バイクのタイヤを交換するとき、純正がラジアルタイヤなのに、同じようなサイズのバイアスタイヤが安く販売されていることがあります。「ホイールに入るなら使えるのでは?」と思うこともありますが、タイヤはサイズだけでなく、ラジアル・バイアスという構造まで含めて車体との組み合わせが設計されています。
特にホンダVTR250は少しややこしい車種です。FI(PGM-FI)モデルだからすべてラジアル指定というわけではなく、2009年から2013年頃までのFI仕様は純正がバイアスタイヤ、2014年の仕様変更からラジアルタイヤが採用されています。したがって、「FIのVTR250」という情報だけではバイアスタイヤが適合するか判断できません。
2014年以降のラジアル指定VTRでは、ホンダがラジアルタイヤ採用に合わせてリアタイヤの扁平率まで140/70から140/60へ変更し、操縦安定性やブレーキ性能などを調整しています。そのため、単純に幅が同じだからという理由で従来型のバイアスタイヤへ変更することは推奨されません。この記事では、VTR250の年代による指定タイヤの違いと、ラジアル指定車へバイアスタイヤを装着する場合の問題点を整理します。
- まず結論:ラジアル指定車をバイアスへ変更するのは基本的におすすめできない
- VTR250は「FIモデル=ラジアル」ではない
- 2014年モデルからVTR250はラジアルタイヤへ変更された
- ホンダはなぜ2014年からラジアルへ変更したのか
- 「サイズが合うバイアス」を選んでも同じではない
- 2014年以降VTRではリアタイヤの「70」と「60」の違いも重要
- 2014年以降VTR250のメーカー指定サイズ
- 後期VTR250用のラジアルタイヤは存在する
- タイヤ店のスタッフが止めた理由は合理的
- 2009~2013年のFI車なら逆にバイアスが純正指定
- 自分のVTRがどちらなのか簡単に確認する方法
- 前だけラジアル・後ろだけバイアスという組み合わせも避けたい
- 価格を抑えたい場合も「VTR250適合」から選ぶ
- まとめ:後期VTRは年式で判断。2014年以降ならラジアル指定を守るのが基本
まず結論:ラジアル指定車をバイアスへ変更するのは基本的におすすめできない
タイヤメーカーのブリヂストンは、車両メーカーが指定した構造がラジアル・バイアス・ベルテッドバイアスのいずれかである場合、指定構造とは異なるタイヤへの変更は推奨できないと明確に案内しています。
理由として、タイヤの断面形状が変化することや、車体のサスペンション・フレームとのバランスが崩れる可能性が挙げられています。つまり、リム径やタイヤ幅が同じでも、ラジアルとバイアスを自由に置き換えてよいわけではありません。
ホンダもVTRの取扱説明書で、タイヤ交換時には指定タイヤを使用し、指定以外のタイヤは操縦性や走行安定性へ悪影響を与える可能性があるため使用しないよう案内しています。
VTR250は「FIモデル=ラジアル」ではない
VTR250で混乱しやすいのがここです。VTR250は2009年のモデルチェンジでPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)が採用されましたが、この時点では純正タイヤはまだバイアスでした。
ホンダのVTR250取扱説明書では、前輪が110/70-17M/C 54H、後輪が140/70-17M/C 66Hで、タイヤタイプは「バイアス、チューブレス」と記載されています。指定タイヤとしてブリヂストンG601F/G602が案内されています。
つまり2009~2013年頃のFI仕様VTR250なら、バイアスタイヤであること自体は異常ではありません。むしろメーカー指定がバイアスです。
2014年モデルからVTR250はラジアルタイヤへ変更された
大きな変更が行われたのが2014年です。ホンダは2014年のVTR/VTR Type LD/VTR-Fでラジアルタイヤを採用したことを公式資料で発表しています。
ホンダによると、この変更では前輪を110/70-17から110/70R17へ、後輪を140/70-17から140/60R17へ変更しています。「R」が入っているものがラジアル構造です。
| VTR250の世代 | フロント | リア | 構造 |
|---|---|---|---|
| 2013年頃まで | 110/70-17 54H | 140/70-17 66H | バイアス |
| 2014年以降 | 110/70R17 54H | 140/60R17 63H | ラジアル |
したがって、いわゆる「後期VTR」が2014年以降の仕様を指しているのであれば、メーカー指定はラジアルです。
[参照] Honda「VTR/VTR Type LD/VTR-F ラジアルタイヤの採用」
ホンダはなぜ2014年からラジアルへ変更したのか
2014年の変更は、単に「高価なタイヤへ変更した」というものではありません。ホンダはラジアルタイヤの剛性とグリップ感を利用して車体性能を改善しています。
公式資料では、ラジアル化によってブレーキフィーリング、快適性、操縦安定性を向上させたと説明しています。また、リアタイヤの扁平率を70から60へ変更したことで外径が小さくなり、ローレシオ化したのと同様の効果によって発進・追越し加速性能も向上させています。
つまり2014年以降のVTR250では、タイヤだけ単独で変更したのではなく、ラジアル構造とタイヤ形状を含めて車両の走行特性を設定しているということです。
「サイズが合うバイアス」を選んでも同じではない
タイヤ選びでは「110/70-17だから同じ」「140幅だから入る」という見方をしがちですが、サイズ表記には重要な意味があります。
ブリヂストンによると、バイアスタイヤは一般的に「110/70-17」のように構造部分がハイフンで表記され、ラジアルタイヤは「110/70R17」のようにRで表記されます。この1文字の違いは単なる商品名ではなく、内部構造の違いを表しています。
また、タイヤメーカーは同じ呼び寸法であっても実際の外径やタイヤ幅が異なる場合があり、新車装着タイヤと同じハンドリングになるとは限らないと注意喚起しています。
2014年以降VTRではリアタイヤの「70」と「60」の違いも重要
2014年以降のVTR250では、単純にバイアスからラジアルへ変更しただけでなく、リアタイヤが140/70から140/60になっています。この違いは意外に大きいものです。
タイヤ幅を140mmとした場合、140/70のサイドウォール高は理論上約98mm、140/60では約84mmです。前後を合わせたタイヤ外径では単純計算で約28mmの差が生じます。
そのため2014年以降のVTRへ「140/70-17のバイアスタイヤならホイール径も幅も合う」と取り付けると、純正140/60R17よりリアの車高やタイヤ外径が変化します。結果として、車体姿勢、旋回特性、加速感などにも影響する可能性があります。
2014年以降VTRでは「ラジアルかバイアスか」だけでなく、「140/60か140/70か」というサイズ差も重要です。
2014年以降VTR250のメーカー指定サイズ
ホンダが公開している後期VTRの主要諸元では、前輪110/70R17M/C 54H、後輪140/60R17M/C 63Hとなっています。
したがって交換タイヤを探す場合は、まずこのサイズ・構造・荷重指数・速度記号を基準にします。「17インチで幅が110と140なら大丈夫」といった選び方では不十分です。
| 位置 | 2014年以降の指定サイズ |
|---|---|
| フロント | 110/70R17M/C 54H |
| リア | 140/60R17M/C 63H |
後期VTR250用のラジアルタイヤは存在する
「サイズが特殊なのでバイアスしかない」と思う場合でも、2014年以降VTR250専用・適合として販売されているラジアルタイヤがあります。
代表例がダンロップK510です。ダンロップ公式サイトでは、フロント110/70R17M/C 54H、リア140/60R17M/C 63Hの両方について「ホンダVTR250(’14~)用」と明記しています。
したがって2014年以降のVTRで「合うラジアルがないからバイアスにする」前に、VTR250の年式を伝えてタイヤメーカーの車種適合表から検索してもらうのがおすすめです。
タイヤ店のスタッフが止めた理由は合理的
2014年以降のラジアル指定VTRへバイアスタイヤを取り付けようとしていたのであれば、タイヤ店のスタッフが取り付けを止めたことには十分な理由があります。
ショップ側は、サイズが物理的にホイールへ装着できるかだけではなく、車両メーカー・タイヤメーカーの適合情報、操縦安定性、速度・荷重能力などまで考慮してタイヤを選定します。
特に二輪車はタイヤ断面形状の変化が旋回時の挙動へ直接影響します。四輪車よりもタイヤの形状と車体の傾きが深く関係するため、「物理的に入るから付けてください」と頼まれても店側が断ることは不自然ではありません。
2009~2013年のFI車なら逆にバイアスが純正指定
一方、所有しているVTR250が2014年より前のFIモデルなら話が変わります。2009年以降でも、2014年の仕様変更より前なら純正はバイアスタイヤです。
この世代ではフロント110/70-17M/C 54H、リア140/70-17M/C 66Hが指定され、ホンダ純正装着としてブリヂストンG601F/G602が設定されています。
また、ブリヂストンのBT-39には110/70-17M/C 54Hと140/70-17M/C 66Hがあり、同社の適合情報にもVTRが掲載されています。つまり「FIだからラジアルを履かなければならない」という理解は正しくありません。
自分のVTRがどちらなのか簡単に確認する方法
もっとも簡単なのは、現在装着されている純正指定サイズまたは取扱説明書を確認する方法です。
| リア指定サイズ | おおよその仕様 |
|---|---|
| 140/70-17 | 従来型・バイアス仕様 |
| 140/60R17 | 2014年以降・ラジアル仕様 |
タイヤ側面に「140/60R17」と書いてあればRが入っているためラジアルです。「140/70-17」のようにRがなくハイフンになっている場合はバイアス構造です。
ただし前オーナーが指定外サイズへ交換している可能性もあります。中古車の場合は現在装着されているタイヤだけで決めず、車台番号・年式からホンダ販売店または取扱説明書で確認すると確実です。
前だけラジアル・後ろだけバイアスという組み合わせも避けたい
「後輪だけ欲しいサイズがないのでバイアスにする」といった前後異構造の組み合わせも、自己判断で行うのはおすすめできません。
フロントとリアはそれぞれ役割が異なりますが、車体全体としてハンドリング・安定性が成立するよう組み合わせて開発されています。タイヤメーカーも、車両メーカー指定と異なる構造への変更や、推奨されていない前後パターンの組み合わせでは十分な性能が発揮されない可能性があるとしています。
特にラジアル前提の車体へ片側だけバイアスを装着すると、タイヤ剛性やたわみ方のバランスが純正状態から変わります。前後セットでメーカーが適合を確認している製品を選ぶほうが安心です。
価格を抑えたい場合も「VTR250適合」から選ぶ
ラジアルタイヤはバイアスより価格が高い場合があり、250ccのVTRで街乗り中心なら「そこまで高性能なタイヤはいらない」と感じることもあります。
しかし、ラジアルにはサーキット向けの高価なハイグリップ製品だけでなく、街乗り・ツーリングを対象にした製品もあります。タイヤ店では「サーキットには行かない」「通勤とツーリング中心」「価格を抑えたい」と用途を伝え、2014年以降VTR250にメーカー適合している中から安価な選択肢を探してもらうのが安全です。
タイヤは数年間使用する可能性がある部品で、前後2本しか路面と接していません。数千円から1万円程度の価格差だけを理由に、メーカー指定構造を変更するメリットは慎重に考えたほうがよいでしょう。
まとめ:後期VTRは年式で判断。2014年以降ならラジアル指定を守るのが基本
ラジアル指定のバイクへ同じようなサイズのバイアスタイヤを装着することは、物理的に取り付けられる場合があっても基本的にはおすすめできません。ブリヂストンも、車両メーカー指定と異なるタイヤ構造への変更は、タイヤ断面形状やサスペンション・フレームとのバランスに影響するため推奨していません。
ただし、VTR250については「FIだからラジアル」というわけではない点が重要です。2009年から2013年頃までのFI仕様では、フロント110/70-17、リア140/70-17のバイアスタイヤが純正指定です。
2014年の仕様変更ではホンダが正式にラジアルタイヤを採用し、フロント110/70R17、リア140/60R17へ変更しました。ホンダはこの変更によってブレーキフィーリング、操縦安定性、グリップ感、加速性能などを向上させたと説明しています。
したがって、所有しているVTR250が2014年以降のモデルなら、メーカー指定通り110/70R17M/C 54H・140/60R17M/C 63Hのラジアルタイヤを選ぶのが基本です。ダンロップK510など、現在もVTR250(2014年~)用としてメーカーが明記しているラジアルタイヤがあります。
一方、2013年以前のFIモデルならバイアスが純正なので、適切なサイズ・荷重指数・速度記号・リム適合を満たした車種適合タイヤを選べます。まず車検証の初度登録年だけでなく車台番号から年式・仕様を確認し、取扱説明書に記載された指定サイズを見ると判断しやすいでしょう。
つまり、タイヤ店で止められた場合には「バイアスだから全部ダメ」と考えるのではなく、自分のVTRが2014年以降のラジアル仕様なのか、それ以前のバイアス仕様なのかを最初に確認することがポイントです。2014年以降のラジアル仕様なら、サイズが入りそうという理由だけでバイアスへ変更せず、VTR250への適合が確認されたラジアルタイヤから選ぶのが安全です。


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