旧車やバイクに長く携わっていると、プラグの焼け具合からエンジン状態を読む経験が自然と身につきます。今回は「イグニッションコイルの劣化による火花の弱さ」が、スパークプラグの焼け具合に与える影響について、整備経験をもとに詳しく解説します。
イグニッションコイルの役割とは?
イグニッションコイルは、12Vのバッテリー電圧を数万ボルトに昇圧し、スパークプラグへと供給します。この高電圧がプラグギャップを飛び、混合気に点火します。
そのため、イグニッションコイルの劣化=点火エネルギーの低下となり、燃焼効率の低下や失火、プラグの汚れに繋がることがあります。
火花が弱いとプラグは黒くなるのか?
火花が弱まると混合気が完全に燃焼せず、カーボンがプラグに付着しやすくなります。この状態が続くと、電極が黒くすすけたようになり、いわゆる「くすぶり(カーボンフォーリング)」が発生します。
これは点火エネルギー不足が主な原因ですが、その他にもキャブセッティングの濃さや、アイドリング時間の長さなども複合的に関係します。
車検を通る排ガス=燃調が合っているとは限らない?
確かに車検のCO/HC基準をクリアしている場合、極端に濃い混合気ではないことが多いです。しかし、排ガステストは主にアイドリング〜中低速域での計測であり、エンジンの全域状態を示すわけではありません。
つまり、検査に通る状態であっても、点火状態が万全でないことは十分に起こり得るのです。
イグニッションコイルの劣化サインとは
以下のような症状があれば、コイルの劣化を疑うべきです。
- プラグが黒くススで汚れる
- 加速時にノッキングや息つき
- アイドリング時の回転不安定
- 点火プラグの寿命が短い
これらが複数該当する場合、点火系統のチェックや交換をおすすめします。
燃調か?点火か?判断するための実例
ある空冷VWエンジンにて、4本すべてのプラグが黒くなっていた事例があります。オーナーは燃料が濃いと判断しましたが、実際はコイルの出力低下が原因で、交換後は焼け色が正常(キツネ色)になり、始動性や加速も改善しました。
このように、「燃料が濃い=燃調が悪い」と決めつけるのではなく、点火エネルギー不足の可能性も含めて診断するのが重要です。
まとめ:プラグの焼け具合には火花の強さも影響する
イグニッションコイルの劣化は、火花のエネルギーを低下させ、結果的にプラグのくすぶりやカーボン蓄積につながります。車検を通っていても、燃調や点火系の状態が万全とは限りません。
燃調だけに目を向けず、点火系統(特にコイルやコード類)のチェックを並行して行うことが、快調なエンジンコンディション維持のカギになります。
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