エンジンオイルの粘度表示「5W-30」の正しい読み解き方とその意味

車検、メンテナンス

エンジンオイルの「5W-30」などの表記を見て「なぜ低温で5、高温で30なのに、オイルは熱で柔らかくなるのか」と疑問に思う方は少なくありません。実は、この表記には粘度の“変化の仕方”を示す重要な情報が含まれています。この記事では、エンジンオイルの粘度表示の見方と、そこに隠された技術的な意味をわかりやすく解説します。

「5W-30」とは何を意味するのか?

まず、「5W-30」のような表記は、SAE粘度分類と呼ばれる国際的な規格に基づいており、「W」はWinter(冬)を意味します。「5W」は低温時(−30℃前後)におけるオイルの流動性を、「30」は高温(100℃前後)時におけるオイルの粘度を表します。

つまり、「5W」とは寒い朝でもオイルが固まりにくく、エンジンがかかりやすいということ。「30」はエンジンが高温になっても適切な粘度を保ち、金属摩耗を防ぐという意味になります。

「数字が高い=硬いオイル」は正しい?

確かに数値が大きいほど粘度は高くなりますが、注意したいのは「温度条件が異なる」点です。たとえば、「5W」は−30℃付近、「30」は100℃時点の粘度を示しているため、直接的な比較はできません

正確には、それぞれの温度帯において「求められる粘度特性を保っているかどうか」が重要です。5Wのオイルは低温でも流動性が保たれ、30のオイルは高温でも潤滑性能が落ちにくい設計になっています。

マルチグレードオイルの技術とは

「5W-30」のようなオイルは、マルチグレードオイルと呼ばれ、粘度指数向上剤という添加剤によって、温度による粘度の変化を抑える技術が使われています。

たとえば、冷間時には流動性を高め、エンジン始動時の負担を軽減。一方、エンジンが温まったあとは適度な粘度を維持して、シリンダーやピストンを保護します。これにより、1種類のオイルでオールシーズン対応が可能となります。

具体例で理解する粘度の違い

「10W-40」のオイルと「5W-30」のオイルを比較すると、前者は低温始動性でやや劣るが高温での保護性能が高い傾向があります。
一方、「0W-20」のようなオイルは低温に非常に強く、燃費性能も高い反面、高温環境ではやや保護力が落ちる傾向があります。

このように、オイル選びは車種や走行環境、季節などに応じたバランスが重要です。

「柔らかい」か「硬い」かではなく、温度ごとの粘度安定性がカギ

「5W-30」という表記を「寒い時に柔らかく、熱い時に硬い」と誤って解釈してしまう方が多いですが、実際は各温度帯で「適切な流動性・粘度を保つ」ことを意味しています。

このように、オイルは単に温めると柔らかくなるわけではなく、必要に応じて粘度をコントロールする性能が求められます。

まとめ:粘度表示は性能の“幅”を示す指標

エンジンオイルの「5W-30」などの表記は、低温から高温までの粘度の変化を適切に制御している証拠です。数字が高い=硬い、低い=柔らかいという単純な話ではなく、「温度条件ごとに最適な粘度を保てるか」がポイントです。

愛車に合ったオイル選びの参考として、粘度表示の意味を正しく理解しておくことは非常に重要です。

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