自動車のサスペンションには、一般的なストラット式やダブルウィッシュボーン式、マルチリンク式などがあります。しかし、走行性能や設計思想を追求した結果、メーカー独自のユニークなサスペンション構造が採用された車も数多く存在します。
この記事では、一般的な形式とは少し違う変わったサスペンション構造について、実際の採用例やメリット・デメリットを交えながら紹介します。
まず知っておきたい代表的なサスペンション形式
現在の乗用車で多く採用されているのは、ストラット式、ダブルウィッシュボーン式、マルチリンク式などです。
ストラット式は部品点数が少なく、コンパクトにまとめやすいため、FF車を中心に幅広く採用されています。一方で、ダブルウィッシュボーン式やマルチリンク式は、タイヤの動きを細かく制御しやすく、スポーツカーや高級車で多く使われています。
しかし、自動車メーカーやエンジニアの中には、これらの一般的な形式では実現できない性能を求め、独自のサスペンション構造を開発してきました。
メルセデス・ベンツの油圧式サスペンション「ABC」
変わったサスペンションとして有名なのが、メルセデス・ベンツが採用したアクティブ・ボディ・コントロール(ABC)です。
通常のサスペンションはバネとダンパーによって車体の動きを制御しますが、ABCでは油圧システムを利用して車体の姿勢そのものを積極的に制御します。
例えばコーナリング時の車体の傾きを抑えたり、加速時や減速時の姿勢変化を小さくしたりすることが可能です。高級車ならではの乗り心地と運動性能を両立するための特殊な仕組みと言えます。
シトロエンのハイドロニューマチックサスペンション
独創的なサスペンションで長年知られているのが、シトロエンのハイドロニューマチックサスペンションです。
一般的なコイルスプリングの代わりに、窒素ガスと油圧を利用したスフィアと呼ばれる部品を使用します。これにより、路面状況に応じて車高を調整でき、独特の滑らかな乗り心地を実現しました。
代表的な採用車であるシトロエンDSやCXなどは、まるで絨毯の上を走るような乗り心地として高く評価されました。
日産スカイラインGT-Rのマルチリンク式変形構造
日産の高性能車では、一般的なマルチリンクとは少し異なる独自設計が採用されてきました。
例えばR32型スカイラインGT-Rでは、フロントにマルチリンク式サスペンションを採用し、複数のリンクによってタイヤの位置や角度を細かく制御しています。
当時としては高度な設計で、高速走行時の安定性やコーナリング性能を高めるために大きな役割を果たしました。
マクラーレンのハイドロニューマチック式車高制御
スーパーカーの世界でも、一般的なバネを使わない特殊なサスペンションが存在します。
マクラーレンの一部モデルでは、油圧システムを利用したプロアクティブ・サスペンションが採用されています。左右のサスペンションを油圧回路でつなぎ、車体の姿勢変化を制御する仕組みです。
この方式ではアンチロールバーの役割を油圧制御で代替できるため、快適性と高い運動性能を両立できます。
自作車やレーシングカーで見られる特殊なサスペンション
市販車だけでなく、レースカーや自作車の世界にも非常に珍しいサスペンション構造があります。
例えばプッシュロッド式やプルロッド式サスペンションは、F1などのレーシングカーで使用される方式です。通常のサスペンションのようにタイヤの近くにダンパーを置かず、リンクを介して車体内部に配置します。
これにより空力性能を高めたり、車体中心部に重量物を集めたりするメリットがあります。一般車ではコスト面から採用されにくいものの、競技車両では非常に重要な技術です。
ロッキングアーム式など独特な発想のサスペンション
過去にはロッキングアーム式やトーションビームを発展させた独自構造など、さまざまなアイデアが試されてきました。
例えば一部のレーシングカーでは、通常とは異なる方向にアームを動かすことで、タイヤの接地状態を最適化する設計が行われています。
サスペンションは単純に部品を増やせば性能が上がるわけではなく、車の用途や目的に合わせた設計思想が重要になります。
まとめ|変わったサスペンションにはメーカーの技術思想が詰まっている
ストラット式やマルチリンク式は現在でも非常に優れたサスペンション形式ですが、自動車の歴史を見ると、それ以外にも数多くの独創的な構造が開発されてきました。
油圧制御式、ガス式、プッシュロッド式、アクティブサスペンションなど、それぞれの仕組みには乗り心地向上、高速安定性、運動性能向上など明確な目的があります。
珍しいサスペンション構造を知ることで、その車がどのような考え方で作られているのかをより深く理解できるようになります。


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