中古の150ccクラスのスクーターを探していると、Honda PCX150のABSなしモデルと、ABSを標準装備した初期型YAMAHA NMAX155が候補になることがあります。価格や燃費、乗り心地だけならPCX150に魅力を感じても、「ABSなしを選んで後悔しないか」は気になるポイントです。
結論からいえば、ABSなしのPCX150でも通常の走行はできますが、雨天、砂やマンホールのある路面、前方車両の急停止などで強いブレーキが必要になった場面では、ABSがあったほうが安心材料になります。一方、ABSは転倒を必ず防いでくれる装置ではないため、ABSの有無だけで中古車を決めるのも適切ではありません。
特にPCX150は年式によってブレーキ仕様が異なります。中古車選びでは「PCX150」という車名だけで判断せず、年式・型式・ABSの有無を確認したうえでNMAX155と比較することが重要です。
PCX150のABSなしモデルはどんなブレーキなのか
PCX150にはABSを装備していない世代・仕様があります。例えばKF18型PCX150の取扱説明書では、車両重量131kg、排気量152ccであることなどが確認できます。[参照] Honda PCX150取扱説明書
ABSなしだからといって、通常の制動ができないわけではありません。当時のPCXは前後ブレーキを連動させるHonda独自のコンビブレーキを採用していたモデルがあり、日常走行で扱いやすいブレーキシステムになっています。
ただし、コンビブレーキとABSは役割が違います。コンビブレーキは前後輪への制動力の配分を助ける仕組みで、ABSは強い制動時などにタイヤがロックすることを抑えるためのシステムです。「コンビブレーキが付いているからABSと同じ」と考えることはできません。
ABSが欲しくなるのは普段ではなく「急ブレーキの瞬間」
ABSのメリットが分かりにくい理由は、普通に走って普通に停止している限り、ほとんど出番がないからです。何年間もABSを一度も作動させないライダーも珍しくありません。
ところが、ABSが重要になるのは予想外の状況です。例えば時速50~60km程度で走行中、前の車が突然急停止した場合、反射的にブレーキを強く握ってしまうことがあります。ABSなしの二輪車では、条件によって前輪や後輪がロックし、車体の安定性を失う可能性があります。
雨の日の横断歩道の白線、マンホール、落ち葉、砂利なども典型的な例です。乾いたアスファルトでは問題のないブレーキ操作でも、摩擦の小さい場所ではタイヤが滑りやすくなります。ABSはこうした状況でホイールロックを抑える方向に働きます。
ABSは「止まれる魔法の装置」ではない
一方で、ABSを過信するのも禁物です。HondaもABSについて、ライダーのブレーキ操作を補助するシステムであり、無理な運転まで対応できるものではないと説明しています。[参照] Honda PCX ブレーキ・ABS解説
特に二輪車の場合、車体を大きく傾けたコーナリング中の急ブレーキなどでは、一般的なABSが付いているだけですべての転倒を防げるわけではありません。タイヤのグリップそのものを増加させる装置でもありません。
つまりABSの正しい位置付けは、危険な状況でライダーを助けてくれる安全装備の一つです。「ABSがあるから急ブレーキをしても絶対に転ばない」ではなく、「万一強くブレーキを掛けてしまったときの安全余裕を増やす」と考えるのが適切です。
初期型NMAX155は前後ABSを標準装備
日本で2017年に発売された初期型NMAX155は、ABSを標準装備していたことが大きな特徴です。ヤマハの当時の公式カタログでは、前後ディスクブレーキを採用し、ブレーキ油圧を制御してホイールロックを抑止するABSを装備すると説明されています。[参照] ヤマハ NMAX155 2017年公式カタログ
ヤマハもNMAX155発売時に、ABSを標準装備し、ブレーキング時のホイールロックを抑止してライダーの操作をサポートすると説明しています。[参照] ヤマハ発動機 NMAX155紹介
したがって、同程度の価格・車両状態の「ABSなしPCX150」と「初期NMAX155 ABS」で迷っていて、安全装備を最優先するなら、NMAX155には明確なアドバンテージがあります。
PCX150にも後期にはABS仕様がある
ここで注意したいのが、PCX150を一括りにして「ABSなし」と考えないことです。2018年にフルモデルチェンジしたPCX150には、フロントに作用する1チャンネルABSを装備したタイプが設定されました。
Hondaの技術資料によると、通常タイプはコンビブレーキを採用し、PCX150には別途フロントのみが作動する1チャンネルABS仕様が設定されています。なおABSタイプにはコンビブレーキは装備されません。[参照] Honda PCX/PCX150 Fact Book
そのため中古車予算を少し増やせるなら、「PCXが好きだけれどABSなしが気になる」という場合には、ABS付きPCX150まで候補を広げる方法もあります。
PCX150と初期NMAX155をABS中心に比較
| 比較項目 | ABSなしPCX150 | 初期NMAX155 |
|---|---|---|
| ABS | なし | 標準装備 |
| ブレーキの特徴 | コンビブレーキ採用モデルあり | 前後ディスク+ABS |
| 急制動時のロック抑制 | ライダーの操作に依存 | ABSが介入 |
| 雨天・低摩擦路面 | より慎重な操作が必要 | ABSによる安全余裕がある |
| 中古購入時 | 価格・状態次第では魅力的 | ABS重視なら有力 |
ただし、この表はあくまでABS・ブレーキを中心にした比較です。スクーターとしての使い勝手、足つき、シート形状、収納、燃費、走行フィーリングなどを含めれば評価は変わります。
実際の中古車選びでは「PCXかNMAXか」という車種比較以上に、個体差が重要です。年式が古くなるほど、タイヤ、ブレーキパッド、ブレーキフルード、フロントフォーク、ステアリング、駆動系などの状態が安全性や乗り味に影響します。
ABSなしPCX150を選んでも問題ない人
ABSなしPCX150が即座に避けるべき車両というわけではありません。価格が十分安く、整備状態が良好で、主に晴天時の街乗りに使用し、ブレーキ操作にも慣れているなら選択肢になります。
例えばABSなしPCX150が20万円、同程度のNMAX155が30万円というように大きな価格差があり、PCXのタイヤやブレーキなどもしっかり整備されているなら、10万円の差をどう評価するかは購入者によって変わります。
また、PCX特有の乗り味やポジション、デザインなどを気に入っているなら、ABSだけでNMAXへ変更する必要もありません。ただしABSがないことを理解し、十分な車間距離と早めの減速を心掛けることがより重要になります。
通勤や雨天走行が多いならABSを優先したい
反対に、毎日の通勤で使用する、雨の日でも乗る、夜間走行が多い、高速道路を利用する、といった用途ならABS付き車を優先する価値は高くなります。
通勤では年間走行距離が伸びるため、それだけ予想外の急制動に遭遇する機会も増えます。自分が慎重に運転していても、車の急な進路変更や歩行者・自転車の飛び出しまで完全には予測できません。
特に二輪車では前輪をロックさせると転倒につながる可能性があります。「普段ABSを使わないから不要」ではなく、普段使わない装備が必要になった一度のために付いていると考えると、その価値を判断しやすくなります。
二輪車のABSが後に義務化されたことも判断材料になる
日本では二輪車の安全性向上を目的として、ABSまたはCBSなどの先進制動システムについて装備義務化が進められました。国土交通省は2015年、二輪車について新型車は2018年10月1日以降、継続生産車は2021年10月1日以降を対象としてABS/CBSの装備を義務付ける制度改正を発表しています。排気量などにより適用されるシステムは異なります。[参照] 国土交通省「二輪自動車へのABS等の装備義務付け」
これは「ABSなしの旧車は危険なので乗ってはいけない」という意味ではありません。しかし、二輪車の安全対策としてABSなどの制動支援装置が重視されるようになったことは、中古車選びでも参考になるでしょう。
特にこれから数年間乗り続ける前提なら、購入価格だけでなく「安全装備にいくらまで払うか」という視点で比較すると後悔しにくくなります。
中古ならABS以上にタイヤの状態も確認したい
ABSの有無と同じくらい重要なのがタイヤです。ABSはタイヤ自体のグリップ力を作り出す装置ではありません。古く硬化したタイヤや摩耗したタイヤでは、ABS付きであっても本来期待する制動性能を発揮しにくくなります。
中古車を見るときは溝だけでなく、製造時期、ひび割れ、偏摩耗なども確認したいところです。購入直後に前後タイヤ交換が必要なら、その費用も車両価格に加えて比較します。
例えば「ABS付きNMAX155だがタイヤが古くブレーキ整備も必要」という個体と、「ABSなしPCX150だが新品タイヤ・ブレーキ整備済み」という個体なら、単純にABSの有無だけでは決められません。最終的には車両全体のコンディションを販売店で確認することが重要です。
まとめ|同条件ならABS付きNMAX155は安全面で魅力、PCX150は車両状態も含めて判断
ABSなしのPCX150でも通常走行はできますし、長年問題なく乗っているユーザーも当然います。しかし、「ABSがあったら良かった」と感じる可能性があるのは、日常の普通の停止ではなく、雨天や低摩擦路面、飛び出しなどで突然強いブレーキを必要とした瞬間です。
初期型NMAX155はABSを標準装備しており、前後ディスクブレーキとABSを備えているため、ABSなしPCX150とほぼ同じ価格・同じ程度の中古車状態なら、安全装備を重視する人にはNMAX155が有力な選択肢になります。
一方、PCX150の快適性やデザインが好みであれば、ABSなしモデルを価格と状態次第で選ぶ方法もありますし、予算を広げてABS付きPCX150を探す方法もあります。
中古スクーター選びでは「ABSがあるか」だけではなく、「ABSの仕様」「タイヤ」「ブレーキ」「整備履歴」「転倒歴・事故歴」「実際の乗りやすさ」をセットで比較することが大切です。とくに雨天通勤や高速道路を含めて長く使う予定なら、多少価格差があってもABS付き車を選ぶことには十分な意味があります。


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