2000年代前半に登場したホンダのEP3シビックタイプRは、現代のスポーツカーと比べればスペック上では見劣りする部分もあるかもしれません。しかし、それでも多くのファンから熱い支持を受けているのはなぜなのでしょうか?本記事では、EP3がどのように評価され、なぜ今でも現行車と張り合う存在として認識されるのか、その背景を掘り下げます。
EP3シビックタイプRとは?
EP3は2001年に登場した3代目シビックタイプRで、イギリス工場で生産されたホットハッチです。搭載されるエンジンはK20A型の自然吸気2.0Lで、最高出力は215ps。車両重量は1200kg前後と軽量なため、今でもスポーティな走りを楽しめるモデルです。
特に高回転域でのVTEC切り替えによる加速フィールや、ショートストロークの6速MTは、現代のダウンサイジングターボエンジンにはない魅力を持ちます。
RX-8やZN8と比較される理由
RX-8やZN8(GR86)はいずれも後輪駆動のFR車で、エンジン形式もそれぞれ異なる個性を持っています。パワーやトルク特性ではEP3よりも勝っている点も多く、スペックシート上では優位に見えるのは当然です。
しかし、実際の走行フィールや操作感、シャシーの完成度といった要素は単純な数値だけでは測れません。EP3は前輪駆動でありながら、その軽さと高回転型エンジン、シビックらしいシャープな応答性がドライバーに「操る楽しさ」を提供してくれる車なのです。
なぜ「絡まれやすい」のか?
EP3に乗っているとRX-8やGR86のようなFR勢から「絡まれる」ことがあるという話は珍しくありません。これは、EP3が単なる古いハッチバックではなく、過去の名車として認知されているからこそです。つまり、今でも現行のFRスポーツカーと対等に語られる存在であるという、ある意味“敬意”の裏返しでもあります。
また、ドライバーの腕次第で軽量なEP3が大排気量の車を追い詰める場面もあり、「ちょっと試してみたい」と思わせる何かがあるのかもしれません。
ボロでも侮れないEP3の実力
たとえ22万kmオーバーの個体であっても、K20Aの耐久性は非常に高く、オーバーホールせずとも調子を維持している例は多くあります。チューニングパーツの供給も豊富で、維持や補修も比較的容易です。
実際、現行のNDロードスター(RF含む)やZN6(前期型86/BRZ)と比較しても、タイトな峠道やサーキットで互角の勝負をするシーンは珍しくありません。これは、パワーや駆動方式ではなく、車体の軽さ・応答性・ブレーキング性能といった“トータルバランス”が生み出す結果なのです。
過大評価ではなく「再評価」されている
EP3が「過大評価されている」と感じる方もいるかもしれませんが、実際には「過去の名車として再評価されている」側面が大きいです。昨今のスポーツカーは環境規制や安全装備の強化により、どうしても重量や電子制御に頼る場面が増えています。
そうした背景の中で、シンプルでドライバー主体の走りを実現するEP3のような車に注目が集まっているのは自然な流れです。中古車価格の高騰もその証拠といえるでしょう。
まとめ:古き良きスポーツハッチの価値
EP3シビックタイプRは、スペックだけでは語れない魅力を持つ車です。RX-8やZN8など、現行車や他ジャンルのスポーツカーに絡まれるのも、それだけ注目される存在であるからこそ。ノンオーバーホールで20万kmを超えるような個体でも、ドライバーが車と向き合い、きちんとメンテナンスしていれば、現代のスポーツカーと十分に張り合える実力を持っています。
大切なのはスペックではなく、車をどう楽しみ、どれだけ愛しているか。EP3に乗る楽しさこそが、まさにその象徴といえるでしょう。
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