アメリカのGR86×頭文字DのCMが日本で放送されなかった理由は?土屋圭市登場の「FasterClass」を解説

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トヨタGR86には、アニメ「頭文字D」とコラボし、藤原拓海やAE86、さらに「ドリキン」こと土屋圭市氏まで登場する非常に印象的なプロモーション映像があります。日本車、日本の漫画・アニメ、日本人ドライバーを題材にしているため、「なぜ日本ではこのCMを流さなかったのか」と疑問に感じる人も少なくありません。

しかし、この映像について「内容が過激だから日本では放送禁止になった」「ドリフト表現が日本のCM規制に引っかかった」といった公式発表は確認できません。むしろトヨタ米国法人の公式資料を見ると、最初からアメリカ市場向けに企画されたデジタル広告キャンペーンだったことが大きな理由と考えるのが自然です。

また、一般に「アメリカのCM」と呼ばれていますが、頭文字Dとのコラボ映像は日本のテレビCMをそのまま海外へ転用したものではありません。米国向けGR86キャンペーン「FasterClass」の一部として、アメリカのターゲット層に合わせて制作されたコンテンツです。

話題の映像は「GR86 × Initial D Hachi-Roku Trilogy」

話題になった映像は、2022年モデルのGR86を宣伝する米国トヨタの「FasterClass」キャンペーンに含まれる「GR86 x Initial D Hachi-Roku Trilogy」です。

トヨタ・モーター・ノース・アメリカの公式発表によると、広告会社Intertrendとともに「頭文字D」のクリエイターとコラボし、AE86からGR86へ続く86の歴史を表現するシリーズとして制作されました。[Toyota USA公式参照]

シリーズでは藤原拓海がAE86トレノを走らせ、新型GR86との対決へ発展します。そして最終的にGR86を操る人物として土屋圭市氏が登場する構成になっています。監督Annis Naeem氏が公開したディレクターズカットでも、この3部作が2022年GR86のために制作されたことが確認できます。

最大の理由は「アメリカ向け広告として企画された」こと

日本で流れなかった理由を考えるうえで最も重要なのが、トヨタ自身によるキャンペーンの説明です。Toyota USAは「FasterClass」について、アメリカの幅広い文化的背景を持つ消費者を意識して制作された統合キャンペーンだと説明しています。

特に頭文字Dを使ったIntertrendの企画については、日本のスポーツカー文化や漫画・アニメが、アジア系アメリカ人が日本車文化へ興味を持つ入口の一つだったという明確なマーケティング背景が公式資料に記されています。[Toyota USA公式参照]

つまり、日本人に向けて「日本文化として頭文字Dを見せる」企画ではなく、アメリカ市場で日本車文化に親しんできた層へGR86を訴求する企画だったわけです。そのため、日本で同じ映像をテレビCMとして展開しなかったこと自体は不思議ではありません。

実は「アメリカでテレビ放送されたCM」とも限らない

もう一つ注意したいのが、「アメリカではテレビで放送されたのに、日本だけ放送されなかった」とは限らない点です。FasterClassキャンペーンはデジタル動画、SNS、Web広告、印刷媒体、イベントなどを組み合わせた施策として展開されました。

Toyota USAは配信先としてYouTube、Hulu、Amazon、Reddit、Facebook、Instagram、TikTok、Twitchなど多数のデジタル媒体を挙げています。つまり頭文字Dシリーズも、現代的なオンライン広告・ブランドコンテンツとして見るほうが実態に近いものです。

同時期の別企画「The Focus Group」では、4分のフルバージョンをYouTube限定で公開するとトヨタが明記しています。[Toyota USA公式参照] このことからも、米国GR86のキャンペーン自体がテレビCMだけを前提にしたものではなかったことが分かります。

「日本ではドリフトCMを流せないから」は確認されていない

映像を見ると、峠道でAE86とGR86が激しく走り、ドリフトする場面もあるため、「日本では危険運転を助長すると判断されたのでは」と考えたくなります。しかし、今回確認できるトヨタの公式資料には、そのような理由で日本展開を断念したという説明はありません。

自動車広告では安全性への配慮や各国の広告表現、媒体ごとの審査基準が影響することはあります。しかし、個別のGR86×頭文字D企画について証拠がない以上、「日本の規制で放送禁止になった」と断定するのは適切ではありません。

そもそもアニメーション上の走行表現であり、アメリカでも「公道で危険運転してよい」という趣旨ではありません。トヨタのキャンペーン自体はGR86のハンドリング性能やモータースポーツ由来のキャラクターを訴求するものとして構成されています。

著作権の問題で日本だけ使えなかった可能性は?

頭文字Dという日本作品を使用しているため、「日本では版権の関係で流せなかったのでは」と推測されることもあります。しかし、これについても日本で使用できなかったと示す公式情報は確認できません。

制作関係者が公開しているクレジットには、Initial Dのライセンスとして講談社などが記載されており、正式なライセンスを受けて制作された企画であることが分かります。またToyota USA自身も「頭文字D」のクリエイターとのコラボレーションであることを公表しています。

もちろん広告コンテンツのライセンス契約には地域・期間・媒体などの条件が設定されることがあります。しかし、その契約内容は公開されていないため、「権利上の理由で日本では放送不能だった」とまで言うことはできません。

なぜアメリカで「頭文字D」が広告として強かったのか

頭文字Dは、日本では86好きには説明不要ともいえる作品ですが、アメリカでも日本車チューニング文化、JDM、ドリフト文化と強く結び付いて知られてきました。

Toyota USAも公式に、頭文字Dなどのアニメ・漫画がアジア系アメリカ人を日本のスポーツカー文化へ導いた重要な入口だったと説明しています。旧AE86を知るファンへ、新型GR86を「86の次世代」として見せるには非常に相性のよい題材だったわけです。

さらに土屋圭市氏は実際のドリフト文化とAE86の歴史を象徴する人物です。Toyota USAも後年、AE86について土屋氏ら日本のトップドリフトドライバーが使用したことで評価を確立したと紹介しています。[Toyota USA公式参照]

土屋圭市が登場する演出にも意味がある

この3部作では、単純にAE86とGR86を競争させるだけでなく、最後にGR86のドライバーが土屋圭市氏だったことが明かされます。これは実車のAE86文化とフィクションの頭文字Dをつなぐ演出になっています。

制作関係者による作品紹介では、第1話で藤原拓海がGR86と遭遇し、第2話で追走、第3話で対決した後に相手が土屋氏だと判明する構成が説明されています。[制作関係者の作品紹介参照]

土屋氏は頭文字Dとも以前から深い関係があり、作品の走行表現にも関わってきた人物です。そのため「AE86の伝説をGR86へ受け継ぐ」という広告のメッセージを象徴するキャスティングだったと理解できます。

日本ではGR86を別のマーケティングで売っていた

GR86はもちろん日本でも2021年10月28日に発売されています。日本のトヨタは発売時、SUBARUとの共同開発、「GRらしい走りの味」、富士スピードウェイでのファンイベントなどを前面に出して展開しました。[トヨタ自動車公式参照]

これは米国の「FasterClass」と方向性が異なります。日本では86自体の認知度がすでに高く、モータースポーツやGRブランドとの直接的な関係を訴求できます。一方、米国ではJDM、アニメ、ドリフト文化を入口にGR86へ興味を持たせる企画が有効だったと考えられます。

同じ世界戦略車でも、国ごとに広告代理店、ターゲット、メディア、訴求方法を変えるのは一般的です。海外で制作された広告が、そのまま日本へ逆輸入されるとは限りません。

まとめ|日本で放送禁止になったのではなく、米国市場向けの企画だった可能性が高い

GR86と頭文字D、土屋圭市氏がコラボした映像は、Toyota USAが2022年モデルGR86のために展開した「FasterClass」の一環として制作された「GR86 x Initial D Hachi-Roku Trilogy」です。

日本で流れなかった理由についてトヨタが「規制」「危険運転表現」「放送禁止」などを理由として公表した事実は確認できません。公式情報から確実に分かるのは、この企画がアメリカ市場、とりわけ日本のスポーツカーやアニメ文化に親しみのある層を意識して企画され、デジタルやSNSを中心とする米国向けキャンペーンとして展開されたということです。

そのため「日本では放送できなかった」というより、「そもそも日本向けテレビCMとして作られた作品ではなかった」と捉えるのが最も妥当です。日本のGR86には日本独自の販売・プロモーション戦略があり、米国では頭文字Dという日本文化をあえて海外向けの強力なマーケティング資産として活用した、という違いが背景にあります。

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