台にさまざまな物が載った状態では、検査や点検が十分にできない場合があります。また、設備の取り付け方によっては単なる荷物ではなく、車両の構造に関係するものとして確認が必要になることがあります。
「荷物」と「車に取り付けた設備」は同じではない
重要なのが、単純な積載物と車両に取り付けられた設備を分けて考えることです。例えば、荷台に置いてある工具箱、キャンプ用品、折りたたみテーブルなどは通常は積載物として理解しやすいものです。
一方で、ボルトなどを使って車体へ恒久的に取り付けた大型棚、ベッド、電装設備などになると話が変わる可能性があります。国土交通省関係資料では、自動車部品について「簡易な取付方法」「固定的取付方法」「恒久的取付方法」など、取り付け方による考え方も示されています。
したがって、「取り外せる物なら何でも積んだままで車検を受けられる」「固定した物はすべて構造変更になる」と単純に判断するのも適切ではありません。部品の種類、取り付け方法、重量や寸法の変化などを総合的に確認する必要があります。
サブバッテリー・簡易ベッド・テレビはどう考える?
車中泊仕様でよくあるのが、ポータブル電源やサブバッテリー、簡易ベッド、テレビ、冷蔵庫などです。床に置いているだけ、あるいは容易に取り外せる状態であれば、一般的には「積んでいる物」として考えやすくなります。
例えば、荷台に家庭用テレビを載せ、走行時には安全に固定し、必要に応じて簡単に車外へ取り出せる状態なら、車そのものの構造を変更した設備とは性格が異なります。折りたたみ式のベッドキットを置いている場合も同様に、取り付け方法が重要なポイントになります。
一方、サブバッテリーを車体に固定し、車両側の電装系と配線している場合などは、単純に荷物を一つ載せている場合とは事情が異なります。特に配線の安全性や取り付け状態などを整備事業者が確認する必要があれば、周囲の荷物を降ろすよう求められることがあります。
なぜディーラーから「全部降ろしてください」と言われるのか
ディーラーや整備工場が荷物を降ろすよう求める理由は、法令上「車検時には車内を完全に空にしなければならない」という一つのルールだけで説明できるものではありません。点検・整備・検査を安全かつ確実に行うため、店舗独自の受入条件として荷物を降ろすよう求めている場合があります。
例えば、荷物で点検箇所へアクセスできなかったり、重量物が動いて作業員に危険が生じたりすれば、整備工場としてはその状態で作業を受けるのが難しくなります。サブバッテリーなどの重量物が固定されていなければ、車をリフトで上げたり移動させたりする際にも安全管理上の問題が生じます。
このため、「法律上その荷物を積んで車検を受けられる可能性があること」と「そのディーラーが荷物を載せた状態で車検作業を受け付けてくれること」は別問題です。依頼先が全部降ろすことを受入条件としているなら、その店舗へ依頼する場合には基本的に指示に従うことになります。
仕事用の車に棚や工具を積んでいる人はどうしている?
商用バンや貨物車では、日常的に大量の工具、商品、資材などを積んでいるケースがあります。車検のたびにすべてを降ろすことが負担になる点は、車中泊仕様の車と同じです。
ただし、「工具を棚に積んでいる状態」と「棚そのものを車体へ取り付けている状態」は分けて考える必要があります。日常的な積載物であれば車検前に荷物だけを降ろし、棚などについては取り付け方法や車両の状態に応じて整備事業者に判断してもらう方法があります。
業務用車両では最初から架装された車を利用したり、車検を依頼する整備工場と設備について事前に打ち合わせたりして運用しているケースもあります。したがって、他の業者が棚を載せたまま車検を受けているように見えても、自分の車も同じ条件で通るとは限りません。
固定していない重量物は走行時の安全にも注意
車検とは別に注意したいのが、荷物の固定です。国土交通省の不正改造防止に関する資料でも、貨物車について荷台に積載する荷物を適切に固定することが案内されています。
特にサブバッテリーは小型でもかなりの重量があります。急ブレーキや衝突時には重量物が前方へ飛び出す危険があるため、「車検で降ろす必要があるか」だけでなく、普段の走行時に安全に固定されているかも重要です。
テレビ、冷蔵庫、収納箱などについても同様です。車中泊中は問題なく置ける物でも、走行中は強い加速度を受けます。簡単に取り外せる仕様を維持しながら、走行中にはベルトや適切な固定器具などで移動を防ぐ設計にしておくと扱いやすくなります。
毎回の荷下ろしを楽にする方法
車検のたびに設備を降ろすのが大変なら、最初から「短時間で取り外せる車中泊仕様」にしておくのも一つの方法です。例えば、ベッドを複数のパネルに分割する、収納箱をユニット化する、テレビを工具なしで取り外せるようにするなどです。
サブバッテリーについても、ポータブル電源のように車外へ容易に持ち出せる方式と、車体へ本格的に固定・配線する方式では使い勝手や車検時の対応が変わってきます。設備を追加する段階で、車検を依頼する整備工場へ相談しておくと後から困りにくくなります。
特に大型の棚、ベッド、電装設備などを恒久的に取り付けようとしている場合は、完成してから相談するより、施工前にディーラー、認証整備工場、運輸支局などへ確認するほうが確実です。
構造変更が必要になるケースにも注意
車に設備を追加したからといって、必ず構造等変更検査が必要になるわけではありません。一方、自動車技術総合機構は、長さ・幅・高さ・最大積載量などに変更が生じるような改造をした場合に構造等変更検査を行うと説明しています。
例えば、車中泊を快適にするために単純なベッドを荷物として載せる場合と、車体そのものへ大規模な加工を行って恒久的な設備を設置する場合では意味が違います。貨物車の場合には最大積載量などとの関係もあるため、自己判断だけで進めないほうが安全です。
なお、構造等変更検査が必要かどうかは、車種、設備、重量、寸法、取り付け方法などによって判断が変わります。判断に迷う設備については、車検を受ける直前ではなく、設置する前の段階で確認しておくことをおすすめします。
まとめ:車検時の荷物は「積載物か設備か」と依頼先の受入条件を確認しよう
車検時に荷台の物を全部降ろす必要があるかどうかは、「荷物が載っている」という一点だけでは判断できません。通常の積載物なのか、車体へ取り付けた設備なのか、点検を妨げないか、安全上の問題がないかなどによって扱いが変わります。
また、法令上の車検基準とは別に、ディーラーや整備工場が安全な作業のため独自の受入条件を設けている場合があります。そのため、ある整備工場では対応可能でも、別のディーラーでは「全部降ろしてください」と案内されることがあります。
サブバッテリー、ベッド、テレビ、棚などを常設したい場合は、設備の固定方法や重量を含め、車検を依頼する予定の整備事業者へ事前に相談するのが最も確実です。毎回の荷下ろしが負担になる場合には、容易に脱着できるユニット式にする方法も検討すると、普段の使い勝手と車検時の作業を両立しやすくなります。

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