バイク整備中に厄介なのが、クランクケースなどで発生するネジ山の潰れです。特にプラスネジの場合、一度なめてしまうとドライバーでの回収が困難になり、焦ってさらに状態を悪化させてしまうケースもあります。この記事では、実際にありがちな「貫通ドライバーでも外れない潰れたネジ」を確実に外すための方法と、その予防策をわかりやすく解説します。
なぜ潰れたネジが抜けないのか?よくある原因
潰れたネジが抜けない最大の原因は、ドライバーとネジ頭の噛み合い不足にあります。押す力が弱すぎる、ドライバー先端が摩耗している、ネジが錆びて固着している、ネジ山が浅くなっているなどが典型です。
また、回す力に対して押す力が足りないと、ネジ頭にドライバーが食い込まず、空回りしてさらにネジ山を崩してしまう悪循環になります。
押す力7:回す力3の原則とは
基本的に潰れたネジには「押す力7:回す力3」のバランスが有効とされています。これは、ドライバーの刃先がネジにしっかり食い込むよう、強く押しながら回す必要があるためです。
特にバイクのクランクケースなどアルミ製の部品では、締めすぎによってネジが固着していることが多く、押しが甘いと一発で潰れてしまいます。手が滑らないようにグローブを使うなど、押す力を確実に伝える工夫も重要です。
それでも外れない場合の実践的な対処法
もし貫通ドライバーや手の力だけで抜けない場合、以下の対処法が有効です。
- インパクトドライバーの使用:金属ハンマーで叩いて衝撃を与えながら回す工具。強固に固着したネジにも効果的。
- ネジすべり止め液の使用:摩擦力を上げてドライバーの噛み込みを助ける専用ケミカル。
- ネジ溝のカット加工:DREMELなどのリューターを使い、マイナス溝を作ることで別のドライバーで回せるようにする。
- ネジザウルスやバイスプライヤーで外周から掴む:ネジ頭が飛び出している場合の最終手段。
特にインパクトドライバーは低価格で導入できる上、ネジ潰れ対策として非常に有効です。ひとつ持っておくと、整備の効率が大幅に上がります。
ネジが抜けた後の補修と再使用の注意点
外れたネジは再使用せず、新品に交換するのが基本です。潰れたネジは金属疲労や変形が発生しており、再利用すれば再度トラブルを招く可能性があります。
また、クランクケース側のネジ穴(メス側)も点検し、タップでネジ山を修正したり、必要に応じてヘリサート加工を施して再生することが重要です。
整備時のネジ潰れを防ぐための予防策
以下のような基本を守ることで、ネジ山潰れのリスクを大きく減らすことができます。
- ドライバー先端の形状を定期的にチェック・交換
- 適切なサイズのドライバーを使用(JIS規格に適合したもの)
- 固着防止のためにカジリ防止グリスを薄く塗布
- 過剰トルクをかけない、トルクレンチで適正管理
「たかがネジ、されどネジ」。整備品質の良し悪しは、こうした基本的な部分で大きく差が出るものです。
まとめ:潰れたネジは焦らず冷静に、適切な工具で確実に対処しよう
クランクケースのネジ山が潰れると一見厄介ですが、原因を理解し適切な方法を用いれば必ず対処可能です。焦らず、押す力を重視し、必要ならインパクトドライバーやネジ抜きツールを活用しましょう。予防にも配慮して、次回からはネジを潰さない丁寧な整備を心がけてください。
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