2050年代にHEV・PHEVは新車販売禁止になる?BEV・FCEVだけになるのか日本と海外の政策を解説

新車

自動車の電動化が進むなか、将来的にはガソリン車だけでなく、HEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)まで新車販売できなくなり、BEV(バッテリーEV)とFCEV(燃料電池車)だけになるのではないか、と考える人もいるでしょう。

しかし、少なくとも現在の日本の政策から「2050年代にはHEV・PHEVの新車販売が禁止される」と断定することはできません。日本政府が掲げている2035年の目標では、HEVとPHEVも「電動車」に含まれています。また、自動車政策は日本、EU、米国などでかなり異なるため、世界中が一律にBEV・FCEVだけになるわけでもありません。

この記事では、日本の2035年電動化目標の意味、HEV・PHEVの扱い、2050年カーボンニュートラルとの関係、海外の規制との違いを整理しながら、2050年代の新車市場がどうなる可能性があるのかを解説します。

日本の2035年目標ではHEV・PHEVは禁止対象ではない

まず押さえておきたいのが、日本政府が掲げている「2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%」という目標です。「電動車100%」という言葉だけを見ると、ガソリンエンジンを搭載した車がすべて販売できなくなるようにも見えます。

しかし、経済産業省が示している日本の定義では、電動車にはEV(BEV)、FCV(FCEV)、PHEV、HV(HEV)が含まれます。つまり、エンジンを搭載するHEVやPHEVも電動車です。2035年の日本の目標は「BEV・FCEVだけにする」という内容ではありません。

そのため、例えば2035年にHEVの新車が販売されていたとしても、それだけで日本政府の「新車販売で電動車100%」という目標に反するわけではありません。経済産業省の資料でも、日本の2035年販売目標はEV・PHV・FCV・HEVを含む電動車100%と整理されています。[参照:経済産業省]

2050年カーボンニュートラルと「HEV販売禁止」は同じ意味ではない

日本は2050年カーボンニュートラルの実現を掲げています。ただし、カーボンニュートラルという政策目標と、2050年にHEVやPHEVの販売を法律で禁止することは別の話です。

カーボンニュートラルは社会全体で温室効果ガスの排出と吸収を均衡させる考え方であり、「その年から内燃機関を搭載した乗用車を一台も販売してはいけない」という意味ではありません。実際の自動車政策では、車両からの排出だけでなく、電力、燃料、製造工程、充電・水素供給インフラなど幅広い要素が関係します。

したがって「2050年カーボンニュートラル→2050年からHEV・PHEV禁止→BEV・FCEVのみ」という一直線の理解は正確ではありません。今後、日本政府が新たな規制を導入すれば状況は変わりますが、将来の規制はその時点の技術、エネルギー政策、産業政策などによって決まります。

HEVとPHEVは同じエンジン搭載車でも性格が大きく違う

将来の規制を考える際には、HEVとPHEVをまとめて考えないことも重要です。どちらもエンジンとモーターを使用しますが、外部から充電できるかどうかなどに大きな違いがあります。

種類 主な特徴 エンジン 外部充電
HEV エンジンとモーターを組み合わせて走行 あり 原則なし
PHEV 充電した電力だけでも一定距離を走行可能 あり あり
BEV バッテリーの電力でモーターを駆動 なし あり
FCEV 主に水素から発電してモーターを駆動 なし 通常は水素を充填

例えばPHEVなら、日常の短距離移動を充電した電力だけで行い、長距離ではエンジンも利用するという使い方ができます。そのため、BEVへの完全移行までの過渡的な選択肢として位置付けられることがあります。

一方、HEVは外部充電を必要としないため、充電設備が十分でない地域でも利用しやすいという特徴があります。どの技術がどの程度残るかは、車両性能だけではなく充電設備、水素供給網、電力価格、燃料価格などにも左右されます。

海外では日本より厳しいゼロエミッション化政策もある

日本の政策と海外の政策を混同しないことも重要です。例えばEUでは、2035年以降の新車について非常に厳しいCO2排出削減政策が進められてきました。一方で、制度そのものも固定されたものではなく、技術中立性や産業競争力を考慮した見直しの議論・提案が行われています。

2025年12月に欧州委員会が公表した自動車政策パッケージでは、2035年以降についてメーカーにテールパイプ排出量90%削減を求め、残りをEU製低炭素鋼、e-fuel、バイオ燃料などで補完できるようにする制度変更案が示されています。つまり、欧州でさえ将来制度は技術や産業環境を踏まえて調整され得ます。[参照:欧州委員会]

この点からも、「世界は○年から一律にエンジン車禁止」と単純化するのは適切ではありません。国・地域ごとに対象車種、PHEVの扱い、排出量の計算方法、例外規定などが異なるためです。

2050年代にBEV・FCEVだけになる可能性はあるのか

技術的なシナリオとして、2050年代にBEVやFCEVの割合が現在より大幅に高くなる可能性は十分に考えられます。ただし、「BEV・FCEVの2種類だけになる」と現時点で確定しているわけではありません。

将来の自動車市場を左右するのは、バッテリー価格、航続距離、充電時間、充電インフラ、水素価格、水素ステーション、発電時のCO2排出量、合成燃料、バイオ燃料など多くの要素です。例えばバッテリー技術が急速に進歩してBEVの価格と利便性が大幅に改善すれば、規制で禁止されなくても市場原理によってHEVの販売が減る可能性があります。

反対に、用途によってはPHEVや別の低炭素技術が合理的だと判断される可能性もあります。2050年代までには20年以上あるため、現在普及していない新しい電池や燃料技術が実用化されていることも十分考えられます。

「販売禁止」と「市場からほぼ消える」は区別して考える

将来予測で特に注意したいのが、法的な販売禁止と、市場で売れなくなって事実上姿を消すことの違いです。政府がHEVを禁止していなくても、BEVのほうが安く維持費も低くなれば、消費者がBEVを選ぶことでHEVの新車がほとんど販売されなくなる可能性があります。

逆に、政策としてBEVを強く推進しても、充電インフラや電力網、車両価格などの課題が残れば、当初の政策スケジュールが変更される可能性があります。実際、自動車の環境規制は各国で技術開発や市場動向を確認しながら見直されることがあります。

したがって2050年代の自動車を予想するときは、「法律上販売できるか」と「実際にメーカーが販売しているか」を分けて考える必要があります。

中古のHEVやPHEVまで乗れなくなるとは限らない

もう一つ誤解されやすいのが「新車販売規制」と「既存車の使用禁止」です。仮に将来、ある種類の車について新車販売が制限されたとしても、それだけで既に所有している車が直ちに公道を走れなくなるわけではありません。

例えば「2035年以降の新車」を対象とする制度なら、基本的に問題となるのは新規に販売・登録される車です。中古車の流通や既存車の保有・走行については別の制度として考える必要があります。

そのため「新車販売がゼロエミッション車中心になる」というニュースを見て、「今持っているハイブリッド車がその年から使えなくなる」と解釈しないよう注意が必要です。

まとめ:日本ではHEV・PHEVが2050年代に禁止されるとは現時点で決まっていない

日本政府は2035年までに乗用車の新車販売を電動車100%とする目標を掲げていますが、ここでいう電動車にはHEV・PHEV・BEV・FCEVが含まれています。そのため、2035年時点で日本の新車がBEVとFCEVだけになるという政策ではありません。

2050年カーボンニュートラルという目標についても、それ自体がHEV・PHEVの新車販売禁止を意味するものではありません。2050年代にどのパワートレインが主流になっているかは、今後の政策だけでなく、バッテリー、水素、合成燃料、充電インフラ、車両価格などの進歩によって大きく変わります。

現時点では「2050年代にはHEV・PHEVが禁止され、BEV・FCEVの2車種だけになる」と決まっているわけではない、というのが重要なポイントです。長期的な自動車政策について判断するときは、数十年先の予測を確定事項として扱わず、経済産業省など政府機関が公表する最新の目標・制度を確認するのが確実です。

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