軽ターボのMT車として比較されやすいHonda N-ONE RS 6MT(JG3)とコペン GR SPORT 5MT(LA400K)。どちらも最高出力は47kW(64PS)ですが、最大トルクはN-ONE RSが104N・m、コペン GR SPORTが92N・mと約13%の差があります。
数字だけを見るとN-ONE RSのほうが明確に強力ですが、実際の加速感はエンジントルクだけで決まりません。ギア比、最終減速比、アクセル特性、車体、着座位置、屋根を開けたときの速度感まで含めると、コペンを「N-ONEより遅くて物足りない車」と単純には評価できません。2台は同じ軽ターボMTでも、楽しさの方向がかなり異なります。
N-ONE RSとコペンGR SPORTのスペックを比較
HondaのN-ONE RS 6MTは658cc直列3気筒ターボのS07B型を搭載し、最高出力47kW(64PS)/6,000rpm、最大トルク104N・m(10.6kgf・m)/2,600rpmです。6MT車の車両重量は840kg、WLTCモード燃費は21.6km/Lと公表されています。[参照]
コペン GR SPORT 5MTは658cc直列3気筒ターボのKF型で、最高出力47kW(64PS)/6,400rpm、最大トルク92N・m(9.4kgf・m)/3,200rpmです。5MT車は850kg、WLTCモード燃費は18.6km/Lです。トヨタ版コペンGR SPORTの公式諸元でも同じパワートレーン数値を確認できます。[参照]
| 項目 | N-ONE RS 6MT | コペン GR SPORT 5MT |
|---|---|---|
| 最高出力 | 64PS / 6,000rpm | 64PS / 6,400rpm |
| 最大トルク | 104N・m / 2,600rpm | 92N・m / 3,200rpm |
| 変速機 | 6MT | 5MT |
| 車両重量 | 840kg | 850kg |
| WLTC燃費 | 21.6km/L | 18.6km/L |
車重はほぼ同じなので、単純なエンジン性能ではN-ONE RSが有利です。特に最大トルクが12N・m大きいうえ、そのピークが600rpm低いため、低~中回転からアクセルを踏んだときの余裕はN-ONEのほうが感じやすいでしょう。
12N・mのトルク差は実際に体感できる?
104N・mと92N・mの差は約13%です。車重がほぼ同じなので、同じようなギア・回転数・アクセル開度で比較すれば、N-ONE RSのほうが低中速で力強く感じる可能性は十分あります。特に高いギアのまま再加速する場面や坂道では差を認識しやすいでしょう。
たとえば市街地で3速に入れたまま2,500~3,000rpm付近からアクセルを踏み増した場合、最大トルクが2,600rpmで発生するN-ONE RSは扱いやすい領域です。コペンは最大トルク発生が3,200rpmなので、より回転を上げたり1段下のギアを使ったりすることで本来の力を引き出す性格になります。
ただし、この差が「コペンは明らかに遅くてストレスがたまる」というほど大きいとは限りません。最高出力は双方64PSで車重も約10kg差しかないため、MTで適切なギアを選びエンジンを回して走る場面では、カタログ上の最大トルク差ほど決定的な差にならないこともあります。
実はギア比まで見るとN-ONEのトルク値だけでは比較できない
タイヤを実際に回す力はエンジンの最大トルクそのものではなく、選択しているギアの変速比と最終減速比によって増幅されます。N-ONE RSの6MTは1速3.571、2速2.227、3速1.529、最終減速比4.875です。Hondaは1~5速をクロスレシオ化し、小排気量エンジンのパワーとトルクを活用する設計だと説明しています。[参照]
一方、コペン GR SPORT 5MTは1速3.181、2速1.842、3速1.250、最終減速比5.545です。エンジントルク自体はN-ONEより小さいものの、比較的大きな最終減速比によって駆動力を稼ぐ設計になっています。[参照]
最大トルク値を使った単純計算では、1速の総減速比はN-ONEがおよそ17.4、コペンがおよそ17.6と近くなります。ただしそこへエンジントルクを掛ければN-ONE側がなお有利です。この計算はタイヤ径や実際のトルクカーブ、駆動損失を無視した参考値ですが、N-ONEの低中速トルクの太さはカタログ上だけの錯覚ではないことが分かります。
それでもコペンが遅く感じるとは限らない理由
ドライバーが感じる「速さ」は加速Gだけではありません。コペンは全高1,280mm、ホイールベース2,230mmの2シーターオープンカーで、着座位置もN-ONEとは大きく異なります。N-ONEは全高1,545mm、ホイールベース2,520mmの4人乗りです。同じ速度でも地面に近いコペンのほうが速度感を強く感じやすくなります。
さらに屋根を開ければ、風、音、周囲の景色が直接入ってきます。たとえば60km/hで走っていても、クローズドボディのハイトワゴン系モデルとオープン2シーターでは体感速度がかなり違います。そのため絶対的な加速性能でN-ONEが上でも、運転の刺激までN-ONEが上になるとは限りません。
コペン GR SPORTには専用チューニングのショックアブソーバー、コイルスプリング、フロント・リヤスタビライザー、ブレース、BBS製ホイールなど走りを意識した装備があります。[参照] したがって、直線加速のトルクだけでなく、低い目線でMTを操作しながら曲がる楽しさを含めて評価したい車です。
N-ONE RSは日常域、コペンは趣味性で魅力が出やすい
N-ONE RSは6MTを備えながら4人乗りで荷物も載せやすく、燃費性能も良好です。Honda SENSINGなどの運転支援装備もあり、「日常車として便利なのにMTターボを楽しめる」という点が大きな強みです。
コペンは2人乗りで積載性にも制約があり、燃費もN-ONE RSより低めです。実用車としてスペック表だけを採点すれば、N-ONE RSのほうが合理的に見えるのは自然です。
しかし、コペンを選ぶ最大の理由は実用性能の高さではなく、電動開閉式ルーフを備えた軽オープンスポーツをMTで楽しめることです。すでに実用性の高い車を所有していて、追加する車に「オープンカーならではの体験」を求めるなら、N-ONEと用途が重複しにくい点はむしろメリットになります。
CR-ZやN-ONEを所有している人ほどコペンは試乗で判断したい
普段からトルクの太いN-ONE RSを運転している人がコペンへ乗り換えると、発進後や高いギアからの再加速で「N-ONEのほうが楽に前へ出る」と感じる可能性はあります。その感覚自体はカタログスペックとも矛盾しません。
一方、MT車に慣れている人なら、コペンでは必要に応じて1段下げて回転数を上げることで弱点を補えます。むしろ5MTを積極的に使ってKFターボを回すことを楽しめるかどうかが、満足度を左右します。
購入前の試乗では発進加速だけでなく、40~60km/h程度からの2速・3速再加速、坂道、シフトフィール、クラッチのつながり、着座位置、ルーフを開けた状態を確認するのがおすすめです。短い直線で「どちらが速いか」を調べるより、普段使う速度域で「もう少しトルクが欲しい」と感じるかを見るほうが実際の購入判断に役立ちます。
まとめ:N-ONEのほうがトルクは明確に太いが、コペンの価値は別のところにある
N-ONE RS 6MTの104N・m/2,600rpmに対して、コペン GR SPORT 5MTは92N・m/3,200rpmです。車重もほぼ同じなので、低中回転での加速や高いギアからの再加速ではN-ONE RSのほうが力強く感じる可能性が高いと考えられます。12N・mという差は、まったく体感できないほど小さな差ではありません。
ただしコペンも最終減速比を含めたギアリングで駆動力を確保しており、適切なギアを選んで回せば軽ターボMTらしい走りを楽しめます。同じ64PS、ほぼ同じ850kg前後でも、コペンは低い着座位置、短いホイールベース、GR SPORT専用の足回り、そしてオープン走行というN-ONEにはない体験があります。
したがって、N-ONE RSの代替車としてコペンを見ると実用性や低速トルクに不満を感じる可能性がありますが、N-ONEとは役割の違う趣味車・オープン2シーターとして増車するなら、スペック上のトルク差だけを理由に候補から外す必要はないでしょう。最終的にはN-ONEに乗って販売店へ行き、同じ日にコペン5MTを試乗して低中速の再加速を比較するのが最も確実です。

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